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『大宴会』と『声』



ガゼルの大宿おおやど大浴場だいよくじょうにて3人は人並みの幸せを感じつつ最上階さいじょうかいにある大部屋おおべやに戻ってきていた。


「よしゃぁ!サッパリして気持ちいいな!」


「うん!高級宿だからこの服の着心地きごこち最高さいこうだよぉ〜」


琉偉が風呂上がりの爽やかさを噛み締め、ポコは初めて着る厚手あつでの『浴衣ゆかた』を着ている。


「でも…コッチの世界にも浴衣ゆかたってあるんだな?最初に見た時はビックリしたぞ!」


琉偉は風呂上がりに脱衣所だついじょに浴衣が置いてあった事に驚愕きょうがくし、袖を通した浴衣の手触りを確かめるようにしてポコに話をふった。



「ここの店主てんしゅは確か『ドワーフ族』って言ってノームと唯一交流こうりゅうがあった種族しゅぞくなんだ!…だから、ドワーフ族の文化ぶんかなんだと思ったけど…ルイも知ってるって事は…ここの店主も違う世界から来たのかなぁ?」



ポコは湿った赤髪あかがみを肌触りの良さそうなタオルで乾かし、推測すいそくを立てていた。



「ドワーフ族は戦闘せんとう鍛治かじに関しては非常ひじょうに優れた種族だと言われています。」



そこに、浴衣に真っ白い肌を通したファーランが言葉を添える。


(マジか…ファーランの浴衣姿……最高です!メルヘン最高!!よくわかんねーけど神様ありがとう!)


ファーランの浴衣姿に見惚れ、この境遇をなぜか神に感謝するアホ。


「あの……ルイ様?」


「え?あっ…へ…へぇーっ!ドワーフ族かぁ…興味きょうみあるな!!同郷どうきょうの奴の可能性かのうせいは低そうだけど、何か情報じょうほうが入るかもな!」


少し様子のおかしい琉偉に、ファーランが不思議そうに琉偉を見つめて名を呼び、動揺してエロ思考を解除した琉偉がソファーに腰掛ける。


『コンコン』


そこに琉偉達の部屋の扉からノックをする音が聞こえてきた。


「ん?どぉーぞぉぉ〜」


扉付近に居たポコが間延びした返事をし、扉がゆっくりと開かれた。


「失礼します…お客様、大変長らくお待たせいたしました、うたげ支度したくが終わりましたので、ご用意の済み次第案内させてもらいますので、お声をお掛けください。」


扉の前に頭を深く下げる茶髪の女の子が丁寧な立ち振る舞いと物言いで琉偉達に宴の始まりを告げる。



「やったぁ!オイラ腹ペコだよぉ!早く行こうよぉ!2人ともぉ!」



「そうだな!ファーラン行くぞ!」



「はい!御主人様!」


((あっ…人前では御主人様なんだ…))


