『お使い』と『差別』
パーレンの街の商店通り、幾人もの住人、商人、そして冒険者や貴族が通りを忙しく往来する中、注目を集める冒険者パーティがいた。
「やっぱり…皆んな見てくるな!ここまで見られるとなんかな…」
「そ…そうだね!これからは探索に行く以外はこの装備はやめた方が良いね…目立ちすぎるよぉ…」
「私は気に入っていますが…御主人様達がそう仰いますなら…」
琉偉達は商店通りを歩いてすぐ、今朝と同じ様にパーレンの街の人達に注目されたのであった。
「で、ポコぉ?買い物って言ってたけど、何を買いに行くんだ??」
「えっと…先ずは、迷宮探索に必要なアイテムの調達でしょ?…それと…ルイの『試練』に役立つ物とぉあとはやっぱり…普通の服と依頼関係の情報集めかな?」
ポコは小さいく可愛いい手で指折り数え、琉偉に街での活動内容を伝える。
「おぉ!案外にやる事いっぱいだな?どうする?二手に分かれるか??」
「そうだね!どこのお店も夕方には閉めちゃうからギリギリになっちゃうもんね…じゃあ、ルイとファーランは生活衣類とクエスト関係の情報を仕入れてきて!」
「おう!任せろ!」
「はい!…それと依頼の情報はどの様な物を優先しますか?」
パーティリーダー、ポコの指示に琉偉は自信たっぷりに応答し笑い、元冒険者のファーランはポコに依頼の優先事項の確認した。
「うん!依頼は迷宮探索と魔物の討伐関係を中心にお願いできるかい?…アイテム回収とか要人警護は報酬は良いけど…比較的難易度が高いからね!」
「わかりました…では、集合はどの様に?」
「あと3時間ぐらいで『終の鐘』が鳴ると思うんだ!そしたらこの商店通りを南に下ると噴水のある中央広場があるからそこに集合でどう?」
「承知致しましたポコ様…!では、参りましょう御主人様!」
ファーランは琉偉と2人っきりの買い出しに心を弾ませ、少しテンション高めに琉偉に声をかけた。
「おお!じゃあ、また後でな!ポコ!」
「うん!ルイ…わかってるとは思うけど…面倒事は極力控えてね?じゃあ、よろしく!また後でね!」
「おう!」
ポコは少しだけ不安を覚えて琉偉に注意を促し、ひと時の別れを口にし二手に分かれて歩きだす。
「…ったく…子供じゃないんだから買い物ぐらい楽勝だよな?ファーラン!ポコも心配症だよな!?」
「ポコ様は…ルイ様の事がお好きでたまらないのでしょう!一緒に居て分かります…あの…その…私もそうなので…」
ファーランは少し恥じらいを見せ、『何処かの白髪の痴女』に習い、上目づかいで琉偉を見つめる。
(何これ!!めちゃめちゃ可愛んですけどぉ!!何この上目づかい!?もし鑑定の指輪を装備してたら、ファーランの上目づかいはS Sランク…伝説級だな!)
「お…俺もファーランとポコの事は大好きだけどな!!」
「!!もう一度!今のお言葉を!!是非!!もう一度!!」
「えっ…いや…俺もファーランとポコの事、大好きだぜ?」
「…はぁ…これが『幸せ』と言う事なのですね…」
ファーランは琉偉の言葉を心に刻み、両手を胸に当て己の幸せを確認した。
「…ファーランは大袈裟だなぁ…よし!チャチャッとお使いを終わらせて屋台でなんか、おいしーもん食べよーぜ!」
「はい!!御主人様!」
2人の冒険者は笑い合い、足取り軽く通りを歩く。
一方、ポコは既に行きつけのアイテムショップに足を運んでいた。
『カラン…カラン』
「いらっしゃ〜い!…あっ!!!ポコぉ!!ねぇ!噂は本当なの??…ってそんな高価そうなローブを着てるって事は本当なのぉ?スゴイ!!」
ポコが木製の強固な扉を開けた瞬間この店の店員が駆けつけこの街で今1番熱い噂を本人に確かめる。
「おっ!さすが、情報通のマールだね!そうだよぉ!!噂は本当だよぉ!!」
ポコが胸を張ってドヤ顔をする中、興奮する『マール』と呼ばれる、金より白に近い綺麗な髪のポニーテールを揺らした少女が緑の瞳を輝かせる。
「…本当にすごぉーーい!!」
「ランクも今日でAランク…『準一級冒険者』になったんだぁぁ!もう、モグラのポコなんて言わせないさぁ!どーだぁ!」
ポコは目の前の白金の髪の少女に対してドヤの極みを発動させる。
「本当に…あの伝説の守護龍を討伐して『黄昏の水晶石』を手に入れたんだね…凄い……良かったね!ポコ…いや、『土龍』のポコ…本当におめでとう!」
マールと言う店員の少女はポコの事を嫌がらない数少ないポコの顔馴染みだった。
