優先順位
糞の処理を優先すると、送風が出来なくなる。
そうなると、ニワトリたちが騒ぎ出す。
快適空間になれてしまうと元の生活に戻れなくなる。そこはニワトリも人間も変わらないのだ。
だったらたまに『ピット』をすればいいと思うかもしれないが、それはすごく手間がかかる。
『ピット』をするときは、上に何かあったり、誰かがいてはいけないのだ。
大掃除のごとく、一度、物を全て引き上げる必要がある。
そうなってしまえば本末転倒だ。
モブ村民の手間を減らすために魔法を使うのに、そのために余計な手間をかけさせては意味が無い。
だから送風を見送り、元の環境に慣れてもらおうと思ったんだけど。
「あのね、お願いがあるの。『ウィンド』設置を優先してもらえないかな~?」
これを切り出したのは、ラルーニャだ。
「ニワトリたち、風があった時の方がストレスなく生活してたの。だからね~? 糞を運ぶ手間はちゃーんと頑張るから、風が欲しいの。
お願い~」
「え? それだと、仕事が減らないよね。仕事を減らして、その分を他に回した方が良くないか?」
どうやら、俺の認識はちょっと甘かったらしい。
いや、甘いというか現場の意見とずれているというか、どこかに食い違いがある。
普通、一番きつい仕事がなくなることは歓迎されると思うんだけど。
「それよりもね、「私たちにできない事」をして欲しいの。
ほら~、鶏糞は私達でも運べるけど、風を生み出すことはできないから。
だから、ね? 風を優先してほしいなー、って」
うん。
言いたい事は分かる。
「俺にしかできない事」を俺にやってほしい。
そこは理解できる。
でも、一つだけ理解できない点がある。
「風を送るのはいいけど。それ、本当に必要?」
「すっごく、大事」
気になったのは、風の意味。
確かにニワトリは風を受けて気持ちよさそうにしていたけど、そこまで重要とは思えなかった。
扇風機とかの風を長時間浴び続けると、体に悪いとか言う話もあったはず。
なのになぜ?
「あのね、ストレスが少なかったからだと思うんだけどね、風無しのニワトリよりもお肉が柔らかいの。
あと、ストレスが少ない分、喧嘩も減って怪我する子が減るのよ」
そこまで違うのか?
そう思ったけど、モフモフマスター、じゃない、畜産の専門家が言うのだからそういう事なのだと納得しておく。
後で食べ比べてみたけど、正直、そこまで差異が分からない。
俺の舌はそこまで高性能ではない。まだゲームを始めたばかりだし。
魔法のレベルが上がれば設置できる魔法も増えるという事で、しばらくは訓練かな?
いや、設置し続ければ自動で成長するんだけど。
設置に任せず任意で使った方が経験値の実入りが良いんだよね。




