表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/30

『騎士』と『暗殺』


黄昏の迷宮近くの林道に、騒々しくつん裂く様な剣音と命をの終わりを感じさせる声が森に響き、白髪の貴人に対し1人の護衛兵が切迫した声を上げる。



「アテナ様!!お逃げください!!お早く!!…おい!貴様ら!こ…この方は高貴なる身分!きっさきを向けていい相手ではない!!何者だ!」



『ズバっ…』


「アテナ様…お逃げ…『ドサッ…』」


「うるせーんだよ!こっちは仕事なんだ!邪魔すんなゴミが!!」



漆黒の鎧に鮮血に塗れた鋭く光る剣を持ち、奇怪な仮面を付けた男が吐き捨てる様に護衛兵の命を奪った。



「おい…もぉ…逃げられねぇーから諦めろよ?さっさと仕事させてくれ!もうあんた1人だ…終わりだよ…」



「…其方らは何処の国の者だ…と答えるはずは無いか…だが、私も…ただ殺させる訳にはいかないのです!」



馬車の前に立つアテナが緋色の眼を細め、静かに眼前の4人の漆黒の『騎士』に殺気を放つ。



「ゼラ!早く片付けろ!魔法を使う気だ!」



「おい!!てめぇ素人か?名前なんて呼ぶんじゃねぇよ!カス!…まっ…知られたとこでコイツはココで死ぬんだけどなぁ!」



漆黒の鎧を纏う騎士達の中の1人が『ゼラ』と呼ばれる騎士に警戒を発し、名を呼ばれた騎士が口悪く罵り、アテナに向け仮面の中から嬉々とした声を奏でた。



「…《陽光を威殺す闇の精ベーゼよ!》…」


『キーーンッ』…


「…撃たせる訳ねぇーだろ?龍人族の族長さんよ?…チッ……防御魔法を仕込んでんのか…めんどくせーな!」



アテナが詠唱を始めた瞬間に漆黒の騎士は一瞬で距離を詰め、白木の様に真っ白で細い首元に迅速の一撃を入れた…しかし、首元数センチの所で騎士の剣は金色のマナの壁に止められ、再び距離を取る。



