下僕視点1
これからパラストカーティに向かうが、その前にシュトラレーセから連れて来られるレティアを歓迎するため、城の外で待つ。
馬車がやってきて、ラナがレティアと共に降りてくる。
「皆さま御機嫌よう」
レティアはいつもと同じように、辛い表情を見せずにぼくたちに挨拶をしてくれる。
だが彼女は辛いはずだ。
両親を亡くしただけではなく、家族であるマリアさまも連れて行かれたのだ。
クロートが代表してレティアに挨拶をする。
「よくお越しくださいました。ラナさまもここまで同行頂きありがとうございます。ここからはわたしが引き継ぎます」
「分かりました。そのぉ、アリアは本当に怪我とかしてないですか?」
ラナは恐る恐る尋ねた。
そういえばアリアは謎の仮面たちから無理矢理連れてこられたので、あちらでは大変な騒ぎになったと聞いた。
「ご安心ください。特に外傷もなかったと聞いています」
クロートの言葉を聞いてラナも安心する。
ラナとは一度別れて、レティアと共に今日から住まう部屋へと向かう。
名目はレティアの部屋の準備だが、本来来る前に終わっていることだ。
普通なら怪しいぼくたちの行動だが、シルヴィは分かってて見逃してくれているのだろう。
「皆さん、ありがとうございます。お姉さまが居ないので貴方たちの今後についてはわたくしが責任を持ってシルヴィに交渉します」
「いいえ、レティアさま。今回それは不要です。これからお伝えする真実のため、我々はしばらくこの領土を離れます」
「何かあったのですね」
レティアに自分たちが発見したことを全て話した。
まだ王国院に入ったばかりのレティアには厳しい内容だろう。
どんどん顔が青くなっていく。
「そのようなことが……」
信じられないような話にレティアもなかなか飲み込めない。
だが五大貴族として厳しく躾けられているので、何とか表情を上手く隠している。
怒りの顔が見え隠れしていた。
「パラストカーティは本当の被害者だったかもしれないということね」
「おそらくは」
「そういえば蒼の髪とは一体何でしょう。どうしてそんなに蒼の髪を消し去りたいのでしょう」
思えばそこについては考えてなかった。
マリアさまを狙う魔物も多かった。
蒼の髪というのは一体何なんだ。
「それは聖典を見るしかありません。あれを調べるしか方法はありません」
「そうするとパラストカーティにある最後の聖典を読むしか方法がないのですね」
過去の聖典は全て焼き払われた。
フォアデルヘが見つけ出した偽物の聖典を全領土に配られたからだ。
唯一パラストカーティだけは内乱の責任もあり、聖典を配るのは禁止された。
それが逆に今回の逆転の鍵となる。
「わたくしもここで出来る限りのことはしてみます」
「一体何を為さるおつもりで?」
レティアは自信満々に答える。
「シルヴィ・スヴァルトアルフを味方へ引き入れます」
思いがけないことを言うのは五大貴族の血筋だからだろうか。
だがマリアさまは一度は呆気なく味方にした。
レティアならそれを実現するかもしれない、そんな気にさせる。
「皆さんはこちらを気にせず行ってください。そしてお姉さまを取り戻してください」
「畏まりました。どうか無理をせずお過ごしください」
クロートの挨拶で終わり、ぼくたちは中庭へ移動した。
時間になると仮面の者たちが現れると言っていた。
「それにしてもあの仮面の奴らって何者なんだ?」
「伝承を解けるってことは、他の髪を持っているのかもね。翆、朱、黒の髪はまだ居ないからそのどれかかな」
アリアさまは光の髪を持っている。
そうすると残りの髪を持った人間が居てもおかしくはない。
そんな時視界に映る人物が居た。
仮面の者たちだと思ったが、アリアが鎧を身につけて、ラナと一緒にやってきた。
「皆さんに折り入ってお願いがあります」
ラナの顔はいつになく疲れている。
だいたい予想が付く。
アリアが何か無理を言ったのだろう。
「アリアを連れて行ってください。アリアから考察の件は聞きました。もし伝承について何かあれば彼女は役に立つはずです」
「わたしはマリア姉さまの代わりに頑張ります」
真剣な顔でお願いされるとこちらも断ることができない。
クロートが連れていくかの裁量を持つ。
「わたしは構いません。おそらくこれから伝承について何かしらあるとは思っていましたからね。来てくださるのならこちらこそ有難い」
アリアは喜び大はしゃぎをした。
そしてようやく仮面の者たちもこちらに来る。
「全員揃ったようね」
「はい、ではパラストカーティまで送ってもらえますか?」
「わたしは送らないわ。送るのはその子よ」
仮面の女がアリアを指差した。




