町の運営体制
村長の俺が町長に格上げされたとして、それは名前が変わっただけという話には収まらない。
やるべきこと、取るべき責任が増えた分、俺は変わらないといけない。
だけど、村長だった俺が町長としてうまくやっていけるかと言うと、そんな旨い話は存在しない。
村長として得た経験値は、町長として求められる経験値とは全く違う。
似たような話は会社でもよく聞く。
信賞必罰とか言ったところで、成果を出したやつを昇進させることに意味はない。
報酬の形で報いる事は大事だけど、平社員として優秀な奴が上司になっても優秀かと言われると、全く違うのがいい例だ。
結局、「活躍した」と言うのであれば、その「活躍した場所」に置いておくのが一番なのだ。
昇進させるというのであれば、昇進するにふさわしい相応の実力を発揮したことを理由に昇進させるべきだというのが現代会社運営の常識である。
部下としての功績と上司という役職がふさわしいかと言うと、たいして関係は無い。
精々、現場に理解があるか無いかと言うだけ。
名選手でも名監督になれない事の方が多いのだ。
俺は、町長としていろいろと学ばねばならないわけだ。
人任せにしない、俺が取り組みをするとは言っても、数ある問題の解決を、俺が全部一人でやるわけではない。
死ぬほど頑張ればできるのかもしれないけど、そんな時間は俺の中には無い。
ちゃんと部下を使うのが良い上司の条件だ。
俺自身がそこまで優秀でなくとも良い町の運営がされるような、そんな体制がベストである。
俺がやるのは、今までなぁなぁだった、組織づくり。
責任者の任命だ。
「んじゃ、ラルーニャは町長夫人という事で、俺の補佐。
レーラは農業関連の責任者で――」
俺はNPC達を集め、全員に役職を与える。
役職を与えるというのは、最高責任者が俺であるのは当然として、その俺の意見を聞かずに決めていい範囲を明確化する事だ。
例えばレーラであれば、俺が定めた予算の範囲内であれば農業関連で好きに動いていい。
何を育てるだとか、人員の雇用だとか。いちいち俺に話を通さなくてもいい。
事前に何をしたいのか、結果がどうなったのか、報告だけちゃんとやってくれればそれでだいたい回るようになる。
もし何か問題があった場合は俺に責任が及ぶ。レーラにも責任を取ってもらわないといけないが、それを任せた俺にも責任があるという訳だ。
そして、それらがルールとして明文化された。
あとは議会の設置だ。
予算もそうだが、土地関連も好き勝手に動かれると間違いなくケンカになる。
それらを話し合う場は必要だ。
議会では予算編成と、都市開発計画という名の土地の優先権についての話し合い、商人に依頼する品の優先順位の決定など、各部門責任者の意見のすり合わせを行う。
他にも各種問題の解決方法について意見の募集・交換をしたりと、自分のところだけに引きこもらせないような交流の促進といった狙いもある。
議会を通す分、動きは今までよりも遅くなる。
俺自身、即断と独断で決められた部分を制限されるようになる。
ただ、こうやって議会を開く事、議事録をとる事は、今後、必ず活きてくる。
明文化というやり方に慣れないといけないし、その有効性を実感するのはもっと大事だ。
今までのような、口約束だけで話を済ませてはいけないのである。
当然の様に、大きくやり方を変えれば周囲の反発も強い。
だが、その反発を抑え込んででも、やらねばならぬことはあると思い、突き進むだけであった。
「おにーちゃん、アセリアは? アセリアはいらない子なの?」
「アセリアは、自由に動けないと困るから。だから役職が無いんだよ」
「……わかんない」
「じゃあ、応援団長に任命しよう。みんなに「頑張れー」って言う役職だ。責任重大だぞ」
「わかった!」
なお、これは反発とは違う、ちょっとした家族との会話、子供とのやり取りである。