「なんか面と向かって言われると少し照れるなぁ…」
ポコは慣れない称賛を受け少し顔を赤くする。
「所で、今日は何を買いに来たの??いっぱい稼いだならウチでいっぱい使ってね!英雄のポコ様ぁ!」
マールがキラキラした笑顔でポコを見つめる。
「英雄だなんて…でも、今までマールにオマケしたりしてもらった分、ちゃんと恩をかえすよぉ!」
「さっすが!ポコ!そうこなくっちゃ!!」
少女ながらにマールは商売上手だった。
「今日は魔法薬を買いに来たんだ!それと各、迷宮の情報が欲しいんだ!」
「魔法薬はポーション?それとも中級回復薬でもいっちゃう??」
「いや、最上級回復薬を10個とハイエーテルを10個それと万能薬の魔宝珠を貰うよ!」
「…え?……ポコ?一体…幾ら稼いだのぉ??あり得ないでしょ!!最上級回復薬が幾らするか知ってるでしょ??…それに万能薬の魔宝珠は1番少ない回数の物でも金貨5枚だよぉ!?」
一級冒険者でも滅多に買わないアイテムをサラリと注文した顔馴染みの小さい冒険者に度肝を抜かれるマール。
「いーの!いーの!って……(少しルイに似てきちゃったなぁ…でも、命に関わる事だからここは妥協できないもんね…オイラはパーティリーダーなんだから…!!)」
「ねぇ?本当に買うの??無理してない??」
マールは少し不安そうにポコに確認する。
「心配してくれてありがとう!マール…でも…全然大丈夫だよぉ!アイテムの用意をお願いできるかい?」
ポコはマールに礼を言い、優しく、可愛い笑顔で笑いかけた。
「…あとは…何か…ん??コレは?」
ポコは商品が所狭しと飾ってある棚の下に雑に置かれた汚れた本を手に取る。
「もしかして…『錬金術師ランスロットの調合・ランクSS・禁書の加護・神封の加護・隠密の加護』
「……何これ!?加護が3つも付いてて伝説級??」
ポコが指輪の効果で分かった一冊の名前に心当たりがある人物の本を興味深くその大きな眼で見つめた。
「お待ちどうさま!!目玉が飛び出るぐらいなお会計になってるけど…本当にいいのね?」
「うん!それは良いんだけど…マール?この本って売り物なの??それと…これはどうやって手に入れたの??」
マールにポコは伝説級(S Sランク)の本の入手経路を確認をする。
「ん?ああ…それ?なんか昔ここで働いてた人が騙されちゃって…只の古ぼけた本を売りつけられたんだって!それでどうにも使えないからそこでまとめ売りにしてるんだよ!欲しかったらあげるよ?こんなに買い物してもらったし!!サービスだよぉ!」
「えっ…!?いいのぉ??店主に確認取った方がいいと思うよぉ??」
「いいの、いいの!ここの店主だってそんな本の事は忘れてるよ!じゃあ、コレも一緒に入れとくね!」
そう言ってマールはその古ぼけた厚手の本をアイテムの入ってる袋に詰め込んだ。
「それと…迷宮の情報なんだけど…どうやら『レウス魔神国』の『始まりの迷宮』が魔族によって封鎖されたって商人達が騒いでたわ!遂に魔族が動き出すかもしれないって!…それ以外には特に変わった情報は無いようだけど…」
情報通のマールはアイテムショップ兼、情報屋としてもポコに度々入手した情報を流している。
「迷宮を封鎖してるって!?魔族かぁ…少し…嫌な種族だなぁ…ううん!ありがとうマール!それとお代はお幾らだい?」
「情報料込みで…しめて……金貨25枚よ?どう?ビックリした?」
この国の平均年収並みの金額を提示したマールはポコの反応を伺って戯けた。
「オイラの目利きよりだいぶ安いよぉ!サービスしてくれてありがとうマール!」
そう言ってポコはマールに金貨を手渡す。
「えっ!?本当に買うの??ってポコ!?一枚多いよ!26枚ある!」
「それは…今までオイラに優しくしてくれたお礼だよ!コレからもオイラのパーティ『土龍』をよろしくね!」
「ポコ……ありがとう!うん!また来てね!もっともぉーっとサービスじゃうんだから!絶対にまた来てね!」
「うん!また来るよぉ!」
マールは少し緑の瞳を揺らして、とびっきりの笑顔で店を出て行くポコを送り出した。
「えっと…(あとは世界地図と大陸の地図か…)」
ポコは足早に通りをすすむ。
その頃、琉偉とファーランは衣類と依頼情報を求めて商店街を彷徨っていた。
「ん?ファーラン!この店なんかいいんじゃないかな??」
琉偉は店の前に飾られてる女性物の服を見てあたりを付ける。
