『作戦』と『ヤクザ』
「よーし!腹拵えもバッチリだ!ココなら誰にも聞かれず話が出来るな!」
「また、食べ過ぎちゃったぁ」
「あんなに美味しく豪華な食事をしたのは久しぶりでした…」
「ここの料理は最高だったろ?…よし!やるか!」
「はい!」
「では、作戦会議に移りましょう!」
4人は夕食を終え、最上階の琉偉とポコの部屋に戻って来ていた。
「ポコ殿…先程、話されていた『一定の条件』とは、何の事でしょうか?」
シャールが、お腹をさする小さな赤髪の冒険者に言葉の真意を問う。
「えっと…先ずは、『王に謁見』、そして、確実に仕掛けてある玉座の『魔法防御壁の属性』、それと、1番大事なのは…『国民の勇気』だ!!」
ポコは小さな指を3本立てシャールに答える。
「国民の勇気??まさか…ポコ殿は…国民に反乱を起こさせるつもりですか??」
「そのとーり!!」
「……ポコ殿…今、国を率いる事の出来る人物は…残念ながらベルファーレ王国には居ません…幼い元国王様も国を捨てた身…国民はそこまで馬鹿ではありません…」
シャールが現実的な言葉を口にする。
「じゃあ、こう言うのはどう??『他国の最強の冒険者パーティを国を救う為に連れてきた銀髪の英雄』ってのはどうかなぁ??」
ポコがニッコリとシャールに笑いかけ、提案する。
「おお!いいなそれ!じゃあ、作戦の流れはその線で話を進めよう!」
「はい!御主人様!」
「そうだね!」
「英雄…私には似合わぬ言葉ですが…それで国民が助かるなら…お願いします!」
琉偉達は『国取り計画』のシュミレーションを始める。
「先ずは、ベルファーレ王国に潜入だねッ!?」
「おう!シャール!パーレンの街からベルファーレ王国ってどれくらいの道のりだ?」
「はい!私は徒歩と馬で約2ヶ月程をかけベルファーレからここパーレンの街に辿り着きました。」
「じゃあ、馬車でならどれくらいだ??」
「恐らく…1ヶ月半程でベルファーレ王都に行けると思います。」
「そうか…それで、何をしたらそのクソヤローに会えるんだ?」
琉偉が顎に指を掛け、銀髪の騎士シャールに質問を繰り返す。
「恐らく…ベルファーレ王国の『近衛騎士』になれば確実に王に謁見出来ます…」
「いや…それだと時間が掛かっちまう!他の方法は?」
「じゃあ、『伝説級』のアイテムを冒険者が王に献上するってのはどうかな?」
「それなら他の上級貴族ですら出来ない事なので…王は謁見を許すと思いますが…その様な貴重なアイテムが都合よく手に入るのでしょうか?」
至極当たり前の事を問うシャール。
「えっと…そこは心配しなくても平気かな?…ね?ルイ?」
ポコはまん丸の紅眼で琉偉を見る。
「おう!ちょっと待ってろ……コレなんかどうよ??」
琉偉は魔法の鞄におもむろに手を入れ、1つの真紅に輝く宝石を取り出した。
「えっと…『理の宝玉・ランクS S・女神の加護』うん!それ伝説級!それにしよう!」
ポコがランスロットの指輪の効力で琉偉の手元の宝石の情報を読み上げる。
「よし!これで、謁見まで行けるよな
?」
「うん!それで次は…」
「す…す少しお待ちを…え?いや…それは本物ですか?…いや…贋作ですよね?」
シャールはポコの話を守護龍の件の時と同じ様に話を中断させて一度、確認を取る。
「ん?正真正銘の S Sランクのアイテムだよ?」
何事もなかったかの様にシャールに答えるポコ。
「え?…えーーっ!!!な…何故その様なアイテムをお持ちなのですか??SSランク……そんな貴重な物を!」
「んーっ…たまたま?」
「それが一般的な反応だよね…」
シャールは昨日のポコと同じリアクションを取りそして、ポコは既に慣れてしまった自分に少し呆れた口調で声にした。
「御主人様、素敵です!」
「さすがは…高貴な騎士『ヤクザ』です…」
