『ポコ』と『衛兵』
ポコの過去、ポコ視点のお話です。
これは1人の土竜の物語…
孤独に耐え…
怒りに耐え、悲しみに耐えた…1人の土龍の物語…
辺りは薄暗く、陽の光が届かぬ冷間の檻の中で、1人の赤髪の少年はその小さな身体を起こし、満月の様に丸く、そして真紅なルビーの様な清光を放つ紅眼を鉄格子の外に向けた。
「おい!起きたか!?……おい!お前は何族ってか…身分を証明出来る物は持ってないのか?」
(あれ?オイラなんでこんな所にいるんだろう?最後に何してたっけ??…獣人??この人は誰だろう?)
「おーい…トリス語わかるか??なんか応えてくれよぉ!?チクショー…同僚…俺にめんどくさい事ばっかり押し付けやがって…クソ!…なあ?何か喋ってくれよ!」
「………『ポコ』…オ…オイラは…ポコってなまえだよ?」
赤髪の少年『ポコ』の紅眼の前に、本で読んだ事のある犬の獣人『犬獣族』の男が、ポコの認識出来る言葉を発して、鈍色に輝く鎧を揺らしながら必死にこちらに喋りかけていた。
「おお!!分かるか?俺はここパーレンの街で守備衛兵をやってる『エドガー』だ!お前は、ここの街の正門前で倒れてたんだぞ!?何があった?」
エドガーと名乗る犬獣族の衛兵は灰煙色の瞳を呆然とするポコに向け、檻の中にいる理由を語り、それまでの経緯を言葉短く尋ねる。
「えっとぉ…確か…爺様を探して『イザナの森』からパーレンの街まで行く途中で……あっ!魔物に遭遇したんだぁ!!」
ポコは頭の中で記憶の波を遡り、『唯一の家族』、土精霊の祖父を探しに、それまで暮らしていた『イザナの森』から出て、人探しの旅の道中「小鬼』に遭遇し、命からがら逃げ出した事を思い出した。
「そうか…じゃあ盗賊とかの類じゃないんだな?」
「うん!オイラは人の物を盗ったりした事は無いよぉ?」
「そうだよな…普通に考えてこんな子供の盗賊なんていねぇーよな?…同僚…ちょっと考えれば分かるだろ…バカども…だから人族は…あっ!わりぃ!ちょっとムシャクシャした事があってな!すぐ出してやる!待ってろ!」
衛兵エドガーは不満と文句を細々と口走り、途中から笑いながら赤髪の少年に言葉を投げかけた。
「ん?…どうした?なんか俺…言っちまったか?まさか!怪我とか痛い所とかあるのか!?待ってろ!直ぐに出してやるからな!」
呆然と衛兵のエドガーを見つめて、ポコは泣いていた…
ポコ自身、何故涙を流しているのか解らなかった…ただ、産まれて初めて自分に笑顔で言葉を向ける人に出逢い、紅く煌く瞳からとめどない雫を流していた…声を立てず、表情は真顔で、何かに救いを見たように…
「ううん…大丈夫だよぉ…『エドガー』なんでもないんだ!ごめん……ありがとう…」
ポコはただ笑い顔をくれた獣人の衛兵に感謝を伝えたかった…心からの深く暖かな感謝を。
「?なんだ?お礼を言われることなんて…やってないぞ!?…おかしな奴だな……ほら!開いたぞ!早く出てこい!」
全身を包む茶色のローブの袖で『ゴシゴシ』と小さい顔の目元を拭き、謝罪を込めた感謝を贈り、その光景を『心配して損した!』と言わんばかりの顔で、獣人の衛兵はポコに出獄を促した。
「あっ!オイラの鞄!!」
「ああ…やっぱお前のか!それはお前と一緒に落ちてたんだよ!良かったな?襲ってきたのが盗賊じゃなく魔物でな!」
錆びついた音を奏でながら鉄格子の扉が開き、直ぐに見覚えのある古ぼけた鞄に気づくポコ、それに対し笑いながら冗談と軽口を叩く、獣人の衛兵。
「そう言えば…『パーレンの街』って人族の街でしょ?なんで…獣人族のお兄さんが衛兵やってるの?」
ポコは一度、周りを見渡し冷静に考え、一つの違和感に気づきエドガーに質問する。
「よくぞ聞いた!少年!俺はなぁ!『ベラルーマ王国』で『冒険者』をやってたんだよ!それでこの国『ラウル王国』で腕を買われ、この国始まって以来の『獣人族の衛兵』が俺って事だ!どうだ!?凄いだろ?」
犬獣族の衛兵は『ドヤの極み』を発動させ、満面の笑みでポコに宣った。
