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キャラメイクに失敗して幼女になった僕は、いつの間にか最凶ギルドのマスターに!?  作者: 向原 行人
第3章 一人前を目指して

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第10話 水の街

「ただいまー」


 学校から帰ってきたけれど、いつもの様に渚が抱きついてこない。

 今日は委員会があって、いつもより少し遅く帰ってきたから、遊びに行ってしまったのだろうか。

 それなら、今日は邪魔されずにすぐにゲームの世界に飛び込める。

 足取りも軽く、二階へ上がって部屋に入ると、


「あ、お兄ちゃん! おかえりー!」


 何故か僕のベッドで渚が寛いでいて、その直後に勢い良く抱きついてきた。


「渚。僕の部屋で、何してるの?」

「お兄ちゃんの帰りが遅いから、お兄ちゃんのベッドに隠れてたの」

「え、どうして?」

「だって、家で一人ぼっちって怖いもん。だから、今日はボードゲームしようよー」

「いや、渚はもう五年生だよね? それに、『だから』の使い方が間違ってるよ」

「まだ五年生だよ。とにかく、今日こそ遊んでよねー」


 そう言って渚が僕から離れると、部屋の真ん中に広げられたアナログのボードゲームの傍へちょこんと座る。

 もう二日連続でフォーチュン・オンラインをどっぷりしちゃって、あまり渚に構ってなかったっけ。

 昨晩ネットで得た情報を早速活かしたい所だけれど、仕方ないか。


「んー、じゃあ一回だけだからね。僕は勉強しないといけないんだから」

「はーい! じゃあ、お兄ちゃんからルーレット回してね」


 ……


「くっ……まさか、株が大暴落するなんて」

「ふっふっふー。お兄ちゃんも、まだまだだねー。じゃあ、お勉強頑張ってねー」


 ボードゲームで僕に圧勝したからか、渚が機嫌良く部屋から去って行った。

 残念な事に、僕は運に左右されるゲームは弱いんだよね。

 じゃあ、囲碁や将棋は強いのかと聞かれると、そうでも無いけど。


「まぁいいや。とにかく、今日から僕はバードなんだから。そっちのスキルを磨かなきゃ」


 いつもの様にログインすると、見慣れた冒険者ギルドに立って居た。

 ギルドのテーブルでは、僕と同じ年くらいに見える少年たちが雑談しているけれど、話に夢中で僕には気付いていないみたいだ。

 今は僕もやりたい事があるので、そのまま受付のお姉さんに話し掛ける。


「すみません。空間移動サービスって使えますか?」

「はい、ご利用可能ですよ。別の街の冒険者ギルドへ一瞬で移動可能ですが、どちらの街をご希望ですか?」

「えっと、水の街へお願いします」

「畏まりました。それでは、転移させますね」

「ちょ、ちょっと待ってください。まだ料金をお支払いしていないんですけど、おいくらですか?」


 一次クラスになると、お金を払って他の街へ一瞬で移動出来るサービスが受けられるとネットで知ったものの、料金は行き先によって異なると書かれていた。

 そのため、僕の全財産――初期の所持金である銀貨百枚以内でないと使えない。


「いえ、ツバサ様は低年齢プレイヤー補正により、利用料金が掛かりません。無料でご利用いただけます」

「え? 無料!? 本当に!?」

「はい、本当です。利用回数制限などもございません。では、転移させてよろしいですか?」

「は、はい。よろしいです」


 返事をした直後、視界が真っ暗になり、そして一呼吸の間に視界が戻る。


「ツバサ様。空間移動サービスのご利用、ありがとうございました」


 いつもの街とは違い、眼鏡を掛けた銀髪のお姉さんがカウンター越しに話しかけてきた。

 冒険者ギルドの雰囲気も少し違って、大きな天窓があるからか、凄く明るい。ちゃんと別の街へ移動したみたいだ。


「あの、すみません。川のダンジョンって、どっちに行けば良いですか?」

「川のダンジョンは、この建物を出て、真っ直ぐ西へ行けばありますよ」

「なるほど。ありがとうございます」


 僕の目的地、川のダンジョン。

 文字通り、洞窟の中を川が流れるダンジョンで、水棲系のあまり強く無いモンスターばかりが出現するとネットに書かれていた。

 そしてモンスターの数もあまり多く無いので、大勢で行くには不向きなダンジョンとも。

 だけどそれは、逆に言うとソロで――一人で行くには適したダンジョンだという事だ。

 バードになるまでは、沢山の人に助けてもらっちゃったけど、そろそろ自分の力で何とかしないとね。

 意気揚々と出発しようとした所で、


「お待ちください、ツバサ様。失礼ながら、その靴で川のダンジョンへ行かれるのですか?」

「え? はい。動き易くて良い感じなんですけど、ダメですか?」

「残念ながら。川のダンジョンは入って暫くすると、川の中を歩かないと奥に進めなくなっています。その服は丁度良いと思うのですが、靴は履き換えた方がよろしいかと」


 服は丁度良い……って、しまった。昨日、ギルドで間違って渡された、女性用の詩人の服のままだ。

 裾が短いから、膝上まで水に浸かっても濡れないけれど、僕がワンピースなんて着てたら通報されるよっ!


「あの、すみません。この服なんですけど、バードに転職した際に別のギルドで貰ったんですが、交換とかって出来ませんか?」

「申し訳ありません。アイテムの交換などは出来ないんです」


 受付のお姉さんに、深々と頭を下げられてしまった。システム的な事だから、お姉さんでは対応出来ないのかもしれない。


「あ、無理ならいいですよ。その、別の服もありますし」

「そうですか。ですが、川の水で服が濡れると、敏捷性が失われますし、身体が冷えて徐々に体力も奪われますので、御注意くださいね」

「う……じゃあ、この服の方が良いのかな? けど……あ、そうだ。靴は、どんなのが良いんですか?」

「こちらのブーツはいかがでしょうか。水系の防御耐性がありますし、このアイテムでしたら、ツバサ様には無料で差し上げる事が出来ますし」


 この靴のプレゼントは、低年齢プレイヤー補正とかいうサービスだろうか。

 今から行くダンジョンには打って付けの装備だけど……見た目が完全に長靴なんだよね。しかも、ピンク色で小さなリボンが付いているという。

 どう見ても、小学校低学年の女の子向けだよね?


「あの、それと同じ靴をお店で買うと、いくらくらいしますか?」

「このブーツですか? すみません。非売品なのでお店で購入は出来ませんし、売却も出来ないのです」

「えっと、もの凄く厚かましい事を言ってしまうんですけど、その靴に他の色ってありますか?」

「この色しかありません」

「……それ、ください」


『レインブーツを受け取った』


 いつものメッセージが表示されたけど、やっぱり長靴だよっ!

 一先ずダンジョンに入るまでは装備せずに、今の靴で行こう……こっちも赤い上靴だから、似たような物だけどさ。

 僕はお姉さんに礼を言うと、急いで川のダンジョンへと向かったのだった。

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