ブランド化①
「あれ?」
しばらく畑を小麦で染めつくしていると、小麦に畑ごとの違いが見えるようになっていた。
畑ごとに育成方法を変えて育ててはいたし、効果に多少の違いはあったけど……そこまで大きな違いにならなかったというのがこれまでの感想だ。
ただ、ここ数回の収穫物は目に見えて違いがあったし、育った小麦そのものを見ても、同じ小麦には見えない。
ゲーム業界のお約束、『鑑定』でもあればすぐに分かるんだろうけど。
「育成環境ごとに、小麦が進化したんじゃない?」
「やっぱり、そう思う?」
「ええ~」
ラルーニャは、俺が考えていた可能性をあっさりと口にした。
可能性の段階だし、違ったら恥ずかしいのですぐに口にはしなかったけど。その可能性はちょっと考えていた。
ゲーム内なので時間の経過は曖昧だけど、すでに10年以上が経過しているようなものなのだ。
ゲーム的な補正も加われば、小麦が環境に適応しても不思議じゃない。
「これで、島でしか手に入らないような小麦が出来たわけだけど。
問題は、その先なんだよなぁ」
島の特産品とも言える小麦が手に入ったわけだけど、これはようやくスタートラインに立ったというだけの話。
商業的には、この小麦を“どうするのか”が重要になってくる。
小麦の味や収穫量、特性を見て判断する必要がある。
「できれば背の低い品種があれば最高だったんだけど」
「変わりませんよねー。ちょーっとだけ、背の低いのはありますけどー」
小麦農林10号は、背の高さが従来の半分ぐらいだ。
ここにあるものは、よくて10㎝ぐらいしか変わらない。むしろ背が高くなったものまで存在する。
当たり前だが、収穫量はそこまで大きく変わっていない。
変わっていれば、すぐに変化に気が付いただろう。
「収穫量で勝負は出来ない。
背の高さも変わっていない。
ほんとに、味や特性でしか勝負できないわけか……」
ここまで、小麦が病気で全滅したというイベントは発生していない。
だとすればこの島の中では病気関連のイベントが存在しないか、今後持ち込まれるという事なのかもしれない。
耐病特性は島では検証不可能だ。
俺は商人に話を付け、島の外で自分たちの小麦を育ててもらうことにした。




