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『兄弟』と『バイト』

ようやく物語の続きを書けました。


話の進行速度が遅いですが最後までお付き合い頂く為に頑張りますので、これからも宜しくお願い致します。



麻倉 虎徹


「で…結局けっきょくなんなんだ?こいつらは?」


種族しゅぞく龍人族りゅうじんぞくで間違いないよぉ…」



「ファーラン殿!早く右腕みぎうでの手当てを!」



「はい。ありがとうございます、シャール様」



「部屋にあるオイラのかばんにポーションがあるからシャール!持ってきてもらってもいいかなぁ?」



「はい!お任せを!ファーラン殿、少しお待ちを!」


銀髪の髪を弾けさせ、急いで部屋に走るシャール。


此奴こやつらは本当にあの龍人族りゅうじんぞくなのか?高貴な者が…ぞく真似事まねごととは…ちと、疑わしいのぉ…」



ガゼルの大宿でぞく襲撃しゅうげきを防いだ『土龍一行どりゅういっこう』と騒ぎに駆けつけた宿の店主、『ガゼル・ディーゼル』が廊下ろうかで琉偉の拳骨で気絶し倒れている2人の小さな賊を見やり話をする。



「取り敢えず…こいつら縛って部屋につないどくか?」



「うん!でも…どうしよう?最上級貴族さいじょうきゅうきぞく暴行ぼうこうしたってなったらオイラ達…多分…捕まって下手へたをしたら奴隷堕どれいおちだよぉ…」



ポコが一つの可能性かのうせいの話を語り始め、琉偉達周りの顔をうかがう。



「ですが…この者達は部屋に侵入しんにゅうし、魔法まで使って危害きがいを加えようとした『ぞく』です…事情じじょうを話せばつみには問われないのでは無いのですか?」


ファーランが自分達の正当性せいとうせいを語りポコに瞳を向ける。


「そうだ!!最上級貴族がどれだけ偉かろうが、こいつらが悪いだろ!?もし俺たちを捕らえようとしてきたら俺が暴れてやるよ!」



琉偉もファーランの意見に賛同さんどうし、語尾ごびを強めた。



「…普通ふつうはそうなんじゃが…龍人族だけは特別だからのぉ……ワシも目撃者もくげきしゃとして、お前さんかばうつもりじゃが…どうかのぉ…」


ガゼルは幼い顔の眉間にしわを作り、腕を組み思考しこうする。


「じゃあ…こいつらを起こして襲撃しゅうげき目的もくてきと、本当に貴族なのか確かめるか?もし貴族なら死ぬほど脅せば平気だろ?」



現状の状態をさほど重く見ていない琉偉がチンピラの口調で提案ていあんをする。



「そうだね!今は何も情報じょうほうがない上に、この子達の事情じじょうも知らない…今は話を聞いてからその後の対応策たいおうさくを練るのが一番だね!」



「ファーラン殿!遅くなりました!これを!」


「シャール様、お気遣いありがとうございます!」



そこに青い液体の入った小瓶を持ち走ってくるシャールがファーランに駆け寄る。



「ファーランは傷を癒すまで部屋でゆっくりしててよぉ!オイラはルイとこの子達を部屋に運ぶから、シャールは無いとは思うけど…賊の追撃ついげき懸念けねんして念の為ファーランと一緒に部屋に居てくれるかい?」



