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『依頼』と『銀髪の騎士』


「じゃあ、また来るよ、ありがとう!マルチェロ!」


「お身体からだを大切にして下さい…マルチェロ様」


「はい。老骨ろうこつの心配など…痛み入ります。ルイ様に、ファーラン様…またのご来店を心よりお待ちしています。」


「ああ!すぐにまた寄らせてもらうよ!」



白髪はくはつ老紳士ろうしんしは深々と目の前の笑顔を投げかける冒険者と、親愛しんあいなる同族に頭を下げ、琉偉は笑顔で再店の約束をして店を後にした。



「でも、驚いたよな?混血こんけつって珍しいんだろ?」


「はい…私も直接ちよくせつお会いするのは初めてで御座いました…」


「へぇーっ…でも、めちゃめちゃいい奴だったな!お気に入りの店が増えたぜ!」



「……ルイ様?他のお気に入りの店は…あの不埒ふらちなお店ではないですよね?」



「え?…ちちちげぇーよ?ガゼルの宿屋だよ!!何勘違いしてるんだよ!考えすぎだ!俺をもうちょっと信頼してよ!ファーラン!!もぉー…少しだけちびちったじゃん!!勘弁してよぉ…違うからね?マジで!」



「ご主人様?少し喋りすぎですよ?あの水晶石の買取時の『ミルティス様』のようですね…」




アホみたいにわかりやすく動揺どうようする琉偉にファーランは殺気だった視線を送り同じ部類のアホエルフの名前を出し、ニコやかに牽制けんせいする




「いや…だから怖いって…ファーラン…」



「あ…あの…冒険者殿…依頼クエストを発注したいのですが…よろしいでしょうか?」



ファーランの洞察力どうさつりょくに肩竦めた琉偉だったがその時、後ろから緊張が感じられる声を拾う。


「ん?依頼クエスト??」


琉偉とファーランが後ろを振り返る。




「はい…私は名を『シャール・ホッツ』…ある国で騎士を務めています!不躾ぶしつけ物言ものいいお許しください。」



そこには、銀に輝く長髪ちょうはつを、銀の髪留かみどめで纏め、同じ銀色の胸当てと細く綺麗な『レイピア』を装備する、騎士感きしかん丸出しの琉偉と同じ黒眼こくがんの15・6歳前後の可愛い女性が立っていた。


「あぁ!そんで…依頼クエストってどんな感じの奴??」


「はい…とある人物を探しているのですが…その…手がかりすら一向に掴めないのです…どうか…どうかお力をお貸しください!!お頼み申します!!」


そう必死な物言いで、『シャール』という女騎士おんなきしひざを地面につけ頭を下げた。



「おい…!ちょっと、ちょっと!こんな所で土下座どげさなんかやめてくれよ!」


とっさの行動に琉偉が慌てて土下座する銀髪の騎士を立たせようとする。



「シャール…様?ここは人目ひとめに付きます…この先の広場で私達はパーティリーダーと落ち合いますので、是非、そちらに足をお運び下さい!どうぞ、お立ち下さい。」


「………」


ファーランが膝を付き頭を下げる銀髪の騎士に近寄り肩に手をかけ、優しい声をかける。



「じゃあ、取り敢えずポコと合流だな!ついてこいよ!銀髪の嬢ちゃん!」


「…はい……」


「さぁ…行きましょう!」


ファーランがシャールに手を貸し立ち上がらせ、同行するように琉偉が促す。


「…すまない…本当に…かたじけない…」


(なんだこの子?江戸時代えどじだいのタイムトラベラーか?いやサムライプレイか?ってか…クッソ巨乳だな!!)