貴重なアイテムを惜しげもなく人助けに使う琉偉に惚れ直すファーランと、『ヤクザ』を崇拝しそうになる銀髪の騎士シャールが唖然として言い放った。
「じゃあ、話を戻すよぉ?王に謁見は大丈夫だね!そしたら次はぁ…『魔法防御壁』だね?…玉座には大抵仕込まれてる筈なんだ!これは相手が『水属性』の魔法以外ならオイラが壊せる!シャール?宮廷魔導師は、どの属性の魔法を得意としてるか、分かるかい?」
ポコは何故か玉座の仕組みについて詳しかった。
「宮廷魔導師『バラス』は闇と、強力な雷の属性魔法を使用する事で騎士達の中では有名でした!」
シャールは己の知り得る情報をポコに話す。
「闇と雷って事は…水を扱う可能性は低いね!」
「…へぇーっ!ポコはそんな事まで知ってんのか?すげーな!」
淡々と話すポコに感心した琉偉がポコを称賛する。
「オイラ…知識だけは自信があるんだ!色んな本を読んだし…魔法のアイテム作りの職人だった爺様から沢山の話や伝説を聞いて来たんだ!任せてよぉぉ!!」
「それで一般には知られていない玉座の仕組みにもお詳しかったのですね!ポコ様もさすがです!」
「はい…さすがはルイ殿とファーラン殿のパーティリーダーですね!」
「…やっぱりなんかちょっと恥ずかしいなぁ…」
ドヤの極みの爽快さに、少しハマっていたポコだったが、真正面から誉められるのはまだ少し慣れず、顔を赤らめ恥ずかしそうに下を向く。
「よし!そこまで来たらあとは虐げられた国民だな!」
「うん!そこが1番大事なんだ!!」
真剣な表情でポコは紅い瞳で三人を見渡す。
「王都の国民はどれ程の数なのでしょうか?」
ファーランがシャールに問う。
「王都には、約2万5千人の国民が暮らしています!」
「じゃあ、半分は戦えない女、子供だとして1万人ちょっとを味方につけた場合勝算はどれくらいだ?」
「武器を持たせたとしても…3割程です…」
琉偉がシャールに問いシャールは声色低く現実的な割合を琉偉に示唆する。
「そっか…それじゃ…もし反乱の時に城を守る兵士を減らせたらどうだ?」
そう言って琉偉は少しだけ悪い顔をした。
「そ…そんな事かできるのですか??」
驚くシャールに琉偉は怪しく光る漆黒の瞳を向け言葉を発する。
「シャールの国は…王都の近くで盗賊が暴れまくってたらどうする?」
「ああ!そういう事ぉ!!」
何かに気づいたポコが琉偉に視線を流す。
「…??……お…恐らく…街の守備隊が討伐に向かいます!」
シャールは納得するポコを見て少し思考し、琉偉が発した仮定の話に己の考えを口にする。
「やっぱりそうだよな?…じゃあ、その盗賊が手に負えない位強かったらどうする?」
「……王都から城を守る屈強な騎士を派遣します!!」
「そんじゃ…盗賊がその屈強な騎士も歯がたたなかったらどうする?」
琉偉は静かに思考するシャールに悪魔の笑みを浮かべる。
「!?数を…討伐軍の数を増やします!!!」
「そうなんだよ!いくら悪政だろうと自国で暴れてる無法者を許せる程、そのクソヤローの器はデカくねーはずだ…権力を持った性悪の小物程、自分の面子を気にするんだよ!」
琉偉の言葉の真意に気づき、興奮するシャールに琉偉は経験してきたヤクザ社会の摂理を説き自信満々に宣った。
「………ルイって絶対に何回か反乱やった事あるでしょ?」
「ねぇーよ!ある訳ねーだろ!!」
アホな琉偉らしからぬ発言に、ポコは笑いながらルイを疑い、それに対し速攻で突っ込む琉偉。
「なんだか…本当に…本当にやれそうな気がして来ました!」
「シャール様…違います…『やらなくてはダメ』なのです!」
「はい!!すみません…ファーラン殿の言う通りです!」
ファーランは、金色の瞳を強く輝かせシャールに力強い言葉を告げる。
「じゃあ、もう一度最初から!先ず、オイラ達は、ベルファーレ王国の王都から1番近くの街に身を潜め城の情報と囮となる盗賊騒動を手伝ってくれる協力者を探すんだ!」
