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『仲間』と『救い』


「ねぇ…ルイ…?一度ギルドに行ってミルティスにこの事を伝えに行こうよぉ!」



ポコは琉偉に現在捕縛しているゼスト王国の騎士、暗殺者ロックスの処遇しょぐうと『最上級貴族』のアテナの安全を第一に考え、早々に移動する事を提案した。



「う〜ん…そうだな…少し話がデカイな…よし!なぁ?ゴンド!!コイツは俺らの馬車に乗せてく!手伝ってくれ!」


「ヘイ!旦那!…じゃ、立て!おら、行くぞ!」


「……」


「オイラは族長に伝えてくるよぉ!」


「ああ!…頼む!」


琉偉の一言でゴンドが項垂れるロックスの腕を掴み馬車に連行して行く、そしてポコがアテナの待機する馬車に駆け寄っていく。



「……なぁ?ロックス…お前を裏切った奴らって…仲間だったんだろ?なんで…お前を殺そうとしたんだ?」



琉偉がロックスと一緒に馬車に乗り込み、少し落ち着きを見せ始めた金髪の騎士を見て声をかけた。



「…俺を刺したのは…今回の暗殺任務に選ばれた小隊長だよ…俺は任務内容を知っている…はは…普通に考えて口封じだろ…軍人なんてそんなもんだよ…」



淡々と語るロックスは琉偉の顔を見ずに答えた…己の立場を考え、乾いた笑いを口ずさむ様に馬車の床を見続けていた。



「そっか…なぁ?ロックスは嫁さんとか子供とか家族はいんのか?」



「?なんだ?そんなの関係ないだろ…変な事聞くんじゃねぇよ…もし…居ても…今回の作戦失敗の罪で一族は皆殺しだろうよ……」


ロックスは声をグッと落とし儚く諦めた様に現実を琉偉に伝えた。


「……お前はそれでもいいのか?」


琉偉はロックスの正面に腰掛け再び問う。


「…もう…どうする事も出来ねーよ…俺は失敗したんだ…」



「でも…お前は生きてるし…幸いと言っちゃアレだが…死人も出てない…なぁ?ロックス…俺と取引しないか?」



琉偉はロックスに語りかける様に声を届け、少しだけ笑って見せた。



「…お前…何者だ?暗殺犯と取引って…お前只の冒険者じゃ無いだろ?ルイって呼ばれてたな?取引の目的は何だ?」


ロックスは眼前の異国の冒険者を慎重に観察しながら問う。


「俺の目的か…ん〜っ…なんっーか…守ってやりたいんだよ!国や生まれや種族…言葉が違うだけで殺す、殺させるって…馬鹿らしいだろ?俺は知ってんだ…大切な奴が居なくなっちまう寂しさと悲しさと怒りを…」



意外な取引の目的を唖然と聴くロックスに異国の冒険者は語る。



「ロックス!知ってるか?恨みや憎しみは一回現れると増えてっちまう!…今回、アテナは無事だったが…もし…手遅れでお前達が任務に成功したとしたら…俺はお前達を許さなかった…探し出して報復をするんだ!そして…報復された人の周りは更に恨んでもう誰にも止められなくなって気がつけば戦争だ…それが人の心だ!…でも…人は…世界は変えられるんだ!それが今なんじゃねーのか!ロックス!」



「お前…」


一生懸命に声を投げかけてくる漆黒の瞳を持つ1人のおとこを観てロックスは呟く。



「俺は…変えるんだよ!!アホみたいな理由をつけて人を殺すこの世界を…馬鹿みたいで…何言ってんだ?って思うかもしんねぇーけど…俺は決めたんだ!この世界に『家族』が居るから…命を賭けてそいつらを守る理由が俺にはあるんだ…」



ロックスは真っ直ぐに琉偉を見定める。


「…土龍の奴も変わった奴だったけど…お前も相当変わってるな!?そんだけの力を持ちながらお前は『奪う』事をせずに『護る』事を選ぶのか?…ははははっ!…あのポコとか言う冒険者が惚れたのはお前だな?…取引の内容を教えろよ!英雄!」



