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キャラメイクに失敗して幼女になった僕は、いつの間にか最凶ギルドのマスターに!?  作者: 向原 行人
第1章 フォーチュン・オンライン
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第3話 レベルアップ

「やったー! すごーい! ツバサちゃん、おめでとー!」


 町から少し離れた山の上で、ジャイアントワームとかいう、ちょっとした犬ぐらいの体長を持つ大きな芋虫を、旅人の杖でつついて崖から落とす。

 そんな事を幾度か繰り返すうちに、レベルが上がり、その度にアオイが僕を抱きしめてくる。

 これで八回目だろうか。柔らかいし、良い匂いするし、気持ち良いしで嬉しいのだけれど、その度に窒息しそうになるのが難点だけど。


「それにしても、早いねー。もうレベル9なんだねー」

「アオイのおかげだね。魔法で武器を強化して、防御魔法で護りを固めて、おまけに美味しくない敵を倒してくれて。ありがとう」

「ふふっ。いいの、いいの。お姉ちゃんは、ツバサちゃんが頑張る姿を眺めているだけで、眼福なんだから」


 こんなに可愛い人が、僕なんかを見て、何が眼福なんだろう?

 眼福と言うなら、アオイが神聖魔法を使う度に、裾の短いローブが捲れ上がってチラチラ見える女子高生の白い太もも……これこそが眼福だと思うのだけど。

 ……ところで、このゲームはどうやってスクショを撮るんだろう。画像として残しておきたいシーンが有り過ぎるよっ!


「あ。ツバサちゃん、ちょっと待ってね。また、ちょっと強めの奴が湧いてきちゃったから。こいつさえ居なければ、ここは初心者に絶好の狩り場なんだけどねー」


 そう言って、アオイが手にしたメイスで大きめのカブトムシみたいなモンスターを殴りだす。

 お兄さんと組んでプレイしているから、完全に回復役に特化したヒーラーだと思っていたのだけれど、メイスでの打撃にキレがある。

 所謂、殴りアコライトと呼ばれるタイプなのだろうか。

 かなり硬いカブトムシとアオイが戦っている間、僕は邪魔にならないように少し離れて、ジャイアントワームを探しだす。

 好戦的なカブトムシと比べて、こっちはほとんど攻撃してこないし、動きも遅い。その分、体力が多いのだけれど、流石に崖から落ちると即死するし、それで経験値まで入ってしまう。とにかく、美味しい敵だ。


「ワームさーん。居ませんかー?」


 モンスターが返事をする訳がないのだけれど、草をかき分け、茂みに入って行くと……居た! しかも二匹も。

 ちょっと突いて、僕に意識を向かせると、先程まで居た崖の傍へと誘導する。

 ジャイアントワームが近づいてきたら、反対側に回って、後ろから杖でひたすらつつく。

 二匹いるから少し大変だけど、動きが遅いのでいけるはずだ。

 トストストストス……突いて突いて、また突いて。一心不乱に突きまくっていると、二匹のジャイアントワームがフッと視界から消えた。

 そして、その直後、


『おめでとうございます。レベルアップしました。レベル10になりましたので、一次クラスが解放されます。尚、年齢制限モードのため、ステータスは自動割振されました。スキルの取得は手動となります』


 この短時間で何度も見たシステムメッセージが表示された。

 しかし、バタバタしていて聞く暇がなかったけれど、気になる言葉が幾つかある。これは一体……


「ツバサちゃん。おめでとー! やったね。レベル10だよ! これで一次クラスに転職出来るよっ!」


 むぎゅっ。

 一次クラスという、まさに僕が気にしていた言葉が聞こえた直後、柔らかい膨らみが僕の顔を包み込む。

 どうやら、カブトムシを倒したアオイが僕の元へと駆け付けていたようだ。


「アオイ、い、一次クラ……」

「あはは。そんな所で口を動かされたら、くすぐったいよー」


 いや、だったら僕を解放してくれたら良いと思うのだけど。でも、このままで居たいと思ってしまう僕も居たりするんだけどさ。

 そして、名残惜しそうに少し強めにギュッと僕を抱きしめると、アオイが腕を離してくれた。


「あ、アオイ。一次クラスに転職って?」

「一番最初の分岐点で、レベル10になると、冒険者ギルドで転職クエストを受ける事が出来るんだ。丁度良いから、一旦町へ帰ろっか」


 アオイがくれた帰還石というアイテムを使うと、一瞬視界が真っ白になり、気付けば僕が最初に居た町の入口へと戻っていた。

 ゲームで良くある移動系のアイテムだけど、リアルなゲームで使うと、一瞬で景色が変わるからビックリさせられる。


「ツバサちゃん。ついてきてー」


 流石にアオイは慣れているみたいで、既に歩き始めていた。

 しかし小一時間程前に冒険者ギルドから町の門まで歩いた時は、ほとんど人が居なかったのに、今は随分と人が増えている。

 しかも、可愛いアオイと一緒に居るからか、ジロジロと……主にオジサンたちがこっちを見ていた。


「見てみろよ。スゲー可愛い」

「うほっ! 持って帰りたい」

「マジかよ。幼女じゃん」


 可愛いって言葉は分かるけれど、幼女は流石に言い過ぎではないだろうか。

 アオイは童顔だけど、胸も身長も大きいし、どうみても女子高生……いや、オジサンたちからしたら、女子高生も幼女みたいなものなのかな?


「ねぇ、アオイ。何だか、さっきより人が増えて無い?」

「リアルの時間が六時を過ぎているからねー。学校とか会社が終わって、みんなログインしてきたんだよー」

「あ、そっか。……って、六時を過ぎているの!? ごめん、アオイ。僕もうゲームを終わらなきゃ!」

「そっかぁ。でも、仕方ないね。あんまりゲームをやり過ぎると、お父さんやお母さんに怒られちゃうよね」


 そう言うと、またもやアオイが僕を抱きしめてきた。


「おぉぉっ! 凄ぇのが見れた!」

「ボクっ娘だと!? 俺も抱きつきたい」

「おまわりさんこっちです!」


 町の通りのド真ん中で抱きしめられたから、益々視線を感じる。

 僕は注目されるのは好きじゃないけれど、アオイは他人の視線に慣れているのかな? 周りを全く気にせず離してくれない。


「あ、アオイ。ごめん、僕もう本当に時間が……」

「そっか。じゃあ、また一緒に遊んでね。一次クラスの転職も手伝うからね」

「うん、ありがとう。じゃあ、またね」

「うん。バイバイ」


 僕はメニュー画面を出すと、一番端にあるログアウトという文字に意識を向ける。

 ログアウトの確認メッセージを応答して……僕の視界が見慣れた白い天井に変わった。


「す、凄かった……これは、皆ハマるよね」


 ヘルメットを外して、ベッドから降りると大きくノビを一つ。

 階段を下りてリビングへ向かうと、


「あ、お兄ちゃん。お勉強終わった? 渚と遊んでっ!」


 僕を見つけた渚が、猛ダッシュで突進してきた。

 子供特有の温かい体温が僕の身体に密着して、その温もりが伝わってくる。

 温かくて柔らかいけれど、平らな感触は少し物足りなくて……


「渚。これから大きくなろうな」

「お兄ちゃん、突然どうしたの?」


 不思議そうに僕の顔を見上げる渚の頭を撫で、夕食の準備が出来るまでの間、暫くトランプに付き合ったのだった。

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