ポコが作戦の大まかな行程を口にしていく。
「そして王の謁見の日取りが決まったら、その日の前にその街で大きな騒動を起こし、城の兵力が落ちた所で玉座の間で王を人質に城に立て籠もる…そしてシャールに国民を扇動してもらい城に突入してもらうって作戦なんだけど…どうかな!?」
「おお!中々いい作戦だな!まぁ!大体の流れはいい感じだな!取り敢えずやってみよーぜ!?」
「……私に…1万人もの国民の心を動かせられるでしょうか…?」
琉偉が得意の『良い顔』をしながら明るく言葉を掛け、シャールは少し俯き己に問う。
「…シャール様は…私達3人の心を動かした人です…必ず成功します!私は、そう信じています。」
ファーランは不安そうにしていたシャールの手を取り、優しい言葉を掛け微笑んだ。
「それじゃ、大体の方向は決まったな!?明日は一度、ギルドに行って、ミルティスの依頼の報酬を貰い、そこを拠点にこの作戦に備えよう!ギルドには俺とポコが顔を出すか!」
「うん!そうだね!」
「それでは…街に残った私達は何をすれば良いのでしょか?」
ファーランは琉偉に明日の行動について琉偉とポコに指示を仰ぐ。
「あぁ!ファーラン達には街に残ってもらって長旅の準備をしてもらう!」
「あと、何人か信用出来る人を雇って欲しいんだ!あの屋敷で働く人材を探して欲しい!」
「これで頼むよ!」
そう言って琉偉は皮袋に入った10枚の聖金貨をファーランに手渡した。
「はい!分かりました…その御役目、確かにお受け致しました!」
ファーランは金貨を受け取り、はっきりとした口調で琉偉からの託され事に力強く応えた。
「…ルイ殿は『ニホン』と言う国の王族の『ヤクザ』なのですか?」
その光景を見て呆然とするシャールは声小さく琉偉に問う。
「なんだ…『王族のヤクザ』って…まぁいいか!たまたま大金が手に入っただけだ!あんま気にすんな!」
シャールの珍妙な問いに、琉偉は笑って答えた。
「あの…御主人様…最後に気になってた事が有るのですが…お聞きしても宜しいでしょう??」
ファーランが琉偉に問う。
「ん?なんだファーラン?」
「夕食の前の話なのですか…御主人様は…何故、扉の前に居たのですか?それと私達の話を知っておられたようですが…何故ですか?」
ファーランは金色の瞳を輝かせ、琉偉に向けて問う。
「え?それは…なんか…突然耳が良くなるスキル的な?加護的な?何かで聞いたってっか…聴こえた的な?…なぁ?…ポコ?」
ファーランの突然の質問に、動揺丸出しで焦る琉偉。
「そうですか…本当にそんな事があったんですか?ポコ様?」
ファーランは紅眼をそらすポコに鋭く座った金色の瞳を向ける。
「………フ…ファーランとシャールがエッチな話してると思ってルイが壁に耳を付けてた!!…ルイの軽率な行動をとめれなくてごめんなさい!」
「おま!…え?何それ?そんな事…おい!ポコぉ!!」
ファーランの圧力に耐えかねたポコが無垢な子供の顔でファーランに琉偉の盗み聞きを暴露し、可愛く謝罪する。
「はい!良くできましたね。素直な事は素晴らしい事ですね!」
ポコに女神の笑顔を見せてファーランは琉偉に殺戮の黒兎った視線を向ける。
「御主人様…少しお話があります!一緒にこちらへ…」
「はい…」
どこかに連行されて行った無抵抗な一級冒険者を、赤髪の少年と銀髪の騎士は無言でその光景を観ていた。
「ポコ殿?…ファーラン殿はもしかしてこのパーティで1番強いお方なのですか??」
「あっ!分かっちゃった??ぶっちぎりの強さで1番だよぉ!」
「やはり…!!『龍殺しの冒険者』をあそこまで萎縮させるとは…ファーラン殿も『ヤクザ』なのでしょうか?」
「あはははっ…そうかもね…」
2人残された部屋にポコの乾いた笑い声が響いた。
そして…4人は次の日の朝を迎える。