ロックスの心は奪われてしまった…


素性も何も知らない自分よりも若い冒険者に希望ひかりを見てしまった。


そしてロックスは気持ちよく笑うと、琉偉に笑みと尊敬に似た気持ちを向けて持ち出された取引の詳細を問う。



「俺の要望は俺の仲間になれって事だ!そして、その暁には…今回の件で皆殺しにされそうなお前の家族を守ってやる!それが今回の取引の内容だ!」


琉偉の提案は意外な物だった。


そしてロックスは動揺しながら問い返す。


「はぁ?お前…何言ってるの分かってんのか!?俺はゼスト王国の騎士で…ラウル王国の重役暗殺を謀った『敵』だぞ?それを…奴隷ならまだしも…仲間って…お前…本気か?」


ありえない条件に慌てて状況を説明しだすロックスを琉偉は笑って見てた。


「『敵』だった…だ!今は違うだろ?ロックスは国に命令されたんだろ?だから俺の敵はロックスじゃない!お前の国だ!だから一発殴ってやるよ!お前の国をな!……それに俺はどこの国の味方でも無いし、アテナは知り合いだったから助けただけだ!どうだ?悪い話じゃ無いだろ?」



琉偉はえらぶる様子も無く、一国を敵に回す恐怖を一切見せず楽しそうに声を綴る。



「…本当…お前って……いや…お前はこれから何をする気だ?」


呆れ返るロックスは琉偉にその先を問う。


「俺のする事は…この世界の差別と理不尽をぶっ飛ばすんだよ!俺は…『家族』が…笑って暮らせる世の中を作るんだよ!」



琉偉はこの世界に来て暖かさを知った…


他人の為に泪を流せる自分を知った。


自分が何者で、何の使命があるのか分からず辿り着いた世界には琉偉と同じ様に、怒りと悲しみの中で生きていた『仲間』と出会い、仲間の優しさと苦しみを知り、『家族』となった。


琉偉はなんとなく分かっていた…


いつか…自分がこの世界から消えても安心して残された『家族』が生きていけるように…


その為に自分に何が出来るか…


そして…家族を知らなかった琉偉は世界を変える事を選んだ。



一旦の間を置いてロックスは質問を続ける。



「お前は…ルイは俺が裏切るとかは思わないのか?」


「俺は…俺の『家族』に『カッコいい』と笑いかけた奴を疑ったりはしない!…だからこんな話をしたんだよ!」


自信満々に答える琉偉は古い悪友のに無邪気に笑った。


「…は…ははははっ!分かったよ!俺の安っちい騎士道をお前に…ルイにくれてやる!その代わり約束してくれ…この腐った世界を救うと!」



そして琉偉の答えの後にロックスは顔の創傷を歪ませながら笑った…


琉偉の理由は簡単だった。


気持ちの良い程、単純な答えだった。


ロックスは吹き出し自然な笑顔になり、『約束』と言う言葉に力を入れ、琉偉を見つめた。



「おう!任せろよ!ロックス!一緒に世界を変えようぜ!」



ロックスは差し出された琉偉の右手を縛られた両手で力強く握りしめ、未来を託した。



「……ねぇ?ロックスさん!ルイは最高でしょ?」


そこに嬉しそうに高声をあげる赤髪の少年が馬車に乗り込み満面の笑みでロックスを見上げた。



「…ああ…そうだな…お前と一緒で最高のお人好しだ!」



「ポコ!?いつからいたんだよ!って話聞いてたのか!?」



「ん〜っルイがロックスさんを誘ったらへんかなぁ?…かっこよかったよ!英雄様ぁ!」



「うるせーよ!!茶化すな!取り敢えず…俺たちの戦力は上がるし、仲間にしてもいいだろ!?」



「もちろんさぁ!よろしくね!ロックス!」



「…おう…よろしくな!土龍のポコ!」



ロックスがポコを見て軽口を叩き、照れる琉偉を弄るように褒め、赤髪のパーティリーダーはロックスの縄を紐解ほどき、小さく力強い手を元暗殺者に向けて優しく笑った。



「よぉーし!ゴンドぉ!行こうか!」



「…グスン…へ…ヘイ!ポコ様!」



そして…琉偉達の話をポコと2人で盗み聞きしていたゴンドは目頭を押さえ鼻をすすりながら馬車を黄昏の迷宮に向けて走らせる。



「ねぇ?ルイ!ロックスの事…族長になんて説明するの?一応国外の騎士だし、命を狙われた身だから…ちゃんと説明しなくちゃ……あっ!ミルティスは?もしかしたら…怒るかもね!族長を暗殺しようとした人を仲間にしたって言ったら…どうしよう…」