「はい!ポコ殿!分かりました!ファーラン殿には誰一人近づけません!」



ポコが琉偉の意見に乗り、気絶した2人を部屋に運ぶ手順を整え、シャールにファーランの護衛ごえいを任せ、シャールは騎士の顔に戻り力強くポコに応える。



「ファーラン!無理はすんなよ?」



「はい!御主人様!それと、このかばんを!」



ファーランはずっと左手に抱え込んでいた琉偉の鞄を手渡す。



「ああ!傷まで負って守ってくれてありがとな…助かったよファーラン!……よし、ポコ?こいつらを縛って運ぶか?」



琉偉がファーランをねぎらいポコに指示を仰ぐ。



「うん、そうだね!また暴れられても困るからね!」



「どれ…ワシも手伝ってやるかのぉ!」


「助かるよ!ショタ爺!」


「わしゃガゼルじゃ!変な名前をつけるな!」


琉偉とポコとガゼルは『小さな賊』を男部屋に運び、シャールに手を引かれるファーランが隣の部屋に移動する。





「じゃあ、少し勿体無もったいないけど、このアイテムで気絶状態スタンを回復させるよ!一応、動きは封じてあるけど…気を引き締めといてね!」



部屋の椅子に縛り付けた2人の小さな賊に昨日手に入れた高価こうかな『万能薬リカバリー』の魔宝珠まほうじゅを手に持つポコ。



「やっぱり魔法のアイテムは便利だな!よし!やってくれ!ポコ!」



「っとその前に念の為この部屋に結界魔法を張っとくとするかのぉ…《バージェスト・バイス》」



琉偉がポコの所有しているアイテムに感心していると、宿の店主、ガゼルが結界魔法けっかいまほうを『詠唱えいしょう無し』で使用した。



「ガゼルさん…詠唱省略えいしょうしょうりゃくのスキルを持ってるの??」



「なんじゃ?おぬしは人物鑑定だけじゃなく、他人たにんのスキルが分かるのか??」



ポコはガゼル・ディーゼルのスキルを確認し、昨日のランクアップで手に入れた己と同じスキルを見て思わず口にしてしまった。



「いや…お…オイラも同じスキルを持っているからそうなのかなぁ…って思ったんだぁ!」



『ランスロットの指輪』という最上級クラスのアイテム所持の事実を隠そうとし、代償だいしょうに己のスキルを公開したポコが小さな汗を流す。



「ああ!だからさっきは直ぐにポコの魔法が発動はつどうしたのか!?迷宮の時より速くて少しビックリしたぞ!」



琉偉が迷宮で守護龍しゅごりゅうの討伐時に詠唱えいしょうしていたのを思い出し納得の声をあげる。




「うん…昨日きのうの夜にシャールに協力してもらってわかったんだ…驚かせようと思ってたけど、あの状況だったからね!」



ポコは小さな指で鼻の下をこす自慢じまんげに、それでいて嬉しそうに琉偉に嬉々として語る。



詠唱省略えいしょうしょうりゃくのスキルは名のある大魔導士だいまどうしでも中々発現はつげんしない珍しいスキルじゃよ…流石さすがじゃ」



「えへへへ…ガゼルさんも元冒険者だったの?」



「………ずっと昔にちょいとな…さっ…早いとこ、この者達を起こして事情を聴くとしよう」



ポコの問いにガゼルは昔を思い出す老人の様な眼をして話を終わらせ、本来の目的に話を戻した。



「…そうだね!じゃああらためて、《リカバリー》」



ポコの手に持つ魔法珠が紅く発光し、気絶している2人にその光の粒が降り注ぐ。



「ん…ん?あれ?ブール?あっ!おい!この縄を解け!!けがらわしい盗賊どもめ!!」


「お…兄ちゃん?僕達ぼくたち捕まったの!?殺されちゃう〜!!助けてお兄ちゃん!!」



目を覚ますなり1人は大声で琉偉達をののしり、もう1人は助けを求め大声で泣き始める。



「…ちょっと…冷静になって話を聞かせてくれない??オイラ達は盗賊じゃないし、何か勘違いしてるんじゃないかな?」



ポコは椅子に縛り付けられている2人のフードに隠れているが、時折見える緋色ひいろの眼を見て優しい口調で語りかける。



「…え?お前らは盗賊だろ!?あの黒い馬車に乗ってる盗賊がお前達の子分なのは知ってるんだ!早くその鞄を返せ!!ちゃんと返すなら俺達はもう何もしない!ってブール!泣くな!男は人前で泣いたらダメなんだぞ!お師匠様に怒られるぞ!!」



「だって……この人達…盗賊なんでしょ?僕達いっぱい痛い思いをして殺されちゃうよぉ…怖いよぉ」


椅子に縛られたまま2人は全く違う性格を晒し声を上げる。



「……なぁ?このかばんは元々はお前達の物なのか?」


話の見えない事柄ことごらに少しうんざりした琉偉が兄弟の兄と思われる方に言葉をかける。



「いや……俺達のじゃないけど…その鞄は俺達の里でずっと昔から護られてきた大事な物なんだ!!それを返せ!!そして俺達を解放しろ!!あと、弟には絶対に手を出すな!!」