「はい!では、このお店に致しましょう!」
「こんちわー!ちょっと普段着を探してんだけど、試着しても良いか?」
「はぁーい!いらっしゃいませ!お客様…!!お客さん!!すみませんが、ウチは『獣人』は入店を控えてもらっています…なので…この店の物はお売りできません…お引き取り願います…」
「…はぁ?……おい!!それが客に対する態度と礼儀か!?テメー…もう一回同じ事を言ったら女だろうとマジで許さねーぞぉ!!おい!」
店内に入店すると、入り口に近くに、20代後半程の赤毛の女性がファーランを見るなり態度を突然変え、汚いものを見るように言葉を発した、それに対し琉偉は怒りをあらわにする。
「…御主人様…行きましょう!私は大丈夫です…ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。すぐに出ますので!行きましょう!」
ファーランは琉偉の腕を取り店の外に琉偉を連れ出した。
「御主人様…すみません…私は慣れているので…大丈夫です!ラウル王国は獣人族に寛容な方は多いのですが…中にはあのようなお方もいらっしゃいます…残念ですが、ここは諦めましょう…お手を煩わせて申し訳ありません。」
「ファーラン…違う!!ファーランが謝るような事は一切ない!!クソ!なんだアイツ!あんな奴は人を相手に商売する資格なんかねーよ!腹立つ!行こう!ファーラン!!」
琉偉は、この世界の獣人族に対する『差別』を自分の肌で直接感じ、怒り、そして少し寂しい気持ちになった、ファーランに声をかけ早足でその場から1人歩き出す琉偉。
「ルイ様…私は貴方さえいてくれれば何も怖くなどありません…私の為に怒ってくださって本当に…ありがとうございます………大好きです…」
「何してんだぁ!置いてっちゃうよ!ファーラン!」
ファーランは、歩き出す琉偉に聞こえないよう感謝と愛を囁く。
そして、先程の店から数軒先ある一軒の店に目を向ける琉偉。
「おっ!この店の服は良いなぁ…ここにしよう!」
「『ガチャ』こんちわー!誰かいる?」
琉偉はファーランをまた傷つけない様に店員の対応を伺う。
「これは、これは…冒険者様、この度は『マルチェロ』にご来店いただきまして誠に有難うございます。お『二人』に合う服を誠心誠意お探し致します、私、店主の『マルチェロ』と、申します。お見知り置きを!」
高身長で真っ白のオールバックに、色付きの眼鏡をかけて黒いスーツを着こなし、如何にも『出来る執事』の風格のマルチェロは琉偉とファーランの格好を見て上級冒険者と判断し、丁寧な接客態度で『琉偉達』に挨拶をした。
「…そうだよぉ!!オッサンみたいな人が商売をする資格があんだよ!なぁ?オッサン!俺達に合う服を選んでくれよ!値段は気にしないで良いからな!よろしくぅ!!」
琉偉は、先程の店とは違いファーランを見ても何一つ態度を変えない紳士マルチェロを心底気に入った。
「有難き御言葉、感謝します…では、店内を見てお寛ぎ下さい……私はお客様のお召し物を見繕って来ますので…暫しお待ちを…」
「ああ!任せた!じゃあ、ファーラン…俺もちょっと服を見てくるから、ファーランはポコの服を選んであげてくれ!…それと…奥にその…下着とかもあるっぽいから見てくれば?俺と一緒だと選び辛いだろ?」
「ポコ様の服ですね!分かりました!それと…お優しい御心使いに感謝します…では、少しお待ちください。」
ファーランは、琉偉の優しさに心ときめかせ、店内奥の婦人服の方へ足を向けた。
「俺も変えの下着とポコの分の下着を観に行くかな!(あっ!サプライズでファーランにドレスでも買ってあげよう!喜ぶかな?)」
「おっ!コレなんか少しエロくていいんじゃないか……って…(はっ!これか!?ファーランに贈り物を贈った奴らはこんな気持ちでファーランにあんなエロい服を贈ったのか!?チクショー!!誰の許可を得てエロファーランを想像してんだ!!…色ボケヤローども!!)」
琉偉は今朝、大量届いたファーラン宛の荷物を思い出し、まったく同じ思想の自分を棚に上げて心の中で『今世紀最大のアホ』は叫んだ。
「お客様…お召し物の用意が出来ましたが……お客様!?もしや、先程一緒に居られた見目麗いあの、獣人族の麗人にお贈り物ですか??」
