地鶏
「わーい! モフモフー! くさーい!」
「駄目よ、アセリア! もっと優しく扱って!」
「それをお前が言うのか……」
子供というのは、台風のようなものだ。
予測不可能なところが多いし、大人の都合で制御できると思ってはいけない。
こちらの予想を上回り、気が付いたらどこかに行っているという事が多い。
幸い、この島にいる子供はアセリア一人だ。
大人の目が行き届き、何とか大事には至っていないという有様だ。
そんなお転婆アセリアであるが、みんなの評判そのものはとても良い。
子供がいるというのは本来は当たり前の話で、開拓村にはそういった余裕が無かっただけなのだ。
だから子供が来ることが出来るようになった、アセリアがいるというのはモブ村民の感情に良いものを与え、村に活気が増したように感じられる。
こいつら、NPC用のAIの中でも、あまり良くない簡素なものを使っているはずなんだけどな。
それでもなんとなく、生きているって気がしているよ。
AI相手でも馬鹿な事をすれば人格評価が落ちるシステムになっているから、俺はモブ村民だろうと変な事はしない。
でも、ゲームの中とは言えこうやって暮らしていると、別の理由で上手くやっていこうという気になる。
人間、相手が本物か偽物かなんて、そこまで気にしていられないのだ。
そして、そのアセリアが来て数日。
ついにニワトリに変化が現れた。
「ねー。この子、ちょっと羽が黒いよ?」
「ほんとだ―。白以外が混じってるねー。これ、凄く珍しいよ」
「わたし、おねーちゃんに教えてくる!」
変化があったのは森を中心に放し飼いをしていたニワトリ。
森の日影があったからか、日に当たることが多かったから。
涼しくしていたから。
もっと単純に、島に適応しただけ。
理由は定かではないが、新しい品種になったようである。
「本当ねー。よく見つけたわ。凄いねー」
「えへへー」
ラルーニャの苦労が、ようやく報われ始めた。
頑張ってきたラルーニャは本当に嬉しそうで、それを見たアセリアも満面の笑みを浮かべ、誇らしそうにしている。
思えば小麦の方は早かった。
ニワトリの方はその3倍コツコツやってきて、ようやく島に地鶏と言えるものができた。
これでまた一つ、先に進む。




