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窓ガラスのある家

 俺は基本的に、村で寝る事があまり苦にならない。

 というのも、「寝ている」時間帯は完全にスキップしており、視界が一瞬ブラックアウトしたらすぐに翌朝になるからだ。


 しかし、NPC達はそうもいかない。

 彼ら、彼女らは眠っている間に起きた事も記憶の中に存在していて、「寝る事が大変」という思いをいくつも経験している。



 その中で一番大きいのは、やはり、“虫”関連だろう。


「おはようございます、旦那様」

「おはよう、ラルーニャ」


 今朝もラルーニャが俺に挨拶をしてくれる。

 俺としてはついさっき「おやすみなさい」と言われたばかりなので、ちょっと苦笑したくなるやり取りだ。

 ただ、挨拶をおろそかにすると人間関係が崩れやすくなるので、ちゃんとやっているけど。



「今朝もご機嫌だな」

「ええ! 夜中にうるさかった虫がずいぶん減っていたの。

 おかげでよく眠れたわ」


 機嫌が良い理由は、やっぱり寝やすくなった事だろう。

 これまでは、家の中にいてもそこら中を飛び回っている虫に悩まされていたのだから。



 虫が減った理由は、「窓ガラス」の存在だ。

 日中は採光の為に家の窓を開けていたが、その時にどうしても虫が入り込んでしまったのだ。

 蝿捕り紙を作っていたので多少マシにはなっていたはずだが、それでも捕り逃しは出てくる。


 窓ガラスであれば、採光をするときに窓を開けずに済む。

 そうすると、虫が家に入ってくる頻度が大幅に減る。


 虫が飛び回ればうるさい。虫に食われれば肌が痒くなる。

 起きていれば追い払う事もできるが、寝ているときはそうもいかない。

 夜中の虫は、非常に厄介な問題だったのだ。


 それが減ったことで、ラルーニャの期限も良くなるというものだ。



 ……非常にどうでもいい余談になるが、NPCの肌などに虫刺されの痕は無い。

 メーカーにしてみればそこまでグラフィックに力を入れる気は無く、力を入れるメリットもない。ユーザーも要らないというだろう。

 大人の事情という奴である。





 村の中にある家には、窓ガラスが普及しつつある。

 売却分を確保して、なお有り余る余剰生産力を利用しているからだ。

 人的資源で言えば余力は無いけど、材料的な意味では頑張れば頑張った分だけ作ることが出来るのだ。

 収入的にも、非常に美味しい。



「ステンドグラス、というのも面白そうだけどな」


 今の工房なら透明なものだけでなく、色付きガラスも作れそうな気配だ。

 俺はちょっとだけ先の未来を想像し、口の端を上げるのだった。

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