町の区画整理③
「マスター。それは、新しい村を作らせれば良いのでは?」
「予算が無いんだけど?」
「マスターが最初に村を作ったときの資金と人員、物資。それも用意できないのですか?
マスターがそれ以降の面倒を見る必要はありません。土地が余っているなら、お聞きした島の面積であれば、問題ないはずです」
ゲームからのログアウト後、俺は狭霧に愚痴をこぼした。
「問題ばかりでなんともならない」と。
そこで狭霧が言いだしたのが、「新しい村を作らせる」という手段。
俺の直轄では無い、独自体制の村を作れば良いと言いだした。
たしかに、それぐらいの資金や物資の支援ならそこまで問題にならない。
「減った人員がすぐに補充される訳ではありません。まずは町の人口を減らし、調整すれば町の調整もしやすくなるはずです。
町の人口が増えた事が、問題の発生原因なのですよね?」
狭霧の考えは、非常に合理的だ。
だが、あまりやりたい手段では無い。
「棄民政策と取られかねないよ?」
「はい。ですが、どの手段も問題が発生するなら、どの問題にするかというお話のはずです。
棄民政策という批判は、お嫌ですか?
いえ、立候補者を募ればよろしいかと」
狭霧は新しい道を提案しただけ。
選択肢を増やしただけだ。
そしてそれは一考に値する意見だった。
「それと、マスター」
俺が狭霧の意見を頭の中で整え黙っていると、彼女は俺を心配するような表情をした。
「お忘れかもしれませんが、マスターにとってゲームはストレス解消の手段です。
その様に悩むようでしたら、ゲームそのものを止めてしまう事もできると、申し上げさせて頂きます」
言われて、俺ははっとする。
ゲームは娯楽、ストレス解消の手段だった。
難問を解くのも、その後の達成感や爽快感を味わう為で、義務じゃない。
問題が起きて、その解決に頭を悩ませるのは、いい。
でも、“ゲームなんだから”その悩む事すら楽しめなくてはいけない。
挑戦する事が楽しいからこそ、ゲームはプレイする価値がある。
挑むと決めたのは、自分だ。
しかし今の俺は、無駄にストレスをため込んでいる状態。
挑戦する事を楽しめていない。
「よし。細部を詰める。
ゲーム内部の時間は一時凍結、再開までしばらく時間を空けるよ。
次に始めるのは、構想がまとまってからでいい」
ゲームとは遊びだ。
真剣にやる、本気を出すのは普通の事だが、人生を賭けるような事では無い。
失敗すら楽しんでみせる気構えを持って挑もう。
だから。
「ああ、この難問も、楽しんでみせよう」
そう宣言する俺を見て、狭霧は柔らかく微笑んだ。