ポコが髪を乾かしていたタオルを投げ、琉偉達を子供の様にうながし、凛としたファーランの対応に琉偉とポコは冷静に思考しこうした。



「ゲストの皆様みなさまもお揃いで御座ございいますのでご安心下さい」



「おう!エドガーもミルティスも来てんのか?よっしゃ!!気合い入れて楽しむぞ!」



「オイラこんなにワクワクするのは生まれて初めてだぁ!!」



「フフフ…そうですね!では、行きましょう」



3人は期待きたい空腹くうふく合間見あいまみえ、足取り軽く和やかに階段を下る。



程なくして琉偉達が案内されたのは大きな扉の前だった。


「…なんか、中が騒がしくねーか?」


「これだけ立派な宿だから多分、大っきな食堂があるんじゃない?」


琉偉が扉に伝わる騒々しい気配けはいに気づき、それにポコが答える。


「……お集まりの皆様!!永らくお待たせいたしました!!では、今宵こよい英雄えいゆう達…いや!黄昏の英雄達の入場にゅうじょうです!!!」


茶髪の少女は扉に手をかけるといきなり大きく仰々しく、セリフがかった大きな声を発した。


『ガチャン』『キィーーーーーッ』


大扉が音をたてて、ゆっくり開く。



「「「え?」」」



琉偉、ポコ、ファーラン3人の口からは同じ言葉が発せられたが、その言葉は直ぐに『歓声』に掻き消された。


『おぉーーーーっ!!黄昏たそがれ覇者はしゃ!!』


『えっ?あんな若いパーティなのか??』


『土龍!!おめでとうーーー!!そして!ゴチになりまーーーーす!!』


『きゃーーっ!素敵ーー!!ポコ様ぁ!!ルイ様!!』


是非ぜひ!!是非とも我らを同じパーティに加えて下さい!!』


『ウチの孫娘は器量きりょうよし!!だぞ!!是非お近づきに!』


『金髪の子ぉーーー!!結婚してくれ!!養ってくれ!!』


『あっ!ずりーぞ!俺も死ぬまでアンタに尽くすから結婚してくれーー!!』


『ポコぉーーっ!頼むから俺もパーティに入れてくれよぉーー!!』


『きゃーッ!かわいい!!…土龍のポコ様ぁ!!』


『おめでとう!!黄昏の英雄達!!』



扉の先には、巨大なホールの大宴会場だいえんかいじょうと1000人をゆうに超える数の冒険者や、綺麗きれいなドレスに身を包んだ女性達と貴族達が一斉いっせいに琉偉達に大きな歓喜かんきと祝福を声にする。




「……はぁ??…何?この盛大せいだいな感じ……最後の方のファーラン狙い2人は後で殺すとして…なんでこうなった?」


「はぁ…何って…ルイが受付で『聖金貨』一枚なんか渡すから……あぁ〜あっ…オイラ知らないよぉ…」



「こ…この人達…全員がゲストなのですか…?ご主人様?」



「こりゃ…もう引けないな!!こうなりゃヤケだぞ!食って騒いで楽しもう!!」


「ハハハッ…そうだね!!オイラ達の記念だもんね!!」


「はいッ!」


琉偉は驚き…ポコは呆れ…ファーランは呟くように琉偉に問いかけ、そして最後には吹っ切れた様に笑い合った。


「では、こちらへどうぞ!」


茶髪の少女に大宴会場の上座かみざに仰々しく設置されたステージに案内された。



「すごぉーい!これ全部オイラ達の肉ぅーー??」


ポコがテーブルに並べられた数々の料理に興奮して目を輝かせる。



「…おめでとう!兄弟!まさかこんな盛大に宴をもよすなど考えていなかったぞ!流石さすが、黄昏の覇者は違うな!」



と、そこにギルド長もといミルティスが現れ、祝福しゅくふくを述べる…ポコは大量の肉から視線しせんを逸らし、ミルティスを見つめていた。



「おぉ!!なんか…すげー事になっちまったが来てくれてありがとうな!今夜こんやはいっぱい食って飲んで、今日の事を酒で薄めてやれ!!な!兄弟!」



琉偉は600年クラスの失恋しつれんをしたミルティスに感謝と励ましの言葉をかける。



「兄弟…今日の事を薄めるなんて…勿体無もったいなくて出来はしないさ…今日は私に初めての『兄弟きょうだい』が出来た日…死ぬまで忘れぬ記憶きおくであろう…」


ミルティスはみどりひとみうるませ、真剣な表情で琉偉に語った。


「あぁ!俺の名前は『琉偉』って呼んでくれ!ミルティス!」


「ルイ…ああ!心に刻んだ!わ…っ私は、親族しんぞくや古い付き合いのある者から『ミルティー』と呼ばれている!」


「わかったよ!ミルティーこれからもよろしくな!」


「ああ!こちらこそだ!」


ミルティスは美形びけい緊張きんちょうさせ、己の愛称あいしょうを琉偉によばれ、恥ずかしそうにせきらみ、琉偉と握手をした。



「宴の開始早々すまなかった!時間を取らせたな!ギルドは今後の冒険者としての貴殿きでん活躍かつやくに期待する!!では、依頼クエストの件も明日頼む……本当におめでとう…ルイ!」



