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キャラメイクに失敗して幼女になった僕は、いつの間にか最凶ギルドのマスターに!?  作者: 向原 行人
第4章 幼女護衛ギルド設立

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第35話 スライムマスター

「えっと、クマヨシさん? ここは?」

「嬉しいねぇ。久しぶりに会うけれど、オジサンの事を覚えていてくれたのかな? それとも、その上履きがよっぽど気に入ってくれたのかな?」


 ニヤニヤと笑みを浮かべる男性の言葉で、完全に思い出した。

 僕に上履きをプレゼントしてくれた、レベル80越えのグラディエーターの人だ。

 僕がバードに転職した時、抱きついてきて強制ログアウトさせられた見たいだけど、基本的に悪い人では無かった。

 僕が困っている事を伝えれば、きっと助けてくれるだろう。


「あの、どういう訳か僕、身体が動かないんです。助けてくれませんか?」


 だけど僕の予想に反して、クマヨシさんは椅子に座ったまま動いてくれない。


「それは無理だよ、ツバサちゃん。せっかくこの子たちが、頑張ってくれたのだから」


 そう言って、クマヨシさんが膝の上に乗せた何かを優しく撫でている。

 仔猫か何かだろうか。拳よりも一回り大きな何かは、クマヨシさんに撫でられると嬉しそうにその身体を揺らしている。

 だけど、猫にしては何か変だ。半透明の球体が、もぞもぞと動くというより、プルプルと揺れているように見える。

 一体何だろうかと目を凝らして良く見ていると、突然その球体が膝から落ちた。

 いや、確かに落ちたのだけど、ゆっくりとゲル状に伸び、そして床へ辿り着くと、再びプルプルと揺れる球体へと戻る。

 これは……一体、何だ? 僕が訝しげな眼を向けていると、クマヨシさんがニヤニヤとした笑みを、一層強めて楽しそうに口を開く。


「おや? ツバサちゃん。スライムを見るのは初めてかい? 可愛いだろう。可愛がってあげてね」


 スライム? スライムって、あのゲームに出てくる、あのスライム?

 風の塔でアオイがブラックスライムっていうのと戦っていたけれど、僕は暗闇状態でその姿を見る事が出来なかった……って、待てよ? 確か、あの時助けてくれた人が言っていなかったっけ?

 スライム系は状態異常攻撃を使うのが多いって。

 慌ててステータスウインドウを開くと、僕自身の情報を見てみる。そこには、「麻痺」と表示されていた。


「麻痺!? だから、手足が動かないのっ!?」

「その通りだよ。オジサンの可愛いペット、痺れスライムのクリアキって言うんだけど、この子が頑張ってくれたんだよ。あと、こっちはブラックスライムのナイラブ。どちらも可愛いだろう」

「痺れスライムって名前からして麻痺攻撃をしそうで、ブラックスライムは暗闇を使うスライムで……じゃあ、その二体のせいで、僕はこんな事になっているの!?」

「ふふ……そうだよ。だけど、それだけじゃないからね。オジサンの可愛いペットには、まだとっておきの子が居るんだ。おいで」


 クマヨシさんに呼ばれ、どこからともなく淡いピンク色のスライムが現れた。


「この子がオジサンのとっておき、ピンクスライムのロクブケイだよ」


 クマヨシさんの言葉に併せ、ピンクのスライムがお辞儀をするかのように、ペタンと平らに伸び、そして再び元の球体に戻る。

 まるで意志疎通が出来ているかのような動きだ。


「どうして? どうして、クマヨシさんはモンスターを操る事が出来るの?」

「知りたいかい? そうだね。ちょっとだけお話ししようか。ツバサちゃんが、バードに転職した時の事は覚えているかな?」

「えぇ。あの時はクマヨシさんにもお世話になりました」

「いやいや、別に構わないんだよ。だけどあの時、ツバサちゃんが可愛過ぎてね。オジサンの心が限界を超えてしまったんだ」


 それで、二週間も強制ログアウトさせられていたんだよね。今、こうしてフォーチュン・オンラインの世界に居るから、その強制ログアウトは解けたみたいだけど。


「あのツバサちゃんを抱きしめた時、オジサンは思ったんだ。ツバサちゃんに触れると目の前から消えてしまうから、ツバサちゃんが自分からオジサンにエッチな事をしてくれれば良いって」