「おいおいおいおい…わかってんなぁぁーオッサン!!そうだよな!どう見ても麗し系だよなぁ??ったくわかってねー奴が居て困ってたんだよ!!オッサンのセンスは満点だ!!」
琉偉はマルチェロの発した言葉に共感を覚え背中をバシバシ叩く。
「はい!このマルチェロ!先程のお方を拝見した瞬間、衝撃が走りました!!天は奇跡を起こされたのだと…」
マルチェロは少し大袈裟に両手を広げ視線を店の天井に向けて、過度なセリフを洩らす。
「…はい!!買ったぁ!!この店のもん全部買った!!現金で一括払いだ!!俺はあんたが心底気に入った!!『マルチェロ』って言ったよな?これからも仲良くしてくれ!それと頼みがある…ファーランに似合う1番良いドレスを用意してくれないか??」
マルチェロへの好感度が上がりきった瞬間、琉偉はどこかの成金状態になる。
「お客様…お気持ちは非常に嬉しいのでが…服を全て買われてしまわれたら…お客様に似合うお召し物を選ぶ、と言う私の趣味が断たれてしまいます…ですので、それだけはどうか御容赦を!」
深々と頭を下げるマルチェロ。
「…あんたは…商人の鏡だよ!!あぁ!無理を言ってわるいな!でも、それぐらい気に入ったって事だ!これからもここで買わせて貰うよ!マルチェロ!」
琉偉は、マルチェロの対応に感心して優しい笑顔で尊敬の言葉を述べる。
「それはそれは、この老骨には勿体ない御言葉を…感謝致します、そして、こちらこそ末永く『マルチェロ』をご贔屓に…よろしくお願い致します」
腰をビシッと伸ばし琉偉に再度深々と頭を下げる老紳士。
「おう!…それで贈物のドレスの事なんだけど!良いのある?」
「はい!勿論!それも最高の品物で御座います。少しお待ちくださいませ」
「おう!!よろしくぅ!」
マルチェロは華麗な動きで店の奥に足を運ぶ。
(不思議なお方だ…もしかすると…)
マルチェロは頑丈に鍵のかけられている部屋に入る。
(やはり…)
その部屋には数々の衣類を中心にマルチェロが人生をかけて集めた蒐集の数々が飾られていた。
その中の一つ、ある『純白のドレス』が神々しい光を放ち、マルチェロに視線を向けさせる。
(よもや…この魔法の法衣がここまで光輝くとは…やはり偶然などではありませんね…女王陛下…)
マルチェロはその神々しく光る純白のドレスを手に取り、店で待つ不思議な魅力を持つ、心優しい冒険者の元に向かう。
「お待たせ致しました…こちらはその昔、とある国の女王陛下が制作したと言われる由緒ある魔法の法衣です…当店で1番のお召し物でございます…どうでしょうか?」
「なぁ?………これって『ウェディングドレス』だよな??」
琉偉は固まっていた…それは純白を基調に数々の金と銀のレースを施され豪奢な刺繍と優雅に広がる、長いスカート部を特徴にもつ琉偉も知っている物だった。
「『うえでぃんぐ』ドレス??でごさいますか??申し訳ありません…そのようなドレスを、見聞きした事はありません…勉強不足でした…」
マルチェロは始めて耳にする琉偉の言葉を真摯に受け止め、申し訳なさそうに頭を下げる。
「いや…悪りぃ…違うんだ!今のは忘れてくれ!でも……良いな!!これにするよ!これならファーラの白いうさ耳にも最高に合うな!ありがとう!マルチェロ!」
「…御値段も一流ですが宜しいですか??」
その時、マルチェロの眼鏡の奥の瞳が輝いた様に琉偉には見えた。
「あぁ!!幾らだ?」
「金貨80枚です!」
「買った!」
「……(迷いは一切無しですか…)やはり…『黄昏の覇者』は違いますなぁ…」
琉偉はマルチェロの出した提示金額に秒速で購入を決め、白髪の老紳士は口元を緩ませ称賛の言葉を贈る。
「なんだよ!マルチェロ!知ってたのかよ!この商売上手が!」
琉偉はマルチェロにとびっきりの笑顔で悪態をついた。
「申し訳ございません…噂は耳にしていました…が、この『時期』に『兎の獣人族』の冒険者様を連れて、そのような『装備』を装着されていてはこの愚鈍なマルチェロでも察しはつきますよ!」
「あっ!…そりゃそうだな!」
マルチェロの観察眼に琉偉は少し驚き、そしてマルチェロは笑みを見せる冒険者を心穏やかに見つめた。
と、そこに鎧を鳴らす音が聞こえ、店主絶賛の麗し系美女が姿を現わす。
「遅くなり申し訳ありませんでした…この様なのはどうでしょうか?ポコ様に似合う思うのですが…」
マルチェロはすかさず純白のドレスをファーランの見えない位置に置いた。
(やっぱ出来る男は違うねぇーっ!)