「おう!明日また顔を出すよ!」


「ああ!それじゃ……おっと!話し損ねる所だった!…それと、例のカルロとか言う冒険者の処遇しょぐうだが、奴らは1年の禁固刑きんこけい確定かくていした。なので奴らに金貨きんかの返却は必要無いので、心配は無用だぞ!」



「そっか!なんか…色々ありがとな…ミルティー!宴も楽しんでくれよな!」



「ああ!気にするな!兄弟!じゃあ失礼する。」



美形のエルフは最初は『ギルド長』ミルティスで最後は『義兄弟』ミルティーの笑みで話を終え颯爽さっそうと去っていった。


御主人様こしゅじんさま沢山たくさんのお心の綺麗な御兄弟様ごきょうだいさまがいらっしゃいますね!」


ファーランが目を細め琉偉に優しく言葉を伝える。


「そうだな…沢山いた方が楽しいに決まってる!……じゃ、始まりの挨拶がないと始まらないよな!ちょっくら行くか!ほら行くぞポコぉ!」



「う〜ん…オイラはただのパーティリーダーなだけで、この宴の主賓しゅひんはルイだろぉ?かまして来てくれよぉ!!オイラは先に食べて待てるから!」


琉偉がポコを呼ぶと、それを辞退したポコは勢いよく肉にかぶりつく。


わたしも、ここで御主人様の話を聞こうと思います。」


ファーランも優しく断りを入れる。



「そっか…じゃあ、ブチかますかぁ!…行ってくる!」


琉偉は決意けついしステージに移動いどうする。


『よぉ!皆んなぁーー!!注目!!!……今日は俺達を祝いにわざわざ来てくれて感謝かんしゃする!!俺は『土龍のポコ』のパーティの琉偉だ!!宴は派手な方が好きだ!沢山食って呑んで騒いでくれ!誰にも文句はいわせねぇー!!今日は無礼講ぶれいこう!!冒険者は冒険者らしく!!貴族様は優雅ゆうがに美しく!今日を最高さいこうに楽しもうぜ!!!おっと!最後に……飲み過ぎには注意しろよ!!野郎共!!!!』



『イェーーイ!!!なんだアイツ!最高だな!!』


『よっしゃー!!飲むぞ!!ホント最高だな!!土龍のパーティの奴は最高だ!!』


『オーーーーー!!!』


『久々にあんな豪胆な冒険者みたわ!!』


『オーー!!』


『あれで本当にGランクの冒険者かぁ??』


『オーーーーー!!!』


『どうやらあのギルド長とマブらしいぞ!!』


『オーー!!』


『アイツらこれからものすごい事するんじゃねぇーか?』


宴会場は歓喜の熱さを増す。


『無礼講かぁ!よっしゃ!そこの貴族様!!俺と酒で勝負しな!』


『ありがとー!ルイ様ぁ!お暇がありましたら是非こちらに遊び来てねぇーー!!』


そこから大宴会の幕が上がる。





「ねぇファーラン?なんかさぁ〜やっぱりルイの『こえ』って凄いよね!?皆んなの心を掴む速さが尋常じんしょうじゃないよね…」


ポコが肉は頬張ほおばりながらファーランに琉偉ついて語る。


「はい。…皆様みなさまも、あの『お声』と御主人様の人柄で……やられてしますのです…。」


ファーランは頬を桜色に染めて呟いた。



最大の盛り上がりを見せた挨拶を終え、戻ってきた琉偉を2人は笑顔で迎える。



「おつかれさまぁ!やっぱり良かったよぉ!一気いっきに皆んなの緊張が解けたみたいだったよ!それと、さっきミルティスのスキルを覗いたんだ!…凄い数の魔法とスキルがあったよぉ!」