「…御主人様?どうかしましたか?」



「ん?いや…なんでもないよ!少し考え事だ…」


(なんか…ファーランの俺に対するスケベ感知能力かんちのうりょく精度せいどがすげーんだけど?そんなに分かりやすいか?俺って…)


琉偉は、時を増す事に、自分のエロ思考しこうを察知するファーランにこの時、確かに恐怖した。


『ガラァンガラァン』


夕方を示す『ついかね』が赤く染まる夕焼けの街に鳴り響く。


「おっ!これがポコの言ってた『終の鐘』か?」


「はい…そうで御座ございますよ!」


「ナイスタイミングだな!よし!じゃあ行こう!」


琉偉を先頭にファーランと謎の女騎士シャールが後に続く。


そして、時を同じくしてアイテム調達を行なっていたポコは、中央広場、直前の通りにいた。



「ふぅーっ!なんとか目的の物は全部入手できたぁ!あとは、広場でルイとファーランを待つだけだなぁ……問題もんだいを起こしてないといいけどぉ…まぁファーランが一緒だし平気かな!あっ!焼き串買って待ってよぉ〜」



ポコは、屋台で焼き串を購入し、ホクホクな顔で琉偉達を待つ事にした。




「おぉーい!ポコ!待ったか?依頼クエストの依頼人を連れてきたぞ!」



「ルイ!早かったね!予定通りに動けるなんて思ってなかったよぉ!さすがファーランだね!」



「おい…今のは少し心外しんがいだ!俺はこう見えて遅刻は『なるべく』しない主義しゅぎだ!わかったか!ポコ!」


ポコと合流した琉偉は無駄にアホな主義を偉そうに語る。


「はいはい!わかったよぉ!それで?そっちの子が依頼人……って凄っごい!まん丸だね!!」


ポコはシャールの胸を重点的に凝視ぎょうしした。


「おい…やめろ!ポコ!ファーランに殺されるぞ!まだ死にたくないだろ?」


琉偉は慌ててポコの耳元で囁く。



「御主人様…聴こえてますよ!」



「いや…今のはポコが…はい…すんません!」



顔は天使てんしの様に笑って眼が殺戮さつりく黒兎こくとってるファーランに琉偉は謝罪する。


(チクショー…なんで俺にだけ厳しいんだよぉ)


琉偉は、不平等の不満を心の中で呟いた。



「じゃあ、始めよっか!オイラは『ポコ』だよ!『シャール・ホッツ』さん!オイラに依頼クエスト内容を教えてくれるかい?」


「!!何故…私の名前を…まさか…鑑定かんていのスキルですか??」



「まぁね!一応言っとくけど、オイラには嘘と隠し事は出来ないからそのつもりでよろしくね!」



ポコはいち早くシャールを鑑定し、自分達パーティ不利益ふりえきにならぬ様『おどし』をかけた。



「…依頼内容は…ひ…人を探しています…ディアスと言う名の騎士です…私の…兄……『ディアス・ホッツ』の捜索そうさく及び、討伐依頼とうばついらいです……」


ポコの子供の様な笑顔に動揺どうようしたシャールは少し間を置いて暗く、弱々しい声で依頼内容を語った。



「……報酬は?」



「……この『ホッツ家』に伝わるこの宝剣ほうけんでどうでしょうか…」



「………本気??」



ポコは口数少なく依頼クエスト報酬内容ほうしゅうないようを聞いて銀髪の騎士の所有してる細く美しいレイピアに紅眼せきがんを向ける。


(…『ピスティーナの精霊剣せいれいけん・ランクS・精霊の加護・スキル・浄化じょうか』……本物かぁ…)


「………わかったよぉ…この依頼クエストオイラ達『土龍』が引受けるよ。」



「…この様な不遜ふそんな願いを聞き入れてくれて、本当に感謝する…ポコ殿…」



銀髪の女騎士シャールは、更に暗く悲しいそうな顔で、赤髪の魔導師に頭を下げた。



「……じゃあ、どうする?日も暮れてきたし、取り敢えず宿に戻ってこれからの話し合いをするか?」



「シャール様はお一人でしょうか?他にお仲間はいないのですか??」



「はい…国を出た時は6人の護衛ごえいを雇っていたのですが…旅の途中…魔物に襲われ…私以外は…」



「そうですか…それは話し辛い事を聞きました…申し訳有りません…」


「いえ…それと、誠に言いにくいのですが…パーレンの街に来る途中、旅の資金しきんを盗まれてしまい今は殆ど…路銀ろぎんを持ち合わせてはいないのです…どこか身を置ける場所を探していたのですが…心当たりもなく途方に暮れていました。」



