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キャラメイクに失敗して幼女になった僕は、いつの間にか最凶ギルドのマスターに!?  作者: 向原 行人
第2章 プレイヤーは親切な人だらけ
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第8話 即席コンサート

「えーっと、これで十四個揃いました! ありがとうございます!」


 頭上にコージィと表示されている、大学生くらいのお兄さんが持って来てくれたネズモドキの花で、転職クエストで求められた数が全て揃った。

 後は、クマヨシさんに貰ったレスキューコールを使って、手伝ってくれた皆を呼び出すだけだ。

 そう思って、ステータスウインドウでアイテム一覧を眺めていると、


「ちょっと待った。ツバサちゃん、バードの転職クエストではネズモドキの花を二十個集めないといけないはずだ。十四個だと足りないよ」

「え、二十個ですか? でも、冒険者ギルドで十四個って言われましたよ?」

「だけど、俺はほんの数日前に二十個集めたんだが……ステータスウインドウにクエストってメニューがあるから確認してみたらどうだ?」


 シュタインさんに待ったをかけられ、一先ず言われた通りにクエストというメニューを見てみる。

 「現在請けているクエスト」、「これまでに請けたクエスト」、「現在公開されているクエスト」という三つのサブメニューが現れたので、「現在請けているクエスト」を選択した。

 そこには、


『バード転職クエストその1。ネズモドキの花を十四個集めよう……旅人の街の南東、ネズモドキ林で入手可能』


 と表示されていた。

 何やらヒントみたいなメッセージも表示されているけれど、あの街って旅人の街って名前だったんだ。

 それはさておき、良かった。やっぱり十四個で合っているみたいだ。


「シュタインさん。やっぱり十四個で良いみたいです」

「そうか。俺の記憶違いか」

「じゃあ、さっき貰ったレスキューコールを使いますね」


 ステータスウインドウのアイテム欄からレスキューコールを選択して、『使用する』というサブメニューを選ぶと、


『レスキューコールのメッセージ欄に載せる内容を3秒以内に言ってください』


 というメッセージが表示された。


「えっ!? えーっと、皆さん。ありがとうございます。お花が全て揃いましたので、戻ってきてください」


 ちょっと慌てながら言葉を紡ぐと、


『レスキューコールを使用しました。残り使用回数は2回です』


 と表示される。


「へぇー、レスキューコールって、使われるとこんなメッセージが出てくるのか」


 すぐ傍に居たコージィさんが、そんな事を呟いた直後、一瞬姿が消えたかと思うと、半歩程ずれた場所に移動していた。


「なるほど。『はい』を選択すると、こんな風にワープするのか。便利だけど、課金アイテムかぁー。悩むなぁー」


 どうやらクマヨシさんの説明通りの効果らしく、僕の周りへオジサンたちが次々に現れる。

 全員揃ったかどうかは分からないけれど、レスキューコールはメッセージに応じた時点の使用者が居る場所へ現れるそうなので、一先ず街に向かって移動し始めても問題無いだろうという話になった。

 そして再び冒険者ギルドへ。

 ここまで戻って来る間にシュタインさんから次の転職クエストの話を聞いたのだけど、三十人に歌を聴いて貰わないといけないらしい。

 しかも課題曲が決められていて、そこそこ長い歌なのだとか。これはちょっと大変だな。


「じゃあ、行ってきまーす」


 オジサンたちに扉を開けてもらい、一つ目の転職クエスト完了報告のために、受付カウンターへ。

 今回は冒険者ギルド内にプレイヤーが居らず、受付のお姉さんと僕だけの空間となっている。


「すみませーん。クエストが終わったので、報告に来ましたー」

「お疲れ様です。では……ネズモドキの花を十四個ですね。確かに受け取りました。では、次のクエストです」

「はい、お願いします」

「今度は、バードの特技とも言える、歌を街の人に聞いて貰いましょう。どんな歌でも構いませんので、二十人に歌を聞いて貰ってください」


 さて、ここが正念場かな。課題曲が……って、あれ?