「……速いな…覚悟を決める時ですか…カンナ…後は頼みます…」



アテナは一筋の汗を流し、運命を受け入れるかの様にか細く、託すかの如く呟いた。



「次は…決めるぞ?…ハッ!!」



騎士の持つ血濡れた剣が淡い白に発光し再び剣撃の予備動作に入る。



「!!!お前ら!!何か来る!!躱わせーー!!!」


その時、煌めく剣を構える漆黒の騎士が後ろを振り返り、仲間に警告の声を上げる。



「えっ?『ドスッ』うっ…『ドサッ』」



「……アテナ!!大丈夫か!!こいつ等…敵だよな?」



そこに閃光の様に人影が漆黒の鎧を纏う1人の騎士を吹き飛ばし、一瞬にしてアテナの隣に立ち、『赤龍の宝剣』を抜剣する。



「……使徒様!?…私…もう恐ろしくて恐ろしくて…抱いてください!!今すぐに口づけを!!」



アテナが駆けつけた琉偉に潤ませた瞳で近寄り腕に抱きつき胸を押し付ける。



「なんでだよ!!お前どんな状況でもビッチな体質は変わらないんだな!?…ってかこいつ等なんだよ?…ぶっ飛ばしていいんだよな?」



「はい!使徒様!!」



琉偉はいつもの盛ったアテナを引き離し、状況の確認と許可をとる。



「…クソ!パーレンの上級冒険者か?…」


「一度引こう…コイツの強さは異常だ!」



「は?こんなクソガキの所為で俺達の計画を狂わせる訳にはいかねぇ…2対3だ…やるぞ!」



「おっ?やんの?よっしゃ!死にたい奴からかかって来いよ!」


琉偉は不敵な笑みを見せながら戯ける様に宣った。



「…下賤げせんのガキが!でかい口叩くんじゃねーよ!おお!!!」



『キーーーン』…『ザク』


血濡れた剣の刀身が高い音を鳴らし地面に刺さる。



「嘘だろ…俺の剣が…」



琉偉の一撃は相手の構える剣を斬った。




「あ?なんだ?なまくらか?…もっといい剣を使った方がいいぞ?…なぁ?ポコ?」



「…うん!そうだね!オイラ達とやりたいなら伝説級の武器を持ってこないと話にならないよぉ?…まだやるの?『ゼスト王国』近衛騎士団の『ゼラ・ルード』さん?」



琉偉の挑発じみた言葉に騎士達の背後から杖を構えた赤髪の少年が無垢な子供の笑みで、正体を暴かれた漆黒の仮面騎士『ゼラ・ルード』に声を放つ。



「ゼラ!不味い…どうする!?」


「…鑑定スキル持ちか…クソガキ……一度引くぞ!」


「ああ…撤退だ…とその前に…『ザク』」


「うっ…『バイパー』…てめぇ…」


鎧の男の1人が琉偉に殴られ気絶した仲間の男の胸に剣を刺した。



「コイツ仲間を…やりやがった…クソやろぉ…」


その光景を見た琉偉の眼に怒りがこもる。



「…お前等…こんな事して…逃げられると思ってんのか?」



「ルイ!気をつけて!!魔法を使う気だ!!」


ポコが叫ぶ。



「俺に掴まれ!!《ビアードグラセス》!!」



「は?あいつ等…消えやがった…」



詠唱無しで唱えた魔法により漆黒の鎧を纏う3人の騎士達は忽然と消えた…。



「…多分『移転』系の魔法か…魔法珠アイテムを使ったんだ!」


「移転魔法は珍しいんじゃねぇーのかよぉ…まぁ無事で何よりだが…」



「…ねぇ!ルイ!!この人…まだ生きてるよ!」



横たわる残された1人の騎士にポコが近づき鮮血が鼓動に合わせて吹き出す胸に耳を当て心音を確認し琉偉に微かに息がある事を伝える。



「しゃーねぇーな…ほらよ!ポコ…飲ませてやれよ!」



琉偉は鞄の中から神薬エリクサーを出しポコに手渡した。



「うん!ありがとう!ルイ!」



「……使徒様は…どんな者にも慈愛の心は忘れないのですね…あっ…何故か胸が…ドキドキします…これは病気?いや…これは…恋?いや…使徒様!私…使徒様を愛してしまった様です!」



「なぁ?アテナ…それはもうただの病気の発作だ!飲むか?これ?」



「そんな…辛辣な使徒様もお素敵です…」



「ちょっとぉ!!ルイも族長様も、もっと真面目にやってよぉ!国の最上級貴族が暗殺されかけたんだよ?それに、護衛兵の人達も今なら助かるかも!早くこれを飲まさないと!!」


ふざける2人のアホ共にポコが真面目に諭し、命を救う為に声を早めた。



「ポコ…いや…彼らはもう…すでに…」



アテナは声色を落とし手遅れだとポコに呟く。



「族長!やるだけやってみようよ!!これは神薬エリクサーだよ!?もしかしたら…」



「…!!?神薬エリクサー?ポコ?今!神薬エリクサーと申したのですか!?」



ポコの発した『神薬エリクサー』と言う単語に敏感に反応するアテナ。



「え?そうだよぉ!貴重な物だけど…族長が驚くなんて意外だなぁ…族長は流石に見た事あるでしょ?」



ポコの知識の中では神薬エリクサーは最上級貴族なら使用もしくは所有していると思ったからだった。



「ポコ…神薬エリクサーは…既にこの世には無いとまで言われている魔法薬です…数10年前迄は存在は確認されていましたが…もう作られる事も存在する事も無い筈なのですが…」