「それは…不運ふうんでしたね…ポコ様…ルイ様…どうか…この方に救いの手を…お願い致します…」


「…ファーラン殿…かたじけない…」


身の上話を聞いたファーランはパーティのリーダーであるポコと自身の主人?である琉偉にゆっくり頭を下げてシャールの救済を乞う。


「オイラは全然問題ないよぉ!」


「俺がファーランの頼み事を断る訳ないだろ!?勿論もちろんオッケーだ!」


ポコと琉偉は2人同じ様に笑いファーランに賛同さんどうする。


「じゃあ、行こっかぁ!オイラ達の宿に!」


「そうだな…腹も減ったし!あっ!?ポコ…口の周りにタレついてんぞ!!なんか買ったろ?俺にも食わせろ!」


「あっ!最後の一本なのにぃ〜っ!」


「……何故でしょう…あの御二人を観ていると心が暖かくなるのです…ファーラン殿が…羨ましい限りです…」


「はい…私の大切な自慢の『家族』で御座います…」


「『家族』……ですか……」


ファーランは目の前の『家族』を輝く金色の瞳で見つめて語り、シャールは1人囁くように呟いた。





「えっ?宿と言うのはここですか??」


ガゼルの大宿、受付にて驚きの声を上げるのは銀髪の女騎士シャールだ。


「もしかして…ポコ殿達は相当に名のある冒険者なのですか??」


「ん〜っ…自分で言うのもなんなんだけど…この街で今、オイラ達を知らない人なんていないんじゃないかなぁ??」


ポコが、自然にドヤる。


「その様なお方に…声をかけるなど…本当に失礼しました…数々のご無礼ごぶれい深くお詫びします。」


シャールは己の軽率けいそつさを恥じて真面目な騎士はポコ達に頭を下げてた。


「なんかさぁ…シャール…堅苦しいよ!もっとこう近所の友達みたいにやろうぜ!?あんたは俺達に依頼クエストを出した人だろ?言い換えれば、あんたは俺達を雇った雇用主こようぬしだ!もっとドンと構えて!!今日から俺たち『仲間なかま』だろ?」