両手に肉を持ったポコは、先程のやり取りの中でミルティスをランスロットの指輪で確認していた。


「そうだろうなぁ!アイツがブチキレた時の魔法ハンパ無かったからな!よっしゃ!俺らも楽しもうぜ!!」


はしゃいだ子供の様な笑みで琉偉はポコとファーランに改めて宴の始まりを告げる。


「おーっ!」

「はい!」


各所で盛り上がりが過熱する中、大宴会は続く。






「いやぁ…料理メチャウマだな!!流石さすがポコの一押しだな!!まだ食べたいけど…もぉ腹一杯だ!」




「わりぃ!!遅くなった!まさか…ガゼルの大宿で宴をやるなんて想像そうぞうもしてなかったからな!おめでとう!ルイ!」



椅子いすに座り食べ過ぎでキツくなったこしおびを緩める琉偉に1人の男が祝福の言葉をかけてきた。



「その声…!?えっと…まさか…エドガー!?…」


声のぬしを驚きを隠さず注視する琉偉。


「エドガー…獣人じゅうじんだったのか??」


驚く琉偉の瞳の先には犬耳に犬歯けんしを見せ、灰煙色はいえんいろの瞳で笑う、人物が立っていた。



「あれ?ポコの奴…言ってなかったのか?知らなきゃそりゃ驚くよな!あらためて!俺は『犬獣族けんじゅうぞく』のエドガーだ!よろしくな!『黄昏の覇者ルイ』!」



「いや…それはポコが…」



「…冒険者や、迷宮にたずさわる人間なら分かってる…今までポコが目立った功績こうせきを残してないのにルイと一緒いっしょになった瞬間これだ!!…ポコが成した偉業いぎょうはちゃんと称えられる!だけどなぁ…ルイも成し得た事の功績はちゃんと受け取るべきだ!それが冒険者ってもんだ!って獣人のひら衛兵えいへいは思うんだがどうだ?兄弟?」



琉偉の話を途中で断ち、エドガーは大人の雰囲気を出し冒険者を語り、最後はニコッとふざけて顔を緩ませた。



「…あぁ!そうだな…俺の目標もくひょう近道ちかみちは先ず、この世界に『名乗り』を上げないといけないからな!」



「ははっ!やっぱりルイは大物おおものだな!だが、これは忘れるな!どんなに強く、名のある冒険者でも1番大事なのは『命』だ!それだけは何があっても変わらないから覚えといてくれ!ルイ!」


「おう!ありがとなエド!」


「…エドかぁ……おう!じゃあ、俺も楽しまさせて貰うわ!ポコにも祝辞を送らなくちゃだな!ちょっと探してくるよ!ハメを外し過ぎるなよ?兄弟!そして本当におめでとう!」



琉偉が目標に想いを向け、エドガーははるか昔に呼ばれた愛称に心を向け、そして冒険者の心得こころえを再度琉偉にうながし、心からの祝福を述べ冒険者達が賑わう所に混じって行った。