「ん〜っ…どうしょう…勘違いしてる感じだけど…ルイ?なんて説明しようか?」



「はぁ…めんどくさい奴らだなぁ…あのな!鞄とこの白い短剣は『聖龍せいりゅう』?って奴に貰ったんだよ!誰かから盗った物じゃない!意味わかるか?」


「なんじゃと??お主まさか…」


「えっ…それって…」


「…そんな…もしかして…本当に…聖龍せいりゅう使徒様しとさまなのか??…じゃ…じゃあ!証拠しょうこを見せろ!!その鞄に自分のマナを流せ!」


ガゼルが驚き言葉を止め、ブールと呼ばれる弟らしき子が泣き止み琉偉を見つめ、兄と思われる方が琉偉に所有者の証明を要求してきた。



「ったく、これでいいのか?」



琉偉は肩にかける魔法の鞄に自分のマナを流し、いつものように紋章もんしょう金色きんいろの光を帯びる。


「お兄ちゃん!!本物ほんものの使徒様だよぉ!!不味いよ!僕達が勘違いしてたんだよ!どうしよう…お師匠様に殺されちゃう…うぅ…」




「あの…縄を…外しては貰えないでしょうか…もう…使徒様達に危害きがいは加えないと誓います…どうかお願いします…」



鞄の紋章もんしょうを確認した2人は先ほどの態度とはうって変わり、ブールと呼ばれる子供は戸惑い、また泣きそうになり、横暴な態度だった兄の方は声小さく口調を変え、琉偉に懇願こんがんした。



「使徒様の効果は抜群だな!?ポコ!縄を解いても平気だよな?」



「うん!どうやら誤解ごかいは解けたようだね!ちょっと待ってて!」


琉偉がポコに笑いかけ、ポコもホッとした表情で縄を解きにかかる。



只者ただものじゃ無いとは思っておったが…まさか…あの『聖龍の使徒』だったとは…知らなかったとはいえ数々の御無礼、心よりお詫びします…」


ガゼルの大宿の店主ガゼル・ディーゼルがその場に伏せ、黒髪くろかみの小さな頭を床ギリギリまで近づけ謝罪しゃざいを始めた。



「いやいや、マジでやめてくれよ!俺はそう言うのが1番苦手なんだって!本当にやめてくれよ!なぁ?今まで通りに頼むよ!」



琉偉は慌ててガゼルの肩に手を掛けその場に立たせ、困った顔であたふたし、戸惑った。



「ガゼルさん?この事は内緒にしてもらえないかな?あんまり大事おおごとになるとオイラ達も大変なんだぁ…」



「やはり…おぬしらは変わっとるのぉ…任せなさい…ワシはドワーフ1、口が固くて有名なんじゃ!誓って口外こうがいしないと約束やくそくする。」



ガゼルは高位こういな身分を振りかざさない琉偉達にニッコリと笑いかけポコの言葉に誓いを立てた。



「縄を解いたよぉ!大人しくしてね!」


「あの…勘違いをして使徒様の従者じゅうしゃの方に怪我をさせてしまい本当にごめんなさい…謝って済む事じゃ無いのは分かってます…どうか!お許しを!」


「本当にごめんなさい!魔法を撃ったのは僕です!ごめんなさい…」




「……勘違いならアレだが…ファーランには後で自分の口から謝れよな?あと、この宿を破壊はかいしたんだ!それもちゃんと弁償しろよ!それで俺の話は終わりだ!そんで、お前らはなんて名前だ?」




解放かいほうされその場に跪いて琉偉に謝罪を行った小さな子供達を琉偉は受け入れ、改て名前を問う。


「ゆ…許してもらえるんですか…本当にすみませんでした…自分の名前は『ベェーリィ・ロス』と言います…コッチは弟の『ブール・ロス』です!」



「ブールです…使徒様…ごめんなさい…」



ローブのフードを脱ぎ、輝く短い青みがかった白髪はくはつにアテナと同じ緋色の眼をした8・9歳程の可愛らしい顔を晒して自己紹介をし、弟のブールも兄に習いフードを脱ぎ兄と瓜二つの顔を見せた。違いは髪の長さだけだった。



「じゃあ、ベェーにブーな!2人は双子ふたごか?取り敢えず椅子に座れよ!そんで、なんでこうなったのか俺達に教えてくれよ!」


琉偉は跪く2人を椅子に座らせ、襲撃に至った経緯けいいを聞く。


「はい…何日か前に自分達の里のほこら厳重げんじゅうに護られてる聖龍様のかばんが突然無くなりました…それで…マナ知覚ちかくの優れた自分達、兄弟が里から鞄の捜索の任務にんむを受け、探していました…そして、昨日きのうこの街の近くで鞄を持つ使徒様を見つけ、ずっと尾行びこうしていました…」