ポコは現在の複雑な状況を考え、今後の方針を決め兼ねて琉偉に事態の処理法を問う。



「ポコ!難しく考えるな!ありのままを話せば納得してくれる!…様な気がする!!」


琉偉が腕を組み適当に答える。


「いや…もっと真面目に考えてくれ!俺が心配になってきたぞ!!っーかルイとポコは冒険者だろ?あの龍人族の族長はそんな事許してくれるのか…?…俺の国なら絶対にありえない事だが…」



「ん?アテナは大丈夫だろ?オレ達の味方だし、ミルティスはうるさそうだけどロックスに何かするとは思えないしな!」



「…本当にお前等って…もしかして…そんな凄い装備だし…上級貴族か国賓だったりするのか?」



「う〜ん…それは今日の夜にでも話そうよぉ!話すこ事はいっぱいあるけど…先ずはロックスの安全を確保する為にギルドに今回の事を報告して、国の方針に従おう!」



「そうだな!ロックス!心配すんなよ!オレ達に任せとけば平気だって!」



「お…おう!頼んだぞ!」



ポコが迅速なリーダーシップを発揮し、不安を搔き消す様な琉偉の笑顔にロックスは少し安堵し、今日の巡り合った2人の冒険者に不思議と心を許してしまった。




程なくして琉偉達は迷宮前に到着し、新しい仲間『ロックス』とアテナと共に黄昏の迷宮に向かい一階の冒険者ギルドを目指した。



「…ポコ?其方そちらの騎士は自由にさせて平気なのですか?」


通路を縄を掛けず歩くロックスを見やりアテナがポコに問う。


「…えっと…あの後色々あってルイがこの人…ロックスを仲間にしちゃったんだ……命を狙った人と一緒にいるのは不安だと思うけど…ルイを!いや…このロックスを信じてあげて!族長!…お願い!」



ポコは通路を進む足を止め、アテナに起きた事を正直に話し小さく頭を下げた。



「ポコ…使徒様がお決めになられた事を否定する事はこのアテナ…生涯有りません!しかし…少しだけ…またあの時の恐怖が…使徒様!やはり口…」


「おい!お前の頭はそれしかないのか!?もうこのやり取りは飽きたんだよ!……まっ!でも信じてくれてありがとな…感謝するよ!」



「はい…あっ…また先程の発作が…」


「…はぁ…」


アテナの言葉を予測して早々に切り返した琉偉はとことん信用してくれている白髪の痴女アテナに感謝を告げ、深くため息を吐いた。



「あ…あの…何を述べても許されるとは思いませんが…私はこの2人に助けられました…騎士として、男として誓って二度と貴女様に危害は加えません…本当に申し訳ありませんでした。」



ロックスはアテナの前に出て片膝をつき己の言葉に誓いを乗せて深く頭を下げた。



「…他国の騎士よ…私は何も覚えてはいませんから…どうぞお気になさらず!ですが…もしも救われた恩が心に残るのであれば…それは…この2人の英傑にお返し下さい。」



アテナは暗殺の一件を責めず、目の前に伏す騎士に慈愛と、許しを語り少しだけ微笑んだ。



「深く…深く心に刻みます…そして…貴女様に…心より感謝を…」



ロックスは騎士として、掛けられた情けを悟り、貴人に最上の感謝を贈った。


「少し見直したなよ!ありがとな!アテナ!」


「使徒様…」


「いや…ぞくちょう…もうほんといいよぉ…ルイ!!」


「俺かよ!!」


ギルドのロビーを威厳の薄まりつつある最上級貴族は顔を艶らせ琉偉を見つめて機能停止させ、ポコの正当な抗議が1人のアホに向けられた。


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