宴の時間はすぐに過ぎ、日付ひずけまたごうかという時間じかんになっていた。



「もぉーオイラ食べられない!!満足ぅ〜今日は最高の宴だった!!一生忘れられないよぉ!オイラ今…すっごく幸せだよぉ!ルイ!」


色んなテーブルの料理を食べまくったポコがお腹をパンパンに膨らませ床に寝転ぶ。



「私も少し食べ過ぎたみたいです…本当に美味しく、皆様にも祝福されとても幸せな気持ちになりました。御主人様この様な機会をありがとうございます!」



「ああ!またどっかの迷宮制覇したらやろうぜ!!今度こんど街中まちじゅうの人間を集めてパレードだな!ハハッ」


「そんなことしたら聖金貨せいきんかを何枚使う事やらぁ…だから今回だけにしといた方が良いとオイラは思うけどなぁ」


琉偉が笑いながら話し、ポコはお腹をさすり琉偉に注意を促す。


「じゃあそろそろ終わりの挨拶あいさつを頼むよぉ…ルイ!」


「おう!『皆んなぁ!注ーーー目ーーーぅぅ!!』」


ポコに促され琉偉がその場に立ち大声おおごえを発する。



『ちゃんと楽しんでくれたか!?少し名残惜しいが、そろそろ良い時間になっちまうからこれにてうたげは終了だ!!本当に集まってくれてありがとう!!『土龍』一同心から感謝する!!じゃあ、各自解散だ!!』


『最高だったぞぉ!土龍!!』


『こんなに楽しんで腹一杯食ったのは久々だ!』


『こちらこそ、ありがとうだ!!黄昏の覇者!!』


『若旦那様ぁ!!この後の予定はどうぞ私と!!』


『本当に楽しかったですわぁ!!ルイ様ぁ!!』


『ポコ様ぁ〜〜ありがとうぉ!!』


『土龍!!バンザーイ!!』



琉偉は集まった人に感謝を告げ、宴の終了を宣言せんげんし、宴のゲスト達の感謝と称賛しょうさんの声は琉偉達が宴会場を出るまで止むことはなかった。



「あっ!!」


宴会場を後にして最上階の自分達の部屋の前まで戻ってきた琉偉は突然、声を発した。


「そう言えば…ミルティスと約束があったんだ!」


少しワザとらしく思い出したかのようにファーランとポコに琉偉は告げた。


「……あっ!オイラも夜食やしょくを貰うの忘れたよぉ!ルイ!一緒いっしょに戻ろうよぉ!」


ポコは琉偉の言葉に反応はんのうして一緒に行くと言い出す。


「………では、私もお供しますね…」


ファーランも少し不思議そうに同行どうこう希望きぼうする。


「…いや…ファーランは気づいてないかもだけど…今…物凄く顔色かおいろが悪いよ!!もう…今にも倒れそうなぐらいな!今日は早く休んだ方が良いと俺は思うけどな!ポコもそう思うだろう?」



琉偉は、無茶苦茶むちゃくちゃ理由りゆうでファーランの同行の阻止そしをはかりポコに同意どういを求める。



「…そうだね…『神薬エリクサー』を使ったとはいえ、やっぱり…あれだけ血を流して瀕死ひんしだったんだ!今日は早めにゆっくり寝たほうが良いよぉ!」



ポコは正当せいとうな理由を述べてファーランに声をかける。



「……わかりました。御主人様達を心配させるのは心苦しいので、お言葉に甘えて先に就寝しゅうしんさせて貰います……お気を付けて下さい。」



そう言ってファーランは少し寂しそうに1人部屋に戻る。


「…ルイぃ…作戦さくせん成功せいこうだねッッ!!」


「ああ!ファーランには悪いが宴の最後と言えば妖艶ようえん格好かっこうで優しく癒してくれるエロいチャンネー!!だろ!」



やはり琉偉はどこまで行ってもアホだった。



「オイラも柔らかいまん丸に疲れと心を癒して貰うんだぁ!!」



だが、浮かれる琉偉とポコは気づいていなかった…ファーランの…兎の獣人の一キロ先の話し声を聴き取る耳の良さと、寂し過ぎると増えてしまう嫉妬性と、今日の満月が真っ赤だったと言う事を……