「なるほどぉ…それで盗賊と勘違いしたんだね?でも、龍人族なら琉偉の事情を知ってる龍人族の族長とは連絡を取らなかったの??」



ポコが最近仲良くなった龍人族の族長、アテナを思い出し言葉を発する。



「えっ?僕達が龍人族ってのもわかるんですかぁ?」


「…鑑定かんていのスキルですか?…」



ブールが驚いた表情でポコを見やり、見た目では分からない種族を言い当てた事に兄のベェーリィは唖然としていた。



「…自分達の氏族しぞくはラウル王国の龍人族とは仲が悪く、情報交換をしていません…まさか…使徒様が現れるなんて思ってもいませんでした…」



「ああ…そういう事なんだ!じゃあ2人はラウル王国の龍人族じゃあ無いんだね?生まれはどこなの?」



意外な龍人族同士の事情を聞きポコが納得し、2人の故郷をうかがう。



「自分達の里はラウル王国のから東にある獣人族が支配する国『ベラルーマ王国』が自分達の故郷こきょうです。」



「…その国はたしか…『救国きゅうこく黒兎こくと』が有名な国だよね??」



ポコは琉偉に目線を送り、わざとファーランの昔呼ばれていた称号を口に出した、ファーランに対する敵意てきいを確認する為だ。



「はい!何年か前の戦争の時に活躍した英雄が守った国です…戦後、パッタリと名前は聞かなくなりましたが…」


兄のベェーリィは緋色ひいろの瞳を輝かせ戦争終結せんそうしゅうけつの英雄の話をした。


「…じゃあ、お前達も戦争を経験したのか?」



2人の小さな子供に琉偉は静かに問う。


「いえ…自分達の里は、ベラルーマ王国の端に位置し、山に囲まれている為、戦争の被害はありませんでした…」


「…そっか!なら良かったよ!兄弟2人とも無事で良かったな!」


「……はい…あの…ありがとうございます…」


琉偉はベェーリィに優しい笑みを見せ、ベェーリィは琉偉の意外な言葉に恥ずかしそうに感謝かんしゃを告げた。



「ポコぉ?どうしようか?ってかお前らはここの宿の修理費しゅうりひ払えんのか?」



「その…それは…すぐには…すみません…」


「お兄ちゃん…」


2人の経緯を聞いた琉偉がポコに話の終着点しゅうちゃくてんを問い、ベェーリィとブールに確認を取る。


「ねぇ?ガゼルさん?廊下ろうか修繕費しゅうぜんひってどれくらいかなぁ?」


ポコがガゼルに問う。


「ん〜っ…最上階の廊下はこの宿で一番金をかけておる…ざっと見積もって聖金貨2枚って所かのぉ…」


「聖金貨2枚…!???僕達絶対に払えないよぉ〜!!どうしよう!お兄ちゃん!」



「…ブール…聖龍様の護符ごふをだせ…」


ベェーリィは腹を括ったように弟のブールに小さく呟いた。


「ダメだよぉ!!お兄ちゃん!本当にお師匠様に殺されちゃうよ!!それにあれは…お母さんの形見だよぉ……お兄ちゃん…」


ブールが必死に兄のベェーリィに声をかける。


「なぁ?お前らバイトしないか?」


兄弟の会話を黙って聞いていた琉偉が突然声を発し2人を見やる。



「ばいと?ですか?それはどんな意味の言葉ですか?」


ベェーリィは聞き慣れない言葉の意味を問う。


「ようは働いて金を稼ぐって意味だよ!どうだ?やるか?」


「まぁーたルイが悪い顔してるよぉ…」


「えっ?じゃあお母さんの形見を売らずに済むの?」


「ああ…それはずっと大事に持ってろ!絶対に手放すなよ!」


「使徒様…」


「…使徒様のお気持ちに免じて半額の聖金貨1枚で手を打つとするかのぉ…」


ガゼルが琉偉の心意気に感動し、せめてもの誠意を示し、話は無事まとまった。


「よーし!お前ら!腹減ってないか?取り敢えず朝飯を食って今後について話すか!」


「本当に…本当にありがとうございます…」


「ありがとう使徒様!!」


「なんかぁ…ルイと居るとどんどん色んな人が増えちゃうね!…ルイは最高だから仕方ないけどね!」


ポコの笑い声が部屋に響き、2人の龍人族の少年は自分達の犯した罪を許し、手を差し伸べた伝承の使徒に忠誠ちゅうせいに似た気持ちをいだかせるには十分だった。


作中、ベェーリィとブールの故郷がアルマ大国となっていましたがベラルーマ王国の間違えでした。


修正しましたので混乱された方には深くお詫び申し上げます。


申し訳ありませんでした。



麻倉 虎徹


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