「えっ?…爺様の話じゃ…聖金貨1枚程の価値だって…」



「それは『大戦』前…200年以上前の価値です…今の神薬エリクサーの価値は…たとえ…聖金貨1000枚用意したとしても…手に入れる事は出来ません…」



「せ…聖金貨1000枚??え?うそぉ!!!」



「おい!ポコ…全然違うじゃん!千倍じゃん!」



「そんなに高価な代物だったなんて…ごめんよぉ…オイラ知らなかったよぉ…」



アテナの最新情報に、ポコが琉偉に間違った情報を教えた事に動揺し、自分の知識の浅さを謝った。



「いや…良いけど…あんまりバンバン使うと…俺達狙われるな…その額だと…まっ!持ってた物が高かったって感じで結果オーライだな!ハハッ!」



琉偉は珍しく危機感を働かせ、ポコを気遣う様に笑い飛ばした。



「じゃあ…手分けしてやられた奴らにコレを飲ませてやろう!…それと野郎は縛って、起きても暴れない様にしとくか!」



「うん!そうだね!族長は念の為、馬車に入ってて!」


「そうか…気を遣わしたな…ポコ…それと使徒様…遅れながら…先程は本当にありがとうございました…後程こので体で…」



「いらねーから早く馬車に乗れ!バカ女!」



「…愛してます…」



「うるせぇーよ!!」




琉偉は高貴な変態に相応そうおうな対応をし、鞄から更に赤い小瓶に入った神薬エリクサーを出して倒れている10人程の護衛兵に飲ませた。




『えっ?俺…生きてる!』


『なんだ…お前…確かに斬られて…俺も傷がない?』


『おお!!斬られた腕が戻ってる?なんで?神の奇跡か?』


『アテナ様は?どうなった!?』


『もしかして…アテナ様の回復魔法か?』


息を吹き返した護衛兵達が己の身に起きた事態を把握出来ず戸惑いながら互いの無事を確かめた。



「お前ら!アテナは馬車に乗ってるから、ちゃんと護衛してろよ!」



琉偉が安心させるかの様に護衛兵達に言葉を発し、暗殺者の1人に目をやりポコに問いかける。




「…ポコ?コイツは…人族か?」



胸の傷の処置を終わらせ、仮面を外すと、短い金髪で右目の眉から頬の下の方まで刀傷が走る20歳程の男の顔がそこにはあった。



「その人の名前は『ロックス・ウェート』さっきの人達と一緒で『ゼスト王国』の人族の騎士だよぉ!」



ポコは意識を失ってる騎士の素性を鑑定し、琉偉に詳細を告げる。



「騎士ねぇ…『パシン』おい!起きろ!ロックス!」



琉偉が縛り上げたロックスと言う名の男の頬を強めに叩き意識を取り戻させる。



「いて…あ?…俺助かったのか?へ?傷がない?…クソ…捕まったのか……殺せ!俺は何も吐かないし何も知らない…」



ロックスは己の身に起きた異常な現状に心を空にさせ、琉偉の漆黒の瞳を確認すると諦めたかの様にお馴染みの台詞を吐いた。



「おいおい…先ずは助けてくれてありがとうだろ?お前の騎士道きしどーはそこいらの盗賊と同じか?」



「…旦那…それはあっしの事ですか…?」



琉偉が暗殺者ロックスに尋問しようとした時、後ろからゴンドが気まずそうな声を発した。



「なんだよ!いつの間に居たんだよ!ゴンド!」



「ヘイ!今さっきです!ちゃんと隠れてました!」



「ちゃんと隠れてたって…ポコに言われたのか?」



「そうです!ポコ様が戦闘に巻き込まれない様に馬車と一緒に隠れてろとの命令でした!…まぁ…面目ねぇ事にあっしが居たところで足手まといになる事は確実でしたから!…それにしても…やっぱ旦那は異常なほど強いですね!」



ゴンドは調子よく笑い、先程の戦闘を見て瞬殺された過去を思い出し琉偉に賞賛を贈る。



「…そうだな!多分…一緒にやったらゴンドは斬られてたかもな!ハハ!ナイスな判断だポコ!」



「うん!優秀な御者に怪我はさせられないからね!」



ポコは鼻の下を指で擦り胸を張って威張り、冷静に相手の力量を見極めた自身のパーティリーダーの功績を琉偉は讃えた。



「で…どうしやすか?この男…他国の騎士ですよね?馬車に乗せて黄昏のギルドに連れてきますか?」



「ん…どうするポコ?」



「…ねぇ?ロックスさん!知ってる事を話してくれないかなぁ?」



「…クソ…鑑定のスキルか…じゃあ国もバレてるのか…1つ教えてくれ…なんで…俺を助けた?…」



実名を呼ばれた事に少し驚いた様子でロックスと言う男はポコに瀕死の傷を癒し、助けた理由を問う。



「…それはねぇ…オイラの知り合いに『命』を大切にする男がいるんだぁ!!その男はね?すっごく優しいんだ!」



ポコはロックスの質問に笑みを見せながら答える。



「は?…何言ってんだ?そいつは…人も殺せないただの『臆病者』だ!そんなのは優しさじゃない!!」



ロックスはポコの答えを聴いて怒声に似た声をあげた。



「…人を殺す事が強い事なの?オイラは違うと思う!

