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キャラメイクに失敗して幼女になった僕は、いつの間にか最凶ギルドのマスターに!?  作者: 向原 行人
第2章 プレイヤーは親切な人だらけ
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第6話 転職クエスト

 相変わらず重たい冒険者ギルドの扉を開けようとして、一生懸命取っ手を引っ張っていると、


「ツバサちゃん、マジかわわ」

「頑張れ! あと少しだよっ!」

「……いや、お前ら。それと、すぐ傍にいるオッサンも、開けてやれよ。ツバサちゃんが困ってるだろ」


 そんな言葉が飛びかい、スッと扉が軽くなる。

 どうやら先程の大学生くらいの人が開けてくれたみたいだ。


「ありがとうございます」

「これくらいで、お礼なんてしなくて良いよ。それより早く転職クエストを受けておいで」

「はいっ」


 ペコリと頭を下げて、冒険者ギルドの建物の中へ。

 そこでは、三十歳くらいの男性二人がグラスを片手に談笑しているだけで、アオイの姿は無かった。

 今日はログインしていないのか、それともお兄さんと狩りへ出掛けているのだろうか。


「お、おい。あれ、見てみろ……」

「何だ……えっ!? マジかよ。フォーチュン・オンライン始まったな」

「これは、是非お近づきに……うおっ! 何だ? 入口からメチャクチャ睨んでくる奴が居るぞ!?」


 一週間以上前からゲームは始まっているけど、一体何が始まったのだろう。

 ちょっと聞いてみたい気もするけれど、ついて来てくれた人たちが外で待ってくれて居るので、受付のお姉さんに直行する。


「すみません。えっと、転職クエストを受けたいんですけど」

「はい。では、こちらの中から、どのクラスに就かれるかを教えてください」


 お姉さんが可愛らしいイラストの描かれたカードをカウンターに並べる。

 どうやら一次クラスの説明用らしく、クラスの名前と簡単な説明文も書かれていた。


『ファイター。けんや、おのをつかって、モンスターとたたかうよ。こうげきがとくいだけど、まほうはつかえないよ』

『ストライカー。パンチやキックでたたかうよ。でも、がっこうではやっちゃダメ。れんぞくこうげきが、できるよ』

『ソルジャー。おおきなたてで、みんなをまもるよ。ちょっとむずかしいかも』


 ん? 何だろう。どうして、説明文が全てひらがなとカタカナだけなの? 読み難いんだけど。

 あと、クラスを説明するイラストが全部小さな女の子はどうなんだろうか。ファイターなんて、描かれた女の子の身長と同じくらいの長い剣を掲げているし。


『シーフ。すばやいうごきで、モンスターをこまらせるよ。ブーメランや、なげナイフがつかえるけど、まわりのおともだちに、きをつけてね』

『シューター。ゆみやをつかって、とおくのモンスターをこうげきできるよ。でも、やのかずにちゅういしてね』

『バード。おうたで、おともだちをパワーアップ。まわりにいる、みんなにこうかがあるよ』

『メイジ。まほうをつかって、モンスターをやっつけるよ。でも、まほうはこうかがでるまで、ちょっとじかんがかかるよ』

『アコライト。せいなるちからで、おともだちのけがをなおすよ。モンスターにねらわれやすくなるから、きをつけてね』

『テイマー。モンスターと、おともだちになれるよ。モンスターが、かわりにたたかってくれるから、ちゃんとおせわしてあげてね』


 ……とりあえず全部見てみたけれど、どのカードも同じように女の子のイラストでクラスが描かれていた。

 しかしメイジのイラストが、フリルの付いたピンク色のヒラヒラしたワンピースに大きな杖……って、見た目が完全に魔法少女なんだけど。後は、変な犬とか猫とかの使い魔的マスコットキャラが居れば完璧だ。