琉偉は片目を瞑り、マルチェロに親指を立てる。
「あれ?えっ?ファーラン普段着をさがしてたんだよね??えっ?」
ファーランが手に持っているのは貴族の子供が着る様な真っ赤でド派手装飾の付いた正装だった。
「はっ!そうでした!!ポコ様に似合う服探していたら目移りしてしまい…も…申し訳ありません!」
「えっ?ファーランって…結構天然なの?」
「す…すぐにもう一度探して参ります!!」
「じゃあ、一緒に探そうぜ!」
「…はい!…御主人様…!!」
仲良く、まるで自分たちの子供の服を選ぶ様な2人の冒険者を微笑みながらマルチェロは見つめていた。
「おぉ!結構買っちまったな!!マルチェロありがとう!お会計頼むよ!」
無事にポコの普段着を何着か決めた琉偉はマルチェロに代金の精算を促す。
「…本日は『黄昏の覇者様』と『麗しき麗人』とお近づきの印に…特別に全てサービスとして贈呈致します」
「おいおい!そりゃチョットやりすぎだよ!!マルチェロ!頼むから普通に会計してくれよ!」
あり得ないサービスに琉偉は苦笑いし、マルチェロに代金の清算を再度促す。
「いえ!!この店の名前は『マルチェロ』そして私はこの店の店主!『獣人族と人族の混血』の『マルチェロ』で御座います、私がこの店の『掟』なのです…なのでどうか!!少しばかりの気持ちですが…この年寄りの願いを聞き入れては貰えませんか??」
そう言って色の入った眼鏡を取るとその瞳はファーランと同じ金色に輝いていた。
「マルチェロは混血だったのか??」
「はい…鼠獣族と人族の混血で御座います…なので、数軒先の声などは耳に入ってしまうのです。」
マルチェロは白髪のオールバックから小さいネズミの耳を覗かせ、琉偉達が店に来る前に琉偉の怒鳴り声を獣人の耳で確認にしていた。
「私は…感動致しました…貴方の様な剛の者が、立場弱き今世の混血の者ににそうまでするとは…このマルチェロ、一生のお願いで御座います、同じ混血としての感謝と、私の気持ちをどうか御受け取り下さい。」
混血種の老紳士は琉偉をその金色の眼で強く見定め、背筋をシャキッと伸ばし、綺麗な白頭を深々と下げたまま琉偉に嘆願した。
「…ここまで言われたら受けるしかないな…本当にありがとうマルチェロ!俺らのリーダーにもちゃんと伝えるからな!」
「マルチェロ様 …本当に…本当感謝致します…是非、またお伺いさせて下さい…」
「はい…当店では麗しい方は大歓迎で御座います!」
「マルチェロ!俺は琉偉だ!!『琉偉』と呼んでくれ!」
「はい…承りました…ルイ様…」
「なんか、気を使ってくれたみたいで悪かったな!」
「いえこれは私の…年寄の我儘で御座いますので、どうぞお気になさらず…素敵なお2人に祝福を!」
そう言ってマルチェロは顔に刻んだ皺を更に増やし、破顔して祝辞を述べた。