「あ、あの。歌は何でも良いのですか?」

「はい、構いません。童謡でもアニメの主題歌でも、自分で作った歌でも何でも良いです」

「あれ? あの、課題曲があるって噂を聞いたんですが」

「それは一般プレイヤー向けのクエストですね。ツバサ様は低年齢プレイヤー補正……冒険者ギルドからの依頼が一律易しくなっていますので」


 低年齢プレイヤー補正? 僕がまだ中学生で十四歳だから?


「えっと、依頼が易しくなるという事は、報酬も普通より低くなったりしちゃうんですか?」

「いえいえ。むしろ報酬は多くなります。ただ、チュートリアルでも説明があったかと思いますが、ログイン時間が二十二時までと制限されますが」


 あ、あの昨日ログイン出来なかったのって、ちゃんと説明されていたんだ。

 という事は、やっぱり僕がお隣さんに捕まっている間に、チュートリアルが終わっちゃってたんだね。


「他に何か質問はありますか?」

「あ、いえ。一先ず大丈夫です。頑張ってきまーす」


 お姉さんに手を振り、入口へ向かうと、


「ツバサちゃん。おかえり。すぐにクエストが終わらせられるように、三十人集めておいたよ」

「ツバサちゃんの美声、楽しみにしているからねー!」

「ツバサちゃん。頑張ってーっ!」


 既に扉が開かれていて、建物の入口を囲むようにして人垣が出来ていた。


「おぉーっ! あれが、噂のツバサちゃんかぁー!」

「ツバサ! ツバサ!」

「おい、お前ら興奮し過ぎだ! 落ち着け! ツバサちゃんが困っているだろ!」


 誰かの声で静かになったものの、今まで大勢の人からジッと見られた事なんて無いから、これはこれで困る。


「何だ? ここで何があるんだ?」


 ひぇぇぇ。こういう時に限って、近くを歩いているプレイヤーが居て、人垣に混じって僕をみてくる。

 早くしないと、ますます人が増えてしまいそうだし、この視線も止まらない。と、とにかく早く終わらせなきゃ。


「あ、あの……僕、今から歌を歌いますので、聞いてください」


 そう言った途端、大きな拍手が巻き起こる。

 ……って、しまった。僕、何を歌うかなんて全く決めてなかった。

 短くて、歌詞を見なくても歌える歌は何かないかな? 早くしないと、微妙な空気になっちゃうし、どうしよう。……どうしよう? こ、これかな?


「えっと、それでは、クラリネットが壊れた歌です」


 ……


 温かい視線と熱い視線を受けながら、何とか一番を歌い切ると、手拍子が始まってしまった。

 これは二番も歌えという事だろうか。


 ……


 二番を歌い終えても手拍子が止まず、結局全部歌いきる事になってしまった。


「ツバサちゃーんっ! 可愛いーっ!」

「フォーチュン・オンラインのディーバが誕生したぞっ!」

「アンコール! アンコール!」


 周りからツッコミ所満載の掛け声が飛ぶ。

 可愛い……はそもそも違うと思うし、ディーバって歌姫って意味だよね? 性別が間違ってるよっ!

 あと、もう転職クエストは終わったんだから、アンコールは要らないよっ!


「あ、ありがとうございました!」


 慌てて頭を下げると、僕は逃げるように冒険者ギルドの建物の中へと入る。

 何か暗黙のルールでもあるのか、皆冒険者ギルドの外で待ってくれているので、僕は再び受付のお姉さんの許へ。


「お疲れ様でした。では、これでツバサ様は晴れてバードとなります。受けられる依頼の種類も増えていますので、当ギルドを是非ご活用ください」

「はい、ありがとうございます」

「あと、こちらは転職祝いの品です。どうぞ、お受け取りください」


 お姉さんから差し出された品、「風のリュート」「詩人の服」「超蜂蜜×20」を受け取り、そして僕は、バードへと転職したのだった。

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