「よし!街に繰り出して宴の最中さいちゅうに仲良くなったおねーちゃんの店に遊びに行くぞ!!」


了解りょうかいしましたぁ!隊長タイチョーあっ!ミルティス発見です!!ルイ隊長!!」


程よく酔い、テンションの上がったポコが敬礼けいれいをして宴帰りのミルティスを見つける。




「おーい!ミルティー!!これから飲み行こうぜ!!」


琉偉が、1人宿の通路を歩くミルティスに声をかける。


「おお!ルイ!今日はもう会えないかと思ってたぞ!…本来ほんらいエルフ族は人前で酒は飲まないのだが、今日は特別な日だ!楽しもう!」


宿の入り口付近にいたミルティスは二つ返事で琉偉達に同行する。



流石さすがぁわかってんなぁ!兄弟!!じゃあ行くぞ!確か、この建物たてものうらにその店があるって言ってたな!名前は…『メラルの宝石箱ほうせきばこ』だっけ??」



琉偉が宴中に声をかけられた女性がいると言う店の名前を口にする。



「えっ?メラル!?ルイ!!『メラルの宝石箱』はこの街の最高級さいこうきゅう娼館しょうかんだよぉ!?女の子も一流なら値段ねだんも一流だょぉ?…って…ルイはそんな事気にする奴じゃ無かったっけ…」


ポコは期待きたいに小さな胸を膨らませ、最後は少し琉偉の発想はっそうに慣れた様に言葉を口にする。


「き…き…兄弟!エ…エルフ族は…他種族との…その…男女間だんじょかんたわむれを『おきて』で禁じられてる…なので…しょ…娼館は少し問題が発生するのだが…」



ミルティスは動揺どうように動揺を重ねてエルフ族の掟を琉偉にチラつかせる。



「…なぁ?ミルティー…俺とポコが口を割らなければ誰にも『おきて』をとがめられたりはしないはずだ!!なぁ?ポコ?」


「…えっ?…オイラは何も見てないし何も知らないよ?」


「……」


無垢むく聖者せいじゃの少年の様な顔のポコ。


「…いっ…行っちゃおっかな…」


「よし!!決まり!!!」


この極悪ごくあくコンビの話が終わり、ミルティスが欲望よくぼうに負けたこの瞬間、後に夜の世界を賑わす『アウトローズ』はここに結成けっせいされた。



「じゃあ…デッパツだぁ!!」



輝く夜の街に響いたのは、琉偉の暴走族時代ぼうそうぞくじだいの出発の掛け声だった。



「おっ!ここか?…じゃあ、開けるぞ…同志よ!お互い…今宵を楽しもう!」



ガゼルの大宿裏手うらてにて、キラキラと七色の魔法灯まほうとうが光輝く派手な外観の店の前に到着し、期待を込めて扉を琉偉が開ける。



「『ガチャ』いらっしゃいませーー!!」


扉の先には右と左に20人位ずつ並んだ超絶美女ちょうぜつびじょ達が色欲しきよく奴隷どれいになった様なあでやかな笑みで正座せいざをして待っていた。



「さっすが一流!俺が前に居た所にもこんなに綺麗所を揃えた店はなかったな?…ヤベーよ…テンション上がるぅぅ!」



「ど…どうしょう…ルイ!まん丸がいっぱいでオイラ幸せぇ…」



「『おきて』にそむ行為こういがこんなに心踊らせる事だったとは…何というか………ヤベーテンション上がるぅ!!」



ポコは豊満美女のまん丸に紅眼せきがんをやられ、背徳感はいとくかんを感じ何故かテンションの上がったミルティスは琉偉の真似まねをする。


『きゃーーっ!!黄昏たそがれ英雄えいゆう様よぉー』


『さっきの宴の主賓様??来てくれたのね!?』


『やぁーん!小さくて可愛い子もいるぅ!』


『あんな若いのに迷宮の覇者なんて…素敵!!』


『若旦那ぁ!私を選んでくれたら、すっごぉーいサービスするよぉ〜』


ピンク色の声の嵐が琉偉達を囲む。


御殿方おとのがた、先ほどはご馳走様です。本当ほんとうに来てくださったのですね…心よりお待ちしていました。こちらの中から今宵こよい一夜を共に奏でる宝石達ほうせきたちをお選び下さい。」



