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キャラメイクに失敗して幼女になった僕は、いつの間にか最凶ギルドのマスターに!?  作者: 向原 行人
第2章 プレイヤーは親切な人だらけ
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第7話 ネズモドキ

 冒険者ギルドで会った男性に案内してもらい、背の低い木が一面に生えた場所へやってきた。

 背が低いと言っても僕の身長よりは高くて、枝に小さな緑の葉が沢山ついている。


「ここだ。四日前に、知り合いのバード転職クエを手伝ったから間違い無い」

「ここ……って、じゃあ、これがネズモドキの樹なんですか?」

「あぁ。だけど、見渡す限り葉っぱばかりだな。前に来た時は、まだ所々にピンク色の花が見えたのだが」


 辺りはネズモドキ林とも言える程に、多くの樹が生えているというのに、見渡した限りではピンク色の花は少しも見当たらない。

 フォーチュン・オンラインがリアルさを追求し過ぎているが故に、開花も次の春を待たなくてはならないという事なのだろうか。

 だけど、次の春……一年も待って居られない。ここは申し訳ないけれど、親切なオジサンたちに甘えさせてもらって、力を貸して貰おう。


「皆さん。僕はバードに転職したいのですが、ここでピンク色の花を集めなければならないんです。申し訳ないのですが、ご協力いただけないでしょうか」


 僕がクルリと後ろを向いて頭を下げると、


「ツバサちゃん。こういう事は、俺たちに任せときな! あっという間に集めてやるぜ!」

「ツバサちゃんの頼みだ。野郎共、行くぜっ!」

「おうっ! ツバサちゃん! 待っててねーっ!」


 ついてくれていた十数人のオジサンや大学生の人たちが、猛ダッシュで林の中へと消えて行く。

 ただ一人残ったのは、ここまで案内してくれた男性で、苦笑交じりに口を開く。


「……ツバサちゃん、凄い人気だね」

「僕が人気? いいえ、皆さんが親切なだけですよ。本当にありがたいです」

「親切……まぁ、そうかな。基本的に紳士の集まりみたいだしね」

「はい。皆さん、とても良い人ばかりです。けど、それに甘えているばかりでは駄目なので、僕もお花探しに行って来ますね」

「あぁ。だけど、街でも言った通り、ここにはモンスターが出るからな。護衛として俺も一緒に行こう」

「すみません。ありがとうございます」


 そう言って頭を下げると、男性が少し照れた様子で、ポリポリと頬をかく。


「いや、その……実は、俺にはツバサちゃんと同じくらいの娘が居てね。ちょっと護ってあげたくなると言うか、ついつい自分の子と重ねてみてしまうというか……まぁそういう訳で、俺が好きでやっている事だから、そんなに感謝しなくて良いからさ」


 なるほど。この男性は僕と同じくらい――中学生か高校生の娘さんが居るのか。

 見た目は三十歳くらいに見えたのだけど、キャラメイクで色々補正されているのか、それとも凄く若いうちに結婚されたのか。

 娘さんが中学生だとしたら、親としても受験の事を考えて居るのだろうか。


「えっと、リアルの事を聞いて良いのか分からないですけど、受験とかを控えて大変だったりするんですか?」

「受験? ……いや、うちの娘は三年生だから、まだ暫くは先の話だよ。それより、ツバサちゃんはもう受験の事を考えているの? 凄いねぇ」


 あれ? 中学三年生だったら、受験なんてもうすぐだと思うのだけど。

 あ、もしかして私立の中高一貫校で、受験無しで進学出来るパターンかな? それはちょっと羨ましいかも。

 そんな事を考えていると、


「ツーバサちゃーんっ! 見つけたよぉーっ!」


 一人のオジサンが凄い速さで走ってきた。


「はい、ネズモドキの花だよ。とりあえず二つ見つけたから。あと、湧いたモンスター倒してた時に、プチレアアイテムをドロップしたから、これも一緒にあげる」


 そう言って、可愛らしいピンク色の花と、ハート型のオブジェが付いた小さな杖が差し出され、


『ネズモドキの花×2を受け取った』

『ヒールステッキ+3を受け取った』


 とメッセージが表示される。


「あの、ありがとうございます。えっと……じゅうろく……」

「あ、俺の名前? これ、いざよいって読むんだ。ちょっと難しくてごめんね。ツバサちゃん。じゃあ、また行ってくるねー!」


 頭の上に「十六夜」と表示されたオジサンが、再び凄い速さで林の中へと入って行く。

 しかし、このヒールステッキって、どうしよう。ピンクのハートだし、短いし、見た目が完全に魔法少女の武器っぽいし。何かを攻撃するには、不向きな気がする。


「ツバサちゃん。今の杖って、ヒールステッキじゃない?」

「あ、はい。そうですけど」

「うーん。そんな高額アイテムをドロップするモンスターなんて、この辺りに居たかな?」

「こ、高額なんですか!?」

「まぁ、そこそこね。非売品だし、装備者が使用した治癒行為――回復魔法だとか、回復薬とかの効果を少し上げる効果もあるしね」

「そ、そうなんですね。じゃあ、装備しておいた方が良いですね」


 ステータスウインドウを開き、ヒールステッキを装備する。

 今の僕は、ピンクの杖を片手に、赤い上履きで林の中を歩く男子中学生か……暫く鏡は見ない事にしよう。

 時折モンスターが現れるけど、男性――シュタインさんに護ってもらいながら、僕もネズモドキの花を探していると、クマヨシさんが現れた。


「ツバサちゃん。ここに居たのか。ほら、ネズモドキの花だよ。五個あるけど、あと何個必要なのかな?」

「あ、ありがとうございます。全部で十四個必要で、これで七個集まったから……あと七個です」

「じゃあ、もう一頑張りだけど、他の誰かで集め終わった時に、どうしようか」

「……そっか。全部集まりましたよーって、連絡してあげないといけないですよね」

「うーん。そうだ、ツバサちゃん。これを使って」


『ネズモドキの花×5を受け取った』

『レスキューコールを受け取った』


「レスキューコールっていうアイテムは、今ログインしているプレイヤーで、ツバサちゃんと面識がある人全員をその場に呼び寄せる事が出来るんだ」

「呼び寄せる……って、それって場合によっては迷惑になりませんか?」

「そうだね。でも、ツバサちゃんから助けが求められているっていうメッセージが僕たちに表示されて、『はい』を選択するまでは移動しないから大丈夫だよ」

「ちゃんと確認メッセージが表示されるんですね」

「そういう事。そのアイテムは一つで三回まで使えるし、ネズモドキの花が集まったら使ってみてよ」

「はい、ありがとうございます」


 そう言って、クマヨシさんも林の中へと戻って行く。

 その後、他の人たちがネズモドキの花を持って来てくれたおかげで、結局僕は一つも見つける事なく必要数に達してしまった。

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