「……はい? あの、何を言っているんですか?」

「それから、この世界へ戻って来るまでの間、いろんな事を考えたよ。どうすればツバサちゃんを僕のものに出来るだろう。どうすれば、ツバサちゃんと触れ合う事が出来るだろう。どうすれば、ツバサちゃんと結婚出来るだろうかってね」


 ヤバい。この人、目がマジだ。

 ゲーム内でプレイヤー同士が結婚出来るシステムが有ると聞いた事があるけれど、この人と結婚だなんて有り得ない。

 というか、元々僕は男なんだ。オジサンと結婚だなんて、絶対に嫌だっ!

 クマヨシさんが未だに恍惚とした表情で語っているけれど、ステータスウインドウからログアウトを選択する。すると、


『戦闘中のため、ログアウト出来ません』


 どういう訳か、ログアウトを拒むメッセージが表示されてしまった。


「どうして? 戦っていないのにログアウトが出来ないの!?」

「む。ツバサちゃん。ログアウトしようとしたの? ダメだよ? まだオジサンがお話し中なのに。悪い子にはお仕置きだね」


 クマヨシさんが喋りながら立ち上がり、倒れたままで身動きが取れない僕に近づいてきた。


「や、やだ……来ないでっ!」

「大丈夫だよ。オジサンが直接ツバサちゃんに何かすると、また強制ログアウトさせられちゃうからね。だから……アシレフラ。君の出番だよ」


 呼ばれて出て来たのは、これまでのスライムたちよりも、二回り程大きな紫色のスライムだ。


「この子がツバサちゃんをオジサンの家まで運んで来てくれたんだ。身体が大きいだけあって、意外とパワーがあるんだよ」

「オジサンの家!? ここ、クマヨシさんの家なんですかっ!?」

「おっと。これは、口が滑ってしまったね。けど、これからツバサちゃんはオジサンと一緒にここへ住むのだから、まぁいいか」

「す、住まないですよっ!」

「あはは。まぁそれは後で説明してあげるよ。それより、今はお仕置きが先だからね」


 怖い。ユニークモンスターと対峙した時よりも、遥かにクマヨシさんの笑顔の方が怖い。


『戦闘中のため、ログアウト出来ません』


 改めてログアウトを試してみたけれど、やっぱり同じメッセージが表示されてしまう。

 クマヨシさんの家の中という事だし、街の中には違いないはず。PvPが出来る場所でもないし、街の中だからモンスターと戦闘……って、目の前に居るじゃないか。沢山の種類のスライムが。

 だけど、街の中なのに、どうしてモンスターが? それに、クマヨシさんの指示に従うように動いているし。


「あ! スライムマスター!?」

「正解。そうだよ。直接ツバサちゃんに触れると、強制ログアウトだからね。だけど、今ツバサちゃんに触れているのは、モンスターのスライムたちであって、オジサンじゃない。だからログアウトも出来ないし、スライムたちが何をしたとしても、オジサンはペナルティを受ける事は無いんだよ」


 クマヨシさんの言葉を聞いて、首を動かして回りを見てみると、僕の足先に小さなスライムが乗っていた。

 こいつが常に触れているから、戦闘中という判定をされているんだっ!


「さてと。じゃあ、とっておきの前に、お仕置きタイムだ。ビッグスライムのアシレフラは、溶解液っていう特技が使えるんだよ」

「溶解液……って、まさか! 嘘でしょ!?」

「ふふふ。きっとツバサちゃんが想像した通りの効果だよ。防具破壊――ツバサちゃんの肌は傷付けず、着ている服だけをボロボロに出来るんだ」

「お願い、やめてっ!」

「……いけ! アシレフラ! 溶解液だっ!」


 クマヨシさんは、僕の願いを聞かず、ニヤニヤした笑みを浮かべながら叫んだ。

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