「おお!!よく分からないけどぉ…すごいね!!」
ポコも初めての『ドヤ顔』に興奮して眼前の犬の衛兵に賞賛を贈る。
「まっ…実際はいい様にコキ使われる雑用だけどな…じゃあ、衛兵の仕事をさせて貰うぞ?」
「衛兵の仕事??」
言葉の始めに小さく本音が顔を出し、直ぐに衛兵の仮面を被るエドガーがポコに向けて言葉を発した。
「犯罪歴はさっき聞いたから種族と出身国を教えてくれるか?それと街入するなら『ギルドカード』か身分を証明する物を出してくれ!」
「えっとぉ…オイラは…『人族』、出身はここから南の方角に位置する『カイドル』って小さい国だよぉ!オイラが小さい頃にパーレンの街の北東にあるイザナの森に移り住んだんだぁ。」
「小さい頃って…今でも充分に小さいだろ?ポコって言ったか?お前、歳は幾つだ?」
衛兵エドガーはポコの話に突っかかり、ませた言い方をする赤髪の少年に年齢を確かめる。
「オイラは年数えで15だよ?」
「は?お前…人族…だよな?本当に15か?どう見ても7・8歳だろ?いいとこ10歳位だろ?嘘を吐くとまた檻の中だぞ?」
獣人の衛兵は灰煙色の眼を細め、身長120センチ程のポコを見て、しかめっ面で親指を牢獄に向け脅しをかけてくる。
「オイラは…その…爺様が…その…精霊族だから…身体が大きくなるのが遅いんだ…本当に15歳だよぉ?…信じてくれよぉエドガー…」
ポコは先ほどの表情とは違い、俯き…そして怯え、エドガーに嘆願し、掠れる様な声で呟いた。
「…そうか…疑って悪かった!ポコ!俺は…お前を信じる!それで、…何か身分を示す物はあるか?例えば入国する時に受け取るラウル王国の『証明印』とか…冒険者ギルドが発行してる『ギルドカード』とかだ…ないか?」
エドガーは真剣な顔で赤髪の少年もとい、青年に謝罪し、力強く信頼の言葉を語り、元の口調に戻し問いを重ねる。
「…信じてくれてありがとうエドガー……たしか…鞄の中に……隠して…あった!これ、入国証明印だっと思うけど…これ?」
ポコがエドガーに静かに感謝を告げ、鞄を手早く漁り、『国印』が記され、沢山のトリス語が並べられている羊皮紙を小さい右手に取り、エドガーに渡す。
「そうだ!なんだ…隠してたから鞄を探しても何も見つからなかったのか…まぁいい…これがあれば街入出来る!少し待ってろ!今それに街入の許可印を刻むからな…大人しく待ってろよ?すぐに戻ってくるからな!」
獣人の衛兵は何故か嬉しそうにポコの手から古ぼけた羊皮紙を受け取り、足早に扉に手をかけ隣の部屋に消えていく。
(獣人族って…皆んな、あんなに優しいのかな?そうだったら良いなぁ…)
(…爺様は…この街にいるのかなぁ?…どうやって探そうかなぁ…)
ポコはエドガーに言われた通りジッと好感の衛兵を待ち、これからの事を考えていた。
「ポコぉ?待たせたな!これで街に入れるぞ!良かったな!…こんな時間に街の外に出たらまた魔物に襲われるか盗賊に身ぐるみ剥がされてたぞ!衛兵のカッコイイお兄さんに感謝しろよ!」
「エドガーは…オイラを心配してくれてたんだね…本当にありがとう!…って…だからオイラは子供じゃないってばぁ……」
「いや…大人だって本当に危ないんだぞ!?…それより、どうするんだ?爺さん探しにここまで来たんだろ?当てはあるのか?」
「…うん…爺様が作ったアイテムを買いにきていた人の店がこの街にあるんだ!そこをに行ってみようと思うんだ…確か…名前は…えっと…『パンドラ』ってお店だった筈…エドガー知ってる?」
ポコは祖父の作った魔法のアイテムを仕入れに、森の奥深くまで足を延ばす1人の男を思い出し、過去に一度、耳にした『パンドラ』と言う言葉を頭の片隅から捻り出した。
「………『パンドラ』……いや…聞いたことは無いな…他の手がかりはないのか?」
『パンドラ』と、聞いた瞬間にエドガーの犬耳が『ピンッ』っと立たち、声色低く、丸い紅眼を向けるポコに再度問う。
