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キャラメイクに失敗して幼女になった僕は、いつの間にか最凶ギルドのマスターに!?  作者: 向原 行人
第2章 プレイヤーは親切な人だらけ
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第4話 一次クラス

「ただいまー」

「お兄ちゃん、お帰りー! 今日はヨーグルトだってー」

「ありがとう。じゃあ、また勉強の休憩の時にでも食べるね」

「えー、今日も家に帰ってすぐにお勉強なのー?」

「ごめんね。お兄ちゃん、受験生だからね」


 学校から帰ってくると、拗ねる渚の頭を撫でつつ、すぐさま自室へ掛け込む。

 昨日レベル10になった所で「おあずけ」状態だったので、とにかく早くプレイしたかったので、猛ダッシュで帰って来た。

 というのも、昨晩夕食を済ませた後に勉強して、その後に少しだけログインしようとしたら、「年齢制限モードのため午後十時以降はログイン出来ません」と表示されてしまったからだ。

 キャラメイク時にプレイヤーの実年齢などを測定するらしいし、中学生だから勉強を優先しろという事だろう。

 受験生に優しい仕様なのだろうけど、むしろフォーチュン・オンラインの事が気になって、勉強に身が入らなかった。


「まぁログイン出来なかった時間を使って、ネットで情報収集出来たけどね」


 独り言を呟きながら、先ずは制服を脱いで、ゲームに飛び込む準備をする。

 中学生でネットに書き込む人が少ないからか、年齢制限モードの事は殆ど情報が無かったけれど、一次クラスの事については、概ね知る事が出来た。

 最初に必ず就く基本クラス「アドベンチャラー」から転職出来るのは、基本的に九つのクラスだ。

 前衛となって敵と戦う、武器の使い手ファイターと、拳で戦うストライカーに、同じく前衛だけど、攻撃がメインではなく盾となって仲間を護るソルジャー。

 中衛で敏捷性を使ったトリッキーな攻撃するシーフに、弓矢で戦うシューター。そして、歌でサポートを行うバード。

 後衛から強力な魔法攻撃を行うメイジや、アオイみたいに仲間を回復させるアコライト。それから、ちょっと特殊なテイマーという、モンスターを仲間にして戦わせるクラス。

 他にも特殊なクラスがあるそうだけれど、特殊なクラスになる方法は未だネット上にはなくて、一先ず良く見かけたのが、テイマーだけは止めとけという書き込み。

 何でも、自分の育成に加えて、使役するモンスターのレベルまで上げなければならないそうで、モンスターを使って攻撃するクラスなのに、モンスターが敵を倒した場合の経験値が、半分モンスターに入り、残りの半分がテイマーに入る。

 つまり、経験値が半分しか入らなくなり、レベル上げに他の人の倍の時間が掛かるという事だ。


「とりあえず、前衛はパス。僕の運動神経じゃ、モンスターを攻撃したり、その攻撃を避けたりなんて出来ないからね。弓矢も難しそうだし、一先ずバードかメイジ、アコライトのどれかだよね」


 着替えを終え、部屋着になった僕はヘルメットを被ってベッドに寝転ぶ。

 そして起動ボタンを押すと、視界が暗転し、僕は町の通りの真ん中に立って居た。

 少しして、澄んだ青空とレンガ色の町並みに目が慣れて来た時、


「おぉっ! キターッ! 本物だっ!」

「マジでっ! うぉぉぉっ! すげー! 噂は本当だったのか!」

「俺、仕事早退してきた甲斐があったよ」


 僕の周りで突然歓声が湧く。

 見れば、背の高い男性が十人程、騒ぎながら僕の方を見ている。

 何かイベントでもあるのだろうか。一先ず、邪魔にならないようにと冒険者ギルドの建物に向かって歩き出す。


「お、歩いたぞ」

「そりゃ、歩くだろ」

「どこに行くんだろ?」


 何故だろう。さっきの男性たちが僕と同じ方角に向かって歩き出した。

 背後から凄く視線を感じて、背中……というか、首元や脚を凝視されているように思える。

 偶然、僕が歩いた方角に何かあるのだろうか。それとも……まさか。でも、念のため。

 冒険者ギルドには、今居る通りを真っ直ぐ進めば着くのだけれど、適当に角を曲がり、細い路地に入りこんでみた。


「……」


 少し距離を開けて、後ろの集団も僕と同じ方向について来る。

 これってもしかして、僕が狙われているの!?