琉偉達の前に立ち、妖艶ようえんな声を出すのは宴で琉偉に声をかけた純白で気品きひんのあるドレスに身を包む金髪蒼眼きんぱつそうがんの美女だった。


「あぁ!じゃあ、こっちの2人に全員ぜんいん付けてくれ!」


「…はい?ぜ…全員でございますか?」


純白のドレスの美女は唖然とし、己の耳を疑い琉偉に聞き返す。



「ああ…そうだ!俺は、あんたを指名しめいするよ!勿論もちろんあんたも宝石の中に含まれてるんだろ?」


「わ…わたくしですか??……はい…お客様がお求めなら勿論でございます。」


そう言って純白のドレスの美女は恥ずかしそうに満面の笑みを見せた。


「…では、まずこちらの部屋で、お酒と睦言むつごとをお楽しみ下さい…私は準備じゅんびしてすぐにおおうかがいしますので少しのあいだお待ち下さい。」



琉偉達は薄暗く怪しい部屋に通された。


酒やフルーツなどが用意され豪華なソファー席に座る3人。


「女の子を全員指名って…多分この店始まって以来の事だと思うよぉー英雄様ぁ!」


座ってすぐに琉偉に抱きつく桃色ももいろの髪の胸の大きな琉偉と同じぐらいの歳の美女。


「ちょ…ちょっとぉ!ディア!ママのお客様に色目いろめ使ったら後でどやさらるわよ!」


「あっ!そうだった!!じゃあコッチの色男いろおとこエルフ様に乗り換えだぁ!」



同僚どうりょうに咎められ『ディア』と呼ばれる桃色の髪の美女は琉偉の元をそそくさと離れミルティスの太ももに跨り胸をミルティスの顔に押し付ける。


「え?ママって言った?さっきの金髪の人がこの店のママなの?」


琉偉がディアに注意を促した長く美しい黒髪くろかみを持つこれまた美女に声をかける。


「知らなかったんだ!!まさかメラルママを指名する人がいるなんて…しかもそれに応じるなんて…ホントにビックリしたわよ!」


ポコをひざの上に乗せてポコの頭に胸を乗っけながら琉偉に話をする黒髪の美女。



「ぬくぬくのまん丸ぅ〜幸せぇ〜ッ!!」



ポコは幸せの絶頂ぜっちょうの様だ。


「へぇーっ…若いのにママさんなんて凄いな!しかも絶世ぜっせいの美女だしな!」


メラルは琉偉にとってどストライクだった。


「お待たせ致しました…着替えを済ませてきました。」


琉偉は、玉のような色声いろこえのした方を振り返ると、先ほどの上品じょうひんな純白のドレスのとは打って変わり、黒とシルバーのラメがギラつくカラダにピッタリとくっ付いたドレスを着て真っ赤な口紅くちべにが妖艶さを超えた色香いろかを放ち、金髪の髪をアップに纏めたメラルが立っていた。


「お隣、失礼します」


そう言って琉偉の隣に座り琉偉に組んだ足を絡ませて

腕をロックして耳に口を近づける。


「若旦那様…今宵もう1人夜を共にしたいと言う『新人しんじん』が居ます。どうか…その者もご一緒させてもらえないでしょうか??」


「あぁ…お…俺は全然構わないよ!」


メラルの色香にやられて琉偉のは頷くのみ。


「ありがとうございます…若旦那様。『チュっ』」


琉偉は首元にキスされた。


「では、入りなさい…」


「…失礼します……」


それはとめどなく暗く…とてもこの状況にふさわしくない程低い声だった…だが琉偉には聞き覚えのある声だった。



「え?うっそ……ファー……ファーラン??なんでこんな所に!!宿やどで寝たはずだろ!?」


「えっ!?ファーラン???」


「なんだ?兄弟?前が見えず柔らかさしか感じないぞーーー!はっはっはっ!!ここは最高だな!」


動揺する琉偉とポコは浴衣ゆかたを着て琉偉から貰った太刀たち装備そうびし、下を向き黒い霧に包まれるファーランを目撃し…アホエルフは状況が分からず昇天しょうてんしていた。