「あとは…『ミッド』って言うお店かな?それ以外はわからないよぉ…」
「ミッド…?ミッドって…あっ!その店なら知ってるぞ!確か、中央通りと商店通りの交差する路地に昔からある『黄昏の冒険者』御用達のアイテムショップだったと思うぞ!店員の子が色っぽくて人気なんだぞ!?…同僚から聞いた話だから信用は出来ないけどな!ハッハハッ!」
エドガーは『パンドラ』の時とは打って変わり、詳しく店の場所を冗談を交えながら、音階を上げ、言葉を発し説明する。
「よかったぁ…そこで何か分かるかな…本当に爺様どこに行ったんだろぉ…」
「ポコ?ポコの爺さんはどれくらい前から失踪したんだ?」
ポコがひと段落して身内の消息を按じた頃合で、エドガーが失踪の詳細を問う。
「1ヶ月位前だよ…爺様は…パーレンの街の近くの山小屋にアイテムを売りに出たっきり帰って来なかったんだ…ずっと待ってたけど…それで心配になって森の中を探してたんだけど見つからなくて…ここパーレンの街を目指してたんだぁ…」
「それで…魔物に襲われたって訳か…失踪したのは1ヶ月前か…………ポコ、今日は俺んちに泊めてやる!どのみちこの時間じゃ『ミッド』は閉まってる…行く当ては無いんだろ?金も持ってないのも知ってるしな…」
エドガーはポコの話を聞き途中静かに思考し、心優しき獣人は行く当てのない小さな赤髪の青年に寝床を提供してくれた。
「…エドガーは…なんでオイラに優しくしてくれるの?エドガーは『混血』の血を引くオイラを怖がったり嫌ったりしないの?」
ポコはずっと心に秘めていた事をエドガーに問う。
「俺は昔…混血に助けられた…冒険者をしていて仲間と2人死にかけた…その時助けてくれたのが『混血の冒険者』だった…そんな恩のある奴らの子供を見捨てるわけにはいかないんだよ!元冒険者としても民を守る衛兵としてもな!」
「はははっ…カッコつけすぎだよぉ……ねぇ?…エドガーは昔『冒険者』だった…って言ってたよね?……冒険者ってカッコいいなぁ!!ははっ…オイラも頑張れば冒険者になれるかな?エドガー?あはははっ…」
ポコは、犬歯を出し格好をつける『元冒険者』の姿に憧れを抱き、そして目尻に溜まった泪を隠すように戯けて必死に笑った…
物心つく頃から常に『差別』と『軽蔑』の冷たい眼で見られ…
生まれ育った国を追われ…
幼い頃に父と母を亡くし…
唯一の家族すら無くしかけて心折れそうな時に…
ポコは初めて笑った…声に出して安堵の笑みを浮かべて…
「……なんだ!ポコは冒険者になりたいのか?ってかポコは笑ってた方が似合うぞ!…だから…笑っとけ!……もう少ししたら俺の当番は終わりだから、ちょっと待っててくれ!帰りに何か買ってやるから大人しくしとけよ!」
「そうだ…オイラお腹ペコペコだったんだぁ…思い出したら力が抜けるよぉぉ…」
「おい!いきなり気を失うなよ!ポコ!しっかりしろ!…お…」
ポコが意識を失う前に聞いたのは焦り大声を上げる心優しき獣人、エドガーの声だった。
「…コ…ポコ!分かるか?おーい…飯の用意はしてあるぞ!早く起きないと全部食っちまうぞ!?おい!」
ポコはベットの上に寝かされていた、こじんまりとしたシンプルな部屋に、鉄仮面と頑丈そうな鎧が掛けてある男臭い汚れた部屋だった。
「ん…ん?エドガー?ここはどこ?」
「おお…漸く起きたか?ここは俺んちだ!いきなりぶっ倒れるから焦ったぞ…それと、汚いだの臭いとかの感想は要らないからな!…どうだ?立てるか?」
ポコが瞼を擦りながらベットから背中を起こすと目の前の小さなテーブルに、沢山の料理の皿が溢れる程乗っていた。
「ふぁあ……これ…オイラも食べていいのぉ?」
「おう!パーレンに来て初めて家に人を呼んだんだ…多少のおもてなしはするつもりだ!一緒に食べてしっかり栄養を取れよ?ポコ」
「うん!!ありがとう!エドガー!」
「…無くなりはしないからゆっくり食えよ!早食いは身体に毒だからな!ってお前!1番良い肉から食うのかよ!」
「はははっ…うん!おいしぃーーーっ!」