 でも、一部のエリアではプレイヤー同士の戦い――PvPやPKが認められている場所もあるそうだけど、基本的に町の中ではそういう事は出来ないと、ネットに書かれていた。

 それなのに、僕が後を着けられている理由は何だろう。貴重なアイテムとかも持って居ないし、そもそも昨日始めたばかりだし。

 一先ず、逃げようと思って、走りだした直後、


――ゴスッ


 石畳に足を取られ、顔から盛大にこけてしまった。

 痛くはないのだけれど、こけた瞬間に後ろの集団が走って来て、僕の周りを取り囲む。

 僕は地面にペタンと座り込んでしまった状態で、もう逃げ出す事も出来ない。


「えっ!? な、何……?」


 今の僕に残された出来る事はログアウトしかないのだけれど、必死に声を振り絞ると、


「ツバサちゃん! 大丈夫!? 痛くない!? これ――ハイポーションをあげるから使って」

「馬ッ鹿野郎! ツバサちゃんは苺味のポーション以外飲まねぇんだよっ! ……ツバサちゃん。ほら、お兄ちゃんがヒールの魔法を使ってあげたからね。もう、痛くないよ」

「ツバサちゃん。これ、オジサンからのプレゼントだよ。見た目は大した事が無さそうに見えるんだけど、回避能力アップの加護が付与されているから、絶対役に立つからさ」


 僕を取り囲んだ男性……というか、オジサンたちが一斉に喋り出す。

 どうやら害意は無さそうだけれど、僕にポーションらしき小瓶を出したオジサンが、別のオジサンに押し出されたかと思うと、そのオジサンの手が淡く光る。元々痛く無かったけれど、どうやら回復魔法を使ってくれたみたいだ。

 そして今、目の前に一足の靴が差し出されている。爪先と底が赤色のゴムみたいな素材で、周りは白い……って、これ学校の上履きだよ。でも、加護がどうとかって言っていたし、見た目とは違ってきっと凄い効果があるのだろう。


「ツバサちゃん。遠慮しなくて良いからね。ゲームを始めたばかりのツバサちゃんにはともかく、僕からすれば全然大した事の無いアイテムなんだ。だから、どうぞ」

「あ、ありがとう」


 目の前のオジサンが座った僕に目線を合わせて微笑んでくるので、せっかくだからと手を伸ばすと、


『学びの靴+7を受け取った』


 というメッセージが表示される。

 学びの靴って、やっぱり上履きの事だよね!? あと「+7」って何だろう。さっき言っていた加護とか、強化とかって事だろうか。

 そんな事を考えながら、貰った靴を眺めていると、


「あぁぁぁっ! 先を越されたーっ!」

「抜け駆けしやがって!」

「……だけど、回避の加護って言ってなかったか? あれって、かなり高額じゃねーの!?」


 周りのオジサンたちがザワついている。

 一先ず、それなりに高価な品らしいので、貰ったからには身に付けるのがマナーというものだろうか。

 せめて色が赤ではなく、青だったら良かったのに……と内心思いながらも、その場で三角座りになり、上履き――もとい、学びの靴を履いてみる。

 少し小さいので、手間取っていると、


「おぉぉぉっ! ハーフパンツの隙間から見えそう……もう少し」

「おっしゃぁぁぁ! 見えたっ! 白だっ! そこのあんた、GJだ!」

「マジかよ! 俺も、俺にも見せてくれよっ!」


 何が見えたのだろうか。何故かオジサンたちが、靴を履く僕の前でギュウギュウと押し合いをしている。


「あ、そうだ。ステータスウインドウから装備出来るんだった」


 うっかりゲームの中だという事を忘れてしまっていたけれど、ステータスウインドウから靴を装備すると、一瞬で靴が変化し、小さいかなと思った靴がピッタリサイズになっていた。やっぱり、ステータスから装備するのが正解みたいだ。

 一先ず改めてお礼を言おうと立ち上がると、何故か残念そうな声がオジサンたちから聞こえた後、おぉっと低い声の歓声が上がる。何かあったのかと、ちょっと気になったけれど、先ずはお礼が先だよね。


「あの、この靴ありがとうございます。履き慣れているからか、何となく動き易くなった気がします」

「そうだよね。やっぱりツバサちゃんには上履きが一番だよね。良く似合っているし、きっとその靴も喜んでいると思うよ」


 上履きって言っちゃったよ。やっぱり、この人も学びの靴が上履きみたいだって思ってたんだ。

 内心、クスッと笑いながら深々と頭を下げ、冒険者ギルドへ向かって歩き出そうとすると、


「あ、ちょっと待って。ツバサちゃん。良かったら、レベル上げとか手伝おうか? まだゲームを始めたばかりだよね?」

「ありがとうございます。でも、もうレベル10になったので、これから一次クラスに転職しようと思ってて」

「なるほど。じゃあ、転職クエストを受ける訳だ。どのクラスに転職するにしても、ちょっと面倒なクエストがあるし、良ければ僕が手伝ってあげるよ」


 靴をくれたオジサンが、親切にも一次クラスへの転職の手伝いまで申し出てくれた。

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