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キャラメイクに失敗して幼女になった僕は、いつの間にか最凶ギルドのマスターに!?  作者: 向原 行人
第3章 一人前を目指して

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第12話 ハグ

「とぉーっ!」

「ツバサちゃん。頑張ってー!」


 育代さんがスキルで僕のステータスをアップさせながら、応援してくれている。

 僕の音楽スキルである歌とは違い、攻撃が出来ない代わりに、喋る事は出来るみたいだ。


『おめでとうございます。レベルアップしました。レベル18です。尚、年齢制限モードのため、ステータスは自動割振されました。スキルの取得は手動となります』


 僕の攻撃で目の前の蛙型のモンスターが動かなくなると、すぐさま見慣れたメッセージが表示された。

 育代さんのスキルのおかげか、トゲタニシだけでなく、魚モンスターや、虫みたいなモンスターも倒して、どんどんレベルが上がって行くし、ドロップアイテムである、トゲタニシのトゲや魚の骨、虫の殻みたいなアイテムも、それぞれ二桁あったりする。


「ツバサちゃーん! おめでとー!」

「あ、ありがとうございます」

「凄いねー。ツバサちゃん、頑張ったねー」


 レベルが上がる度に優しく抱きしめられ、頭を撫でてくれた。

 アオイもレベルが上がる毎に抱きついてきたけれど、育代さんのハグには、それとは違う心地良さがある。ちなみに、胸はアオイの方がムニムニと弾力があったのに対し、育代さんはフニフニと柔らかい。

 あと、高校生のアオイに対して、育代さんは大学生くらいに見えるから、大人の余裕という物があるのだろうか。


「じゃあ、ツバサちゃん。もう少しでレベル20になるから、そこまで一緒に頑張ろっか」

「はい。お願いします」


 名残惜しくも、育代さんの胸から離れ、新たなモンスターを探す。

 最初に育代さんと出会った場所から、それなりに奥へと進んできたけれど、ネットの情報通りモンスターは少なく、二人でずっと新たな獲物を探して歩く。

 ザブザブと川の中を進んでいると、


「ひゃあっ!」


 踏み出した先に川底が無く、ズルズルと胸くらいまで水に浸かってしまった。


「ツバサちゃん、大丈夫?」

「あ、はい。すみません」

「これ以上、奥に進むのは無理かしら」

「そうですね。流石に、この水深だと戦えない……くしゅんっ」

「あらあら、大変! 着替えないと」

「いえ、大丈夫ですから」


 タイミング悪く、くしゃみが出てしまっただけなのだが、育代さんが僕を離してくれない。

 そして、少しするとステータスウインドウで何かを探していたらしき育代さんが、嬉しそうに声を上げる。


「あったわ! ツバサちゃん。服が濡れちゃったし、一先ずこれにお着替えして」


 そして、紺色の何かが手渡され、


『学校指定水着+8を受け取った』


 再びいつものメッセージが表示された。


「……あの、育代さん? これって?」

「それはね。私がまだレベル15くらいの時に、もらった装備なの。それなりに性能も高いし、水耐性もあるし、このダンジョンにピッタリだと思うの。だから、ツバサちゃん。お着替えして」

「……えーっと、育代さん。これって、水着……ですよね?」

「えぇ。濡れている服を着続けるより、良いでしょ?」


 この人は、本気で言っているのだろうか。濡れた服よりも水着……というか、スクール水着を着ろと。

 念のため、ステータスウインドウで形状を確認してみると、予想通り女性用のスクール水着だ。

 流石に、これに身を包むと、変態の称号から逃れられない気がする。


「育代さん。お気持ちはありがたいのですが、流石にこれはちょっと」

「でも、私が今着ている服は、レベル制限があってツバサちゃんは装備出来ないし、他に服みたいな物なんてあるかしら?」


 僕は最初に貰った旅人の服があるけれど、これまで濡れちゃったら、街へ戻った時に着る物がなくなってしまう。

 流石に裸は避けたいけれど、


「分かったわ。ツバサちゃんはお着替えが苦手なのね。じゃあ、私がお着替えを手伝ってあげる。はい、手を真っ直ぐ上に上げてー」


 僕が口を開く前に、育代さんがワンピースに手を掛け、そのまま真っ直ぐ上に持ち上げようとしてきた。

 女の子の服を着ているだけでも恥ずかしいのに、育代さんに服の着替えを手伝われるなんて……


「ま、待ってください。着替えます。着替えますからっ!」


 急いでステータスウインドウからスク水――もとい、学校指定水着を装備する。

 あぁぁぁ……ゲームの中とは言え、女性用のスクール水着を着るなんてっ!


「うぅ……恥ずかしいです」

「まぁここには私しか居ないし、大丈夫よ。それに、私も今の装備を貰うまで、ずっと着てたんだけど、見た目とは裏腹に耐久性もあるし、何より魔法防御力が高いのよ?」

「え? 育代さんが着ていた水着なんですか?」

「そうなの。お古でごめんね」


 育代さんが着ていた水着に、僕は今包まれて……って、服装だけじゃなく、中身まで変態になっちゃうよっ!


「うー、育代さん。もう、モンスターを狩って狩って、狩りまくりましょう!」


 僕は育代さんが着ていた水着を着て喜ぶ変態じゃないんだっ! と、自らに言い聞かせるようにモンスターを探しては戦い続ける。

 そして、


『おめでとうございます。レベルアップしました。レベル20になりましたので、一次サブクラスが1つ解放されます。尚、年齢制限モードのため、ステータスは自動割振されました。スキルの取得は手動となります』


 一心不乱に戦い続けた結果、僕のレベルが20に到達した。

 一次サブクラス? そんなのネットには載ってなかったような気がするんだけど。


「ツバサちゃーん! 凄ーい! おめでとー!」


 レベルアップのご褒美、育代さんが僕を温かく包み込む。


「はい。頑張りましたー!」

「あらあら、ツバサちゃんったら甘えん坊さんになっちゃったのね?」


 その途端に頭が真っ白になり、僕は育代さんの優しいハグに飢えていたかのように、自ら抱きつきに行ってしまった。

 だけど、レベルアップの度に柔らかい抱擁をくれた育代さんが、何故か強張る。

 一体どうしたのだろうと胸に埋めていた顔を上げると、育代さんが何かに視線を奪われたかのように、遠くを見ていた。


「育代さん?」


 育代さんが見ていた方向に僕も視線を向けると、


――フシュルルル……


 洞窟の天井にまで到達しそうな――二メートルくらいの体長がありそうな、大きな蛙がこちらへ向かっていたのだった。

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