 苦笑交じりにカードを眺めていると、


「あれ? もう一枚ある?」


 可愛らしいモフモフうさぎに囲まれた幼女テイマーカードの下に、もう一枚カードがある。

 ネットで見た一次クラスは全て出ていると思うんだけど。


『クリエイター。いろんなアイテムをつくりだせるよ。あんまり、たたかわなくてもいいよ』


 イラストを見てみると、幼い女の子が白衣を着て、フラスコみたいな物を手にしている。


「あの、すみません。このクリエイターって、何ですか?」

「クリエイターは、そのカードに書かれた通り、素材を集めてアイテムを作りだす事が出来ます。モンスターと戦わなくても、アイテムを作るだけでレベルが上がるので、バトルが苦手な人にお勧めです。クリエイターに転職しますか?」

「あ、いえ。ちょっと待ってください」


 どうやら、いわゆる生産職というやつみたいだ。

 材料次第で強いアイテムが手に入るけど、戦闘では役に立たないから敬遠されがちなクラスっぽいね。そうでなければ、もっとネットに情報があるはずだし。

 まぁでも、アイテムを作るだけで経験値が入るというのは、運動音痴の僕にはありがたいけどね。戦闘だと、何かミスをしてしまったら、パーティの人たちに迷惑が掛かるし。

 だけど、やっぱりバードかな。せっかく皆で決めてくれた訳だし、歌も嫌いじゃないし。それに、クマヨシさんがくれたアイテムがあるから、やり直す事も出来るしね。


「すみません。じゃあ、このカードでお願いします」

「はい……バードですね。では、今からご案内する二つのクエストを成功させてください」


 そう言って、お姉さんが二枚の紙を取り出す。


「先ず最初は、アイテム集めです。『ネズモドキの花』というアイテムを、十四個集めてきてください」

「ネズモドキの花? 一体どんな物ですか?」

「ネズモドキという名の樹に咲く、ピンク色の綺麗な花ですよ。その花から採れる蜂蜜が、喉の薬になるんです。バードは喉が命ですからね」

「なるほど。ちなみに、どの辺りに行けば採れますか?」

「それは内緒……と言いたい所ですが、この町から南東に向かってください。きっと、綺麗な花が咲いていますよ」


 南東か。とりあえず、歩いて行ける場所なのかな?


「南東ですね。ありがとうございます」

「頑張ってください。『ネズモドキの花』を集めたら、次のクエストをご案内いたしますので」

「分かりました。行ってきまーす」


 お姉さんに手を振り、意気揚々と歩きだすと、


「ちょっと待った。えーっと、ツバサちゃん?」

「はい。何ですか?」


 テーブルで談笑していた二人の男性が近寄って来た。


「ちょっと聞こえたんだがな。ネズモドキの花はバードに転職する際に必要なアイテムだが、いろんなプレイヤーが採取してしまったから、結構数が少ないんだ」

「え? そうなんですか?」

「バードに転職した奴もそれなりに居るからな。ゲームが始まって、まだ一週間とちょっとだから、採取された枝に花が着いていないんだ。だから、俺たちも手伝ってやるよ。人手は多い方が良いからな」

「いいんですか?」

「もちろん。それに、モンスターもそこそこ居るしな。だけど俺たちはレベル40台だ。安心してついておいで」

「ありがとうございますっ」


 やっぱりこのゲームは親切な人が多い。僕もレベルが上がって強くなったら、同じように初心者の人に親切にしてあげようっと。

 先程の男性に扉を開けてもらい、建物の外へ出ると、待って居てくれたオジサンたちに囲まれる。


「ツバサちゃん、お帰り。じゃあ、行こうか」

「うげ。またライバルが増えたのか」

「いや、ライバルって。お前、鏡見てから言えよ」


 何だかいろんな感情が渦巻いていたけれど、とにかく南東だ。


「そういや、この中でバード系のクラスの奴って居るのか? ……って、居ない!?」

「あー、俺はバードではないが、バードの転職クエを手伝った事はある。だから、行き先は知っているぜ」

「おぉ、新入り! やるじゃないか。じゃあ、俺たちのツバサちゃんをエスコートしてくれ」


 新入り? えっと、これって何かの会だっけ?

 親切な人たちの会? 新人を助ける会? 良く分からないけど、せっかくのご厚意なので、甘えさせてもらおう。


「すみません。じゃあ、お願いします」

「あぁ、任せとけ!」


 そう言って先頭を歩き出した男性に並び、僕たちは南東へ向かったのだった。

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