オイラは…自分を殺そうとした人さえも許し、救いの手を差し伸べ、一緒に笑える事が出来る人を『臆病者』なんて思わない!!………仲間に見捨てられ、死にそうな『敵』だって助ける!!その男は『命』が本当にかけがえの無いものだって知ってるんだ!!オイラは…それが出来る人が本当に強くて、泣けちゃうぐらいカッコイイ本物の『おとこ』だと思う!!」



ポコはロックスの言葉を否定し言い切った。



迷いは一切なく、真っ直ぐな想いを、大きな紅い瞳に乗せてロックスを見つめ、ポコの目指す『おとこ』を声高らかに宣った。



その話を無言で聴き笑う琉偉とゴンド。




「…お前…名前…なんて言うんだ?」


「オイラは…『ポコ』…『土龍のポコ』…オイラの目指す英雄がくれた称号だよぉ!」



ポコは瞳を輝かせ、呆然として聴いていた漆黒の騎士に逞しい声を発した。



「…『土龍のポコ』か…お前が……噂の…黄昏の覇者か…成る程……カッコいいな…俺の負けだ…答えてやるよ…それで…何が聞きたい…?」



ロックスはポコの語る強さを認め、少し笑った顔を見せた。



「ありがとう!ロックスさん!…それじゃあ聞くけど…なんで龍人族の族長の命を狙ったの?」



「…暗殺犯に感謝なんてすんな!変わった奴だなぁ……まぁいい…理由は上からの命令だよ!俺は…ゼスト王国の近衛騎士…国に仕えてる…だから龍人族の族長を狙った。」



「それが…明るみに出たら…戦争に発展しちゃうよね?」



「そうだな…王はラウル王国と戦争をしたいのかもな……それと…もう一つ理由がある…『水晶石』だ…それを龍人族の族長が所有していると情報が入ったんだ!そして俺は王命に従い、この黄昏のギルドまできたって話だ!土龍のポコ…これで俺の知ってる事は全部話した……」



ロックスは最高機密情報を漏らし、命を救って貰った恩に報い、目の前の小さな冒険者に知り得る事全てを話した。



「そっかぁ…ありがとう!ロックスさん!ルイ!どうしよう…結構な大事になっちゃいそうだよね……」



ポコは腕を組み何かを考える琉偉に今後の展開を予想し困った様に言葉を向ける。



「…なぁ?ロックス…だっけ?『水晶石』の情報はどこから手に入れたんだ?最近の話だろ?」



「水晶石の情報は…これは俺の憶測だが…恐らく…各地に点在する密偵か…『反乱軍レジスタンス』から買った情報だと思う…」



反乱軍レジスタンス?なんだそれ?」



「知らないのなら…首を突っ込まない方がいいぞ?」



「あ?…どう言う意味だよ!…ポコ知ってるか?」



琉偉はロックスの口から発せられた『反乱軍レジスタンス』と、聞き慣れない言葉を聞きポコを見る。




「…『反乱軍レジスタンス』は…今のこの世界を根本から崩そうとしてる謎の多い集団だよ…各地で反乱を画策して甚大な被害が出てるって聞いたことがある……どこの国でも国の転覆を図る『反乱軍レジスタンス』は『大罪』って言われてるんだぁ」



ポコは数年前から時折耳にするある組織の事を琉偉に話す。



「あの…旦那?反乱軍レジスタンスには関わらない方がいいですぜ?裏の世界を知ってる人間は絶対に関わらないってのが暗黙の了解でさぁ…今まで反乱軍レジスタンスと間違われて殺された奴らが…どれ程いたか…」



ゴンドがロックスの言葉を肯定するかの様に琉偉の身を按じた助言を贈る。



「へぇ…そんな組織的な奴らがいんのかこの世界にも……本当いつの時代も世界が変わっても…そこだけは変わらねぇーんだな…」



琉偉は現世で記憶した、国と反政府軍の紛争を取り上げたニュース番組を思い出し、くだらなそうに、呆れた様に呟いた。



「悪い事は言わない…冒険者で…国に仕えてないのなら関わるな…これが俺の言える唯一の警告だ…」



静まる林道でロックスは俯いたまま投げかける様に命を繋ぎ止めてくれた恩人に声をかけた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