『魔法』と『錬金術師』
「ポコぉ!準備はいいか?俺はもう出れるぞー」
「うん!オイラも平気だよぉ!じゃあ、ファーラン…街での人材集めと、情報収集とシャールとその2人は任せたよ!やる事多いけど…報酬の『屋敷』を手に入れたらまた合流しよう!」
「はい!承りました…ポコ様!」
「あの…私も手伝います!ファーラン殿!」
「ベェーとブゥー!お前らの初任務だ!今日は俺達が戻るまでその2人を護ってくれ!報酬は夜のご馳走だ!いいな?」
「はい!ルイ様!お任せを!ブール!分かったな!任務だ!」
「うん!!僕達はファーランおねぇちゃん達を守る守護者だね!…ご馳走かぁ!!僕…頑張るよ!ルイ様!」
「おう!頼りにしてるぞ?じゃ、行ってくるよ!」
「お気を付けて下さいね!ポコ様、御主人様!」
「ああ!ファーラン!…行ってきます!」
琉偉達、『土龍一行』は朝食を済ませ、昨日の依頼の報酬を受け取りに行く為、琉偉とポコは完全装備を纏い、ガゼルの大宿を後にした。
「ねぇ?ルイ?どうしたの?ニコニコして?」
宿を出た琉偉が朝日を浴びて口元を緩ませている事に気付いたポコが問う。
「あ?…いや…誰かに『行ってきます』なんて久々に言ったから…な!まっ!気にすんな!ポコ!」
「…あははっ!良いよね!帰ったら誰かが待ってるのって!よぉーし!今日は早く帰ってお屋敷のお披露目の宴をやろぉーよ!お肉いっぱい買って帰ろうね!ルイ!」
「ああ!人も増えたし、身内だけの宴も楽しそうだな!ゴンドとエドガーも誘おうぜ!あと、今日ギルドでミルティスも誘ってみるか!」
琉偉の照れる笑顔を見てポコも笑い、2人はパーレンの街を正門に向け足を運ぶ。
「それと、今後の動きもまとめないとね!ああ…やる事はいっぱいだけど…なんか…オイラ…楽しいよ!」
「そうだな!俺達の冒険は始まったばっかりだもんな!…なぁ?ポコ?ポコは何か目標とかあんの?」
「目標?ん〜っ…目標かぁ…オイラが森から出たのは…爺様を探しに来たのが最初の目的だったんだけど…全然手がかりが無くて…それで生きていく為と…強くならなくちゃ!って思いで冒険者になったんだ!」
ポコは、琉偉に冒険者になった理由を伝えた。
「そうなのか…ポコの爺さんは居なくなってどれくらい経つんだ?」
「もう5年だよぉ…何回か精霊族の話を聞いたけど…爺様の手がかりになる様な話は無かったんだ…」
ポコは唯一の血縁者の土精霊事を思い出し、先程とは違う少し陰りのある声で琉偉に語った。
「じゃあ、ポコの爺さんも俺達の目的の一つだな!シャールの件が片付いたら次はポコの爺さん探そうぜ!これから世界を回るんだ!絶対見つけようぜ!な!」
琉偉はポコの不安をかき消す様に力一杯笑って見せた。
「…ありがとう!ルイ!」
「俺達は『家族』なんだ…当然だ!…おっ?あそこに居るのゴンドだな?遠目からでもあの真っ黒の馬車は目立つなぁ!」
ポコに琉偉は明るい声で語りかけ、正門近くで馬車の手入れをしている元盗賊のゴンドを目にした。
「ゴンド!おはよ!今日も頼むよ!」
「おはよぉ!やっぱりかっこいいなぁ!ゴンドの馬車は!」
「旦那ぁ!それにポコ様!おはようございます!今日も黄昏の迷宮ですね?ささっ!どうぞ馬車に乗ってくだせぇ!」
ゴンドはニッコリと朝の挨拶をし、黒光りする馬車へ
琉偉達に乗車する様に促す。
「おう!所で…ゴンドの子分達には昨日の話は話したのか?」
琉偉はゴンドに子分の就職先の件を確認する。
「はい!旦那のご厚意に…子分達は涙を流して喜んでました!人数は総勢20名ですが…大丈夫ですか?旦那?」
「そっか!良かった!腕っ節の強い使用人が居ると安心だからな!じゃ…今日は身内で宴をやるから紹介してくれよ!たらふく豪華で旨い飯を食わせてやるから!楽しみにしてろって伝えてくれよ!ゴンド!」
「…いいんですか?……本当に…感謝します!旦那!今日の夕方にあの屋敷の前に来るように伝えてあるのでその時に子分には挨拶させます!宜しくお願いします!」
「ああ!楽しく騒ごうぜ!よし!じゃ黄昏の迷宮まで頼むよ!ゴンド!」
「ハイ!旦那!」
「お肉をいーっぱい買うんだぁ!それとお酒も買っていこう!」
「あっしも楽しみです!ポコ様!」
ゴンドは琉偉を見つめ、言葉では表せない程の感謝を抱きながらポコのはしゃぐ声を聞いて笑みをこぼした。