「…なぜここに?…ですか?……私は…種族柄しゅぞくがら…凄く耳がいいんです…琉偉様とポコ様のお話は全て…聞こえてましたよ…ギルドにいた時からずっと…」


ファーランの声は怖かった。



「なので…先程、ここの店主てんしゅに話をして入らせてもらいました…」



下を向き黙々と話すファーラン。



「兄弟?どうした!ココは天国てんごくだ!今宵はこの柔らかさに包まれ楽しもうじゃ…」



『ズバッ!!』



ミルティスのアホ話はテーブルごと真っ二つにされた。



「…少し、黙っては貰えないでしょうか?」



「……心得こころえた。」



ミルティスは凄まじい殺気さっきを感じ、素に戻る。


「…エエーーーーッ!!ちょ…ちょっとファーラン?あ…あぶねーからそれ取り敢えずしまってくれ!」


まさかの神速の抜刀ばっとうに焦る琉偉。



「これは…ルイ様から頂いたルイ様を惑わすやからから守る…不壊ふかいの太刀…そのためなら私は今一度、殺戮さつりく黒兎こくととなりましょう……先ずは、その首に着いたメスのマーキングをこの太刀で拭って差し上げます。」



「ちょ…ちょっとファーラン!?マジで怖いからやめてくれよ!黙って来た事は悪かったよ!帰ろうよ!…さっ!今日は疲れたから早く寝るか『ドス!!』」



立ち上がろうとした琉偉のまたあいだに青と白の綺麗な持ち手の白銀はくぎんの太刀が突き刺さる。


「お話は終わってませんので…お待ちを。」


「…ヤバイ…ポコ…ファーランはマジだ!……助けてくれ!おい!ポコ!」


ファーランの凶眼ひとみを見た琉偉の声は少し震えている。



「…ポコ様がルイ様をこの店に連れて来たのですか?」



ファーランは琉偉に目線を合わせながらポコを見ずに問う。


「えっ?あ…いや…それは…少し違うんだけど…『ズバッ』」


ポコのテーブルの前にあったフルーツの盛り合わせが真っ二つになる。


「ひぃーーーっ…ごめんよぉ〜!!ルイがこの店にしようって言ったんだ!!オイラは何も知らないよぉ!関係無いんだぁぁ!!」


ポコは恐怖に負けて琉偉を売った。


「オイ!!ポコ!お前さっきまで幸せの絶頂に居ただろ!!共犯きょうはんだろ!……助けろよ!!」


まさかの裏切りに焦る琉偉。


「御主人様……最後にお尋ね致します…この先、また同じように私に黙ってこのような所には来ないと約束やくそくしていただけませんか?」


ファーランは金色に光る眼を琉偉に向けて問う。


「…あぁ!約束する!!もう絶対にファーランに黙ってこう言う所には来ないと誓う!頼む!許してくれ!」


「……」


琉偉の答えを聞き無言のファーラン。


『キィーン』『カチャ』太刀を見えない速度で仕舞うファーラン。



「では、すぐに帰りましょう!御主人様ッッ!」


「えっ?ちょ?ファーラン?」


ニコッと笑ってファーランは可愛い声でそう言って琉偉の腕を完全にロックして娼館から琉偉だけを連れ去って行った。



あらしが去ったかのように静まり返るメラルの宝石箱。


「た…助かった…ルイ…お疲れ様!じゃあコッチはコッチで楽しもうかなぁー」


『きゃーポコちゃんのエッチー!!』


「兄弟には悪いが私もハメを外すかな!ハッハッハ!」


2人は琉偉の事を忘れて盛り上がる。


アウトローズの結成は入店15分程で幻となった。






そして各自の長い長い1日が終わりを告げた。



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