ポコとエドガーは笑い合い、2人で勢いよく数々の料理に手をつけ、夕食の時間を満喫する。
「お…おい!見た目によらず大食いだな!まさか完食するなんて思ってなかったぞ」
「うん!昔からお肉だけは幾らでも食べれるんだぁ!森でよくイノシシを捕まえて食べてたけど…今日の料理が今まで食べた料理で1番美味しかったよぉ!本当にありがとう!エドガー!」
「気に入って貰らって良かったよ!今日の稼ぎの殆どを注ぎ込んだ甲斐があったよ…ってかその小さな身体のどこにあんだけの量の物が入るんだ?ハハッ!」
エドガーはポコの大食いに圧倒され嫌味の無い爽やかな顔で軽口を叩く。
「じゃあ、明日に備えて今日は早めに寝ろ?俺はもう少ししたらまた夜の見廻りに行かなくちゃいけないからポコは家で大人しくしていろよ!」
「そうなんだ!衛兵って大変な仕事だね…ねぇ?エドガーはどうして冒険者を辞めちゃったの?」
ポコは忙しそうに食器を片付けるエドガーに思ったことを尋ねた。
「…なんでだろうな…でも、あのまま冒険者をやっていても…今頃は魔物の腹の中だったかもな!」
「冒険者は危険な仕事なんだね…誰でも冒険者にはなれるの?」
「各迷宮のギルド受付に行けば誰でも冒険者になれるぞ!…」
「へぇ…冒険者かぁ…かっこいいなぁ…オイラにも…仲間が出来たりするのかなぁ…」
ポコはエドガーから話を聞き紅い瞳を輝かせ、冒険者になった自分を想像して最後は願うように小さくなった言葉が部屋に寂しく響いた。
「…そうだ!冒険者はパーティを組むんだぞ?命を託せる仲間だ!中には、『家族』の様に絆を深める冒険者パーティだってあるんだ…だからポコにもちゃんと仲間が出来る!心配するな!『元冒険者』の俺が言うんだから間違いないぞ!?な?」
エドガーはポコに明るく、優しく笑った。
「うん…ありがとうエドガー!爺様が見つかって、落ち着いたら…冒険者ギルドに行ってみるよぉ!」
「冒険者になるなら1つ、絶対に忘れちゃならない事を教えとくぞ?…それは1番に優先しなくちゃいけない…それは魔物の討伐でも、受注した依頼でも無ければ、頑張って入手したお宝でもない!それは『命』だ!自分の命、仲間の命、どちらも落とさず絶対に持ち帰れ!それが冒険者の鉄則だ!ちゃんと頭に入れとくんだぞ?ポコ?」
「エドガー…やっぱ…冒険者ってかっこいいね!…うん!オイラは忘れないよぉ!冒険者が1番に優先して大切にするものは『命』だね!ありがとうエドガー!」
元冒険者のエドガーから冒険者の心得を教授されポコは再び『冒険者』と言うものに気持ちを惹かれ、憧れが加速した。
『さぁ!俺は夜廻りだから、そろそろ支度をして行くかな!ポコはゆっくり寝て身体を休ませろよ!朝には起こしてやるからそれまで寝とけ!」
「うん!ありがとうエドガー!お仕事頑張ってね!」
「…おう!じゃあ、おやすみ!ポコ!」
エドガーは鎧を手慣れた感じで着込み、鉄仮面を装備し、扉を開け、鎧を鳴らし、夜の闇に消えていった。
「冒険者かぁ…ハハッ…よし!その為にも早く爺様を見つけないと…」
ポコは先の期待に心膨らませ、心優しき獣人の香りが残る毛布を頭から被り、ゆっくり、心安らかに眠った。
「ポコ!起きろ!朝だぞ!」
ポコは昨日の夜と同じ聞き覚えある声に安心して瞼を開き丸い紅眼で声を掛ける獣人を見る。
「おはよ…エドガー…ふぁあ…こんなにゆっくり寝れたのは久しぶりだ!」
「それは良かった!初めての『おもてなし』は成功だったみたいだな!じゃあ、俺は少し睡眠を取るからよろしくな!昼には起きるから、その間これでも読んで暇つぶししとけ!起きたら爺さん探すの手伝ってやるから大人しくしとけよ?」
ポコの居るベットの正面で鎧を脱ぎ、笑顔を見せ、分厚い本をポコに手渡し少し疲れた顔で獣人のエドガーは、今日の予定を口にする。
「えっ!オイラを手伝ってくれるの??ってごめん…エドガーは寝てないもんね!大人しくしてるからゆっくり寝てね!」