「楽チン!楽チン!あっ!ねぇ?ルイ?今日さぁミルティスに『魔法』を取得出来るように頼んでみようよ!ルイのマナの量ならもしかしたらかなりの戦力アップになるんじゃない?」
馬車に乗り込み馬車の中から外を覗いているポコが琉偉に話を始める。
「ん?まじか!魔法ってそんな簡単に使えるもんなのか!?使えるなら使ってみたいなぁ!」
「うん!『魔導』のスキルを持ってる人に頼めば潜在的に持っている魔法が発現するんだ!その他にも便利な魔法だったり中には一つの魔法で国の筆頭魔導師になった人も居るんだ!すごいでしょ!?」
「へぇーっ!!じゃ俺もブールみたいに『転移魔法』だっけか?アレをを覚えたいな!そしたらどこに行くにも便利だしな!戦闘でも圧勝だろ!?」
「ん…っ…残念だけど…転移魔法の取得は難しいんだよぉ…数ある魔法の中で最も希少な魔法と言われてるんだ!ルイだったら他の人より可能性は高いと思うけど…」
「やっぱりそうなのかぁ…まっ!ミルティスに会ったら聞いてみようぜ!」
「そうだね!あっ!そぉー言えば…ミルティスは4つの属性魔法を使えるんだよ!やっぱりエルフ族は凄いよぉ!人族や獣人族は才能ある人でも2種類が限度って言われてるんだ!」
「そうなのか!じゃあ俺も使えても2種類か…」
ポコは移動中の車内で琉偉に魔法について語り、琉偉も興味深く聞き耳を立てる。
「うん!属性の種類は、火・水・雷・土・風・聖・闇そして特殊な『天属性』と『無属性』の9種類あるんだ!」
ポコの授業は続く。
「はーい!ポコ先生!転移魔法は何属性なの?」
「転移は無属性だよ!『無属性』と『天属性』は上位魔法って言ってとっても珍しいんだ! その他にもそのルイの鞄に付与されてる空間魔法なんかも無属性魔法だよ?」
「空間魔法って…あの贈り物にあったガラス玉のアイテムの奴か?」
「うん!オイラ、昨日の夜に調べたんだ!魔封石はその昔、この指輪の持ち主ランスロットが創り出した物だったんだ!」
ポコは琉偉から託された指輪を見せ琉偉に昨日の夜の話を始めた。
「ん?あぁ…銀髪巨乳と乳繰り合った夜の話か?」
「ちがうよぉ!!オイラは分別のある大人だよ?琉偉とは違うの!って違くてぇ…これ見てよ!」
ポコは一冊の分厚い古ぼけた本を鞄から出し琉偉に手渡した。
「??なんだこれ?なんの本だ?」
「はっはっはぁぁ!これは買出しの時に偶然手に入れた『ランスロットのレシピ』って本だよぉ!」
ドヤるポコがテンション高めに声を上げる。
「へぇ!確か…昔の偉い人だっけ?それに書いてあったのか?」
「うん!ランスロットは昔に実在した錬金術師だよぉ!そして、この本はこの指輪が無いと読めないように沢山の加護が付いてるんだよ!」
「…『レンキンジュツシ』?かぁ…よくそんなもん手に入ったな?高かったんじゃ無いのか?」
「ううん…それが…なんと!無料だったの!伝説級だよ!凄いでしょ!」
ポコは次第に興奮しながら琉偉に紅眼を輝かせる。
「そして…この本にはランスロットが作った数々のアイテムの製作の仕方が書いてあるんだ!」
「スゲーじゃん!!じゃあポコはその『レンキンジュツシ』ってのになれるのか?」
「…ルイ…錬金術師って分かってないでしょ?」
急に冷めたように琉偉を見つめるポコ。
「…ハハハっ!よく分かったな!?悪りぃそこから教えてくれよ!」
「もぉ〜…わからなかったらちゃんと質問してね!…『錬金術』ってのは特別なスキルが必要なんだ!それは『調合』と『錬成』ってスキルだよ!この2つを発現させないと錬金術師にはなれないんだ!」
「えっ?じゃあ…それ持っててもその2つのスキルが無いとただの古ぼけた本って事か?」
「……そうなんだ!ねぇ!ルイ!このランスロットの指輪をはめてオイラを見てみて!」
「おう!そぉー言えばポコもランクアップしたんだよな!…どれどれ?」
ポコは笑みを浮かべて右手から銀色の指輪を外しそれを琉偉に渡し、琉偉はポコの頭上に表示された文字を読んだ。
「えっとぉ…『ポコ・冒険者・ランクA・人族・取得魔法・土魔法・保有スキル・地脈看破・精霊の加護・詠唱省略・調合・錬成・称号・土龍』ってスゲー増えてんじゃん!!」
「凄いでしょ!?この本をランスロットの指輪をはめて読んだら…オイラのスキルに錬成と調合が発現したんだ!オイラは全部で5つのスキルを所有してるんだよ?」
「ほぉ!!じゃあ、やっぱりポコは錬金術師じゃん!カッコいいな!なぁ?俺も錬金術師になれんのか?」