「…仲間…ですか…度重なる御心使いに感謝を…」


琉偉の言葉に戸惑い、そして出逢ってから始めて小さく笑みを浮かべ、感謝した。


「あぁ…ダメだこりゃ…まぁ、俺達はただの冒険者だ!丁寧な言葉よりも心に響く気持ちを大事にしてる!楽しく行こうぜ!シャール!?」


琉偉は得意の『いい顔』で笑みをみせた。


「お待たせ致しました。『土龍一行』様こちらのお方はご宿泊で御座ございますか??」



「あぁ…そうだ、それともう一部屋用意してくれないか?」


「ファーランはシャールと一緒の部屋で大丈夫か?」


「はい!勿論もちろんで御座います。」


「え?…あの…先程も言った通り私は今…」


「ねぇ?シャール…ルイがそんな事気にすると思う??」


「え?いや…どう言う事でしょうか??」


「御主人様は、御心おこころが大きいお方なのです…」


「そ…そうなのですか…?え?」



呆然とするシャールに向けて微笑み合う紅と金の瞳。



「じゃあ、各自着替えて、飯でも食いながら今後の動きについて考えよーぜ!?」



ニコッと笑う琉偉が移動をうながし男女2組は最上階の並びの部屋に入って行った。




「…なあ?ポコ…あのシャールって子どう思う??」


「ん?どうしたのぉ?」


ガゼルの大宿、最上階の自室で琉偉はポコにシャールについて話をする。


「いや…あの子…シャールは自分の兄貴あにきを殺す為に旅をしてここまで来たんだろ??」


「うん!それは間違いなく本当だと思うよぉ…でも、多分…何かを隠してる…」


ポコは何かに気づいていた。


「…なんか…悲しいよな?自分で家族かぞくの繋がりを断ち切らないといけないのは…」


「うん…オイラも…そう思う…でもシャールは本気だった、あの報酬のレイピア…『精霊剣せいれいけん』って言って…おとぎ話に出でくるぐらい有名な魔剣だよぉ!」



「そんな物を報酬にするなんて…よほどの事情があるんだよ…だから助けてあげようと思ったんだぁ」



「…勝手に決めてごめんね!」



「ばーか!あそこで助けるのが、かっこいいんだろ!」


「うん!ルイならそうすると思ったよぉ!」


「だって何しろあのおっぱいだからな!!」


『ドン!!!』


「ヒィ〜っ!!隣ってファーランだよね??」



「え?これも聴こえるの??ファーラン?」



琉偉が真面目な会話からふざけた瞬間、隣から何かを殴る音が聞こえ、殺気を感じた上級冒険者と準上級冒険者は震え上がる。





一方その頃、ファーランとシャールの部屋では2人が防具ぼうぐを脱ぎ、着替えをしていた。


「えっ???…ど…どうなされたんですかファーラン殿??」


いきなり壁を殴り付けたお淑やかな金髪の優しい獣人じゅうじんをシャールはびっくりした顔で見やる。


「いえ…お気になさらず…少しばかり手が滑ってしまいました。」


サラリとお淑やかな笑みをみせるファーラン。



「あの…あらためまして、救いの手を差し伸べて頂き本当にありがとうございます…」


「御主人様……ルイ様が仰った通り、我々は冒険者です。どうかお気に入りなさらず…」


「あの…それと一つおうかがいてもよろしいでしょうか??」


ファーランはシャールと出会ってからずっと気になっていた事を話し出す。


「はい…何なりと!」


「その『呪い』は、どなたに付けられたのですか??」


「!!!ファーラン殿は…こ…この呪いが分かるのですか??」


「はい…私はマナに宿る『加護かご』や『呪い』を感じる取る事が出来ます…その呪いは貴方あなたを殺す物です…」


ファーランはシャールを見た瞬間に呪いに気づいていた、そして呪いを背負い、絶望に満ちた、かつての自分と同じ眼をした1人の少女を見捨てられなかったのだ。


「それを知ってて私を助けようとしてくれたのですか??」


「…混血こんけつの私は…あのお方…ルイ様に助けられました…少し前は貴方あなたと同じ、絶望に染まった眼をしていました…なので…貴方あなたの気持ちが伝わってきてしまったのです…悲しみが…孤独こどくが…そして憎しみが…」


「そんな…そんな人を見捨てるなんて…私は出来ません…」


ファーランは昔の自分に語りかけるように細い声をシャールに伝える。


「…ファーラン殿に最上の感謝を……」


銀髪の騎士は漆黒の瞳を震わせ、心優しき、始めて目にする『混血の獣人』に深く…深く感謝をした。


「シャール様…全てお話しして頂けませんか?…私達を信じては貰えないでしょうか?」


ファーランは金色こんじきの瞳に光を灯しシャールを見る。


「…………」


銀髪の騎士は応えない…そしてファーランは明るく口調を変え、語り出す…



「…ルイ様は凄いのです!!悲しみや憎しみを消し去ってくれるお方なのです…ルイ様は弱い者や力の無い者の味方です!そして…すべてを打ち破る力を持つ至高の『英雄』です!!……ポコ様も同じです!!心優しく虐げられた者を見捨てる事なんて絶対にしません!!だから…どうか…どうかシャール様を助ける為に真実を…お話下さい…どうか…」


ファーランはシャールの手を取り訴えかけた。


救いたいと…


昔の自分と同じように苦しんでいる目の前の1人の女性を…救いたいと。


ファーランは金色こんじきの眼から涙を流し訴えた。



「申し訳ありませんでした…すべて…全てをお話しします……」


シャールはファーランに全てを打ち明けた。


涙を流し、真実を隠した自分を助けると必死に語った1人の人々から忌み嫌われる金色こんじきの瞳を持つ心優しき獣人に。



だが…真実は凄惨な物だった…そして…ファーランは怒りに震えた。


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