「ああ!気にすんな…じゃあ、お休み…ポコ…」
「うん!おやすみ、エドガー。」
エドガーはポコの温もり残るベットに倒れこむ様に入り、ポコに言葉を呟き、すぐに寝息を立てた。
「ん?『冒険者の知識』?」
ポコは、エドガーから手渡された、何回も読まれて少しくたびれた本のタイトルを声に出した。
(迷宮の事とかアイテムの詳細が載ってるんだ…あっ…魔法の基礎知識まで載ってる…高価な本なのかも…こんな本を用意してくれるなんて…やっぱりエドガーは優しいな奴だなぁ…)
厚手の本を開き、イビキと時折寝言を言いながらベットで寝ているエドガーを、感謝の込めた視線でポコが見つめ、森の中の生活で唯一の楽しみだった大好きな本を読む。
『ガラァァン…ガラァン』
パーレンの街に昼を告げる『間の鐘』が鳴り響く。
「…?ん?もう昼か??…ポコ?」
「おはよう!エドガー!うん!そうだよ!」
「……よし!じゃあ…爺さん探しを始めるか?」
灰煙色の瞳をベットの正面で静かに本を読む赤髪の少年に視点を合わせ、エドガーは眠気を飛ばす様にハッキリと声にした。
「うん!…それと…この本って…どうしたの?」
「ん?それか?それは…同僚の知り合いに冒険者がいてな、使わないからって言ってたから貰ったんだ!だからそれはポコにやるよ!」
「…えっ!?いいの?…ありがとう!!まだ全然この本読めてなかったんだぁ!本当にありがとうエドガー!!」
「おお!喜んでくれて何よりだ!じゃあ、先ずは、アイテムショップ『ミッド』だな!?場所は分かってるからいくぞ、ポコ!」
「うん!じゃあ、よろしくね!エドガー!」
「おう!」
思わぬプレゼントに大いに喜び、笑顔で感謝を告げるポコを見てエドガーも笑った。
「確か…あの店の……あった!!あそこの店だ!」
エドガーがアイテムショップ『ミッド』を指差しポコに目当ての店を告げる。
「『ガチャ』…すみません…誰かいますか?」
ポコは木製の分厚い扉を開け、大量の商品に囲まれる店内に足を運び、緊張した声を響かせた。
「はーい!いらっしゃい!…?何をお求めでしょうか??」
店の奥から顔を出したのは金の髪を束ねて肩にかける肌の白い、美しい緑の瞳のどこか大人びた女性だった。
「あの…オイラ…ポコって言うんだ!…オイラは土精霊の魔法アイテム技師の『ロイド・ライデン』を探しています!何か知ってることがあれば教えて欲しいんだけど…何か知ってますか??」
「…ロイドさんのお知り合いの方ですか…そう言えば、ここの店の店主が1ヶ月程前にロイドさんと連絡が取れず、商品を入荷出来ないと言っていました…」
「うん…1ヶ月前から…行方不明になってるんだ…その店主さんは今は居ないの??」
「はい…店主は夕方にならなければ戻りません…私も、ロイドさんの名前だけしか聞いた事なくて、ごめんね、力になれなくて…」
金髪の美女は、眉を下げて俯くポコを見やり、優しく声をかける。
「ううん…大丈夫だよ!ありがとう!夕方にまた来るよ!それと…おねぇさんは『パンドラ』ってお店は知ってる?」
「『パンドラ』…いえ…多分パーレンの街にパンドラってお店は無かったと思うけど…」
「そっかぁ…ありがとう!じゃあ、また後でくるよぉ!お仕事中にごめんね…行こうかエドガー!」
「ああ…」
ポコと金髪の美しい女性との会話に最後まで口を挟まなかったエドガーがポコの声に応え、2人で『ミッド』を後にした。
「ねぇ?エドガー?さっきの女の人綺麗だったね?」
「…………?あ…そ…そうだな!って…何ニヤついてんだよ?ポコ?」
「エドガー…って分かりやすいね!」
「あ?何言ってんだよ!じゃあ、次いくぞ!ポコ!」
「うん!!あっ!…待ってよぉ〜エドガー!!」
エドガーはアイテムショップの店員を思い出し、耳を立て頬を少し染め恥ずかしさを隠す様にそそくさと通りを進み、それをポコがませた子供の様な顔で笑みを浮かべ見ていた。
1話で終わらせる事が出来ませんでした。
次もポコの過去が続きます。