「じゃあ!この本の最初のページをめくって見てよ!そして最初の文を読んでみて!」
「そんだけで良いのか?ちっと待ってろ?ん?おお!日本語!読めるぞ!『紅き資格を提示する…我が名はランスロットの意思を継ぐ者也…』……??なんも変わんないけど…なぁポコ?俺のステータスになんか増えてるか?ほら、指輪!」
「ちっと待ってね!『ルイ・冒険者・ランクS・人族・保有スキル・言語共通・聖龍の覇気・強奪・身体覚醒・称号・????・黄昏の覇者・ただのアホ・固有スキル・神降ろし・危険知覚』…ん〜っ…増えてないね…」
「なんだよ…少し期待したわ!じゃあ最初の一回だけだったのかもな!ってかその『ただのアホ』って称号を聞くたびにあのトカゲを殴りたくなるぜ!」
琉偉は残念そうに声を出し、思い当たるトカゲに何度目かの怒気を再燃させた。
「聖龍様にそんな事言っちゃダメだよぉ!…でも…ルイのスキルの『聖龍の覇気』と『強奪』と『神降ろし』ってどんな能力なんだろうね!あっ!そうだ!『危険知覚』と『身体覚醒』はこの本に載ってたよ?確か…危険知覚は言葉通りだけど身体覚醒って言うのは身体にマナを流して何十倍もの力を付与させるんだって!」
「へぇ…じゃあ、あのアホみたいな馬鹿力と頭の中に響く鐘みたいな音はスキルのおかげだな!まぁ…その内に他のスキルも分かってくんだろー?」
「うん!今日時間があれば迷宮に潜って試してみる?魔法を取得出来たら修練もしたいしね!」
ポコの真面目な学習能力のお陰で自分の能力を把握した琉偉が他人事のように口を開いた。
「迷宮かぁ…初日以来だな!って今日は魔物見れるかなぁ!?黄昏の迷宮でまだあの龍以外見てないからな!楽しみだな!ポコ!」
琉偉はこの世界に移転した日を思い出し、まだ見ぬ魔物への好奇心は強くなり嬉しそうにポコに語りかける。
「…そうだよね!あの時一回も魔物に遭遇しなかったもんね!…もしかして!ルイの『聖龍の覇気』って奴で魔物が怖かって隠れちゃうのかな?」
琉偉と一緒に迷宮に潜ったポコがある推測を立てる。
「え?じゃあ今日も逢えないのか?魔物…」
「それは行ってみないと分からないね!ミルティスに聞いてみようよ!ギルド長なら何か知ってるかもね!」
「そうだな!あいつも暇してんだろうしな!」
「ハハっ!そうだね!あっ!それとオイラが錬金術を使う事ができるってのはまだ内緒だよ?知ってるのは昨日協力してもらったシャールとルイだけだから!」
「ん?なんか困る事でもあんのか?」
ポコの口止めを疑問に思った琉偉がポコに不思議そうに問う。
「なんか…この本に書いてあったんだ!信用出来る人以外は口外しちゃいけないって!だからファーランには帰ったら話すけど…内緒だよ?」
「そっか!分かったよ、ポコ!俺たち家族の秘密だな!」
ポコは秘密を共有出来る幸せに少し照れたように琉偉に笑いながら話し、琉偉も悪さを隠す子供の様な顔でポコの話に頷いた。
「うん!オイラ達の秘密さぁ!今後に役立てる為にももっと勉強していつか凄いアイテムを作ってみせるよ!」
「じゃあ屋敷にポコの作業場を作ろうぜ!かっちょいい秘密基地的な奴な!」
「やったぁ!楽しみだなぁ!早く着かないかなぁ!」
琉偉の言葉に心踊らせたポコが外を見て子供の様に瞳を輝かせ、逸る気持ちを声高く発した。
「旦那ぁ!そろそろ着きやすぜ!」
その後もずっと喋りっぱなしの2人にゴンドが声をかける。
「ああ…サンキュー!じゃあ、気合い入れていくぞ!ポコ!」
「おー!!」
馬車の中に、琉偉の掛け声で応答する可愛い声が響く。
「旦那ぁ!?なんか様子が変ですぜ!!」
その時、迷宮近くに迫った時ゴンドが琉偉に声をかける。
「ん?あの馬車……おっ!あれってアテナだよな?ちょうど今から帰るのか?ん?ってあれ襲われてないか!?」
外を見た琉偉の目に入ったのは白髪の見覚えのある人物とそれを取り囲む何人かの武器を持った集団だった。
「ルイ!!戦闘準備だよ!!いい?」
「おっしゃーー!!今回は特攻1番機は俺が貰った!」
「えっ??ちょっとまってルイ!あれって……騎士じゃない??」
「は?騎士?盗賊じゃないのか??どうすんだ!ポコ!」
ポコの言葉に動きを止めた琉偉が馬車の扉を開け再度ポコに問う。
「…いや……行こう!!」
「そぉー来なくっちゃ!」
琉偉は走る馬車から飛び降り、全速力で駆け出した。




