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Oh, my prince!  作者: 13q
本編
4/5

ACT4 リューンタウン


翌日集まった俺とケンセイは、最初にアカネが居たベジュード村の次、リューンタウンを拠点に動いていた。こちらもヴィーナスの内容を引き継いでおり、街の中は以前同様街というよりは村に近いぐらい広さは無い。本気で走れば10分とかからず街の端から端に到着するほどだ。

いわば初心者が駆け出して慣れてきました程度の中間レベリング帯が集まる、最低限のNPCと、鍛冶、商人、取引所、ギルド連、それから小さな賭博がある街だ。無論、最初のベジュード村よりはずっと広い。ベジュード村には鍛冶屋はおらず、アカネか村長に武器の修理のみが頼めるようになっていた。けれどこのリューンタウンでは専用の鉱石を用いれば、武器のレベルアップが可能である。


さて、この街の特長としては、真ん中に大きな川が流れている。

基本的に街中にはモンスターが入ってこない設定なので、ここでゆっくりと釣りもできるし、川にちなんだ洗濯クエストなんかも存在する。そういった街の人々のお助けクエ、というものは、主に金銭よりも、街の人々の友好度アップにつながるのだ。

この友好度というものが上がっていくうちに、それが例えば鍛冶屋であるなら、少しだけ割り引いて修理をしてくれるようになったり、商人であるなら、珍しいものが入荷した、と誰よりも先に、また安く提供してくれることがあったりと、お互いに今後もそこを利用しようという気概が生まれるのである。

もっぱら俺とケンセイも、メインのクエストと、このリューンタウンのNPCのクエストをひと通りこなし、何が悲しいか、やはりモンスターを切るほどに刃毀れしていく武器の修理代の節約のために、鍛冶屋のオッサンに魚を釣って捧げていた。あげた魚の数は、俺とケンセイだけで30はくだらない。好感度上昇プレゼントの効果が、一時間に一回リセットされるあたり、なんというか、こいつ魚食いすぎだろと返ってきた修理後の自分の武器の匂いが心配になったりもしたものだが。


「さて、と。あと残すは協力クエか」

「男が2、女が2、じゃないといけませんってやつな」

「合コンかよ………」


そう、ひと通りクエストは終えたのだが。

爆速で40レベルになった今、ひとつだけ残っているクエストがある。

25レベルで解放される、リューンタウン近況の大聖堂制圧クエスト、である。

なんと協会への入場方法が、男2:女2のパーティでなければならないとのことだった。

これにはたいへん困った。誘おうにも、そもそもリューンタウンに陣地を構えるレベルに達している女性プレイヤーは少ない。恐らくあと5時間後とかならソロでも居るかもしれないが、女性が二人でわざわざ組んで、となると、探すのが難しい。

そもそもこの街に入ってすぐの場所で、大聖堂クエに行きたい男二人組が皆女二人を捕まえているという現状があった。女性からしてみれば、それなりに装備の整った男から誘われたなら、将来的に自分も行かないとと困るクエなのだ。首を振る理由もない。

その場で数少ない女性を取られ。現在、俺とケンセイができることといえば、釣りをしながらソロでリューンタウンに到達するプレイヤーを待つことだけである。ソロだと効率はあんまり良くないのがセオリーだ。


「俺らも出待ちするか?」

「アカネにしか興味がないもんで……」


と腕を組んで考え込むケンセイ。なんだその理由はと殴ってやりたくなったが、俺もナンパは苦手である。何て声をかけたらいいのかわからん。


「いくらなんでも早すぎんだよ……やっと来たと思えば怯えられてさっきは逃げられたし」

「そりゃお前、職業ごとの初期の街の後の道のりなんてみんななげーのに、やっと街だーってきてさ

40レベルが待ち構えててみろよ? ここ入ってくる条件がそもそも20レベ、その倍、しかも大剣持ち……俺が女だったら逃げるわ!」

「誰のせいでこんなレベルだよ。だから後回しにしなきゃよかったんだ……」

「そりゃ俺のせいだな~、しっかしその容姿! 役に立たねえな!」

「そりゃ、お前サービス開始から間もないのに、ここまでやりこんでるやつが、乙女ゲーに興味あるわけねえだろ……」

「あっはっはたしかに! どっちかといやあ、フッツーに萌えアニメ見てるタイプだろうなあ。あーあ美形の持ち腐れ……あ、ヒロシ」

「ん?」

「反復クエ、また行けるようになってる」

「お、とりあえず行っとくか。報酬うまいし」


今リューンタウンに到達している女性プレイヤーの少なさに嘆き、二人して頭を悩ませていると、反復クエが復活したようなので、クエストに出かけることにした。これは大義名分ではない、このやり取りが何回目かわからないとかもう言わない、俺とケンセイは待つことも苦手なのである。

リューンタウンで受けられる反復クエとは、小龍の翼、爪の採取、というクエストである、報酬は碧真珠と、後々属性付与の素材で使う貴重なアイテムだ。反復クエや、稀にボスモンスターからのドロップでしか手に入らない素材の為、回れる時に回っておくというのがセオリーである。


しかしこの反復クエも曲者で、相手が結構強い。

ヴィーナスがそもそもドラゴン討伐を目的としたゲームなのだが、ここでは俺達人間サイズよりも二回りほど大きい小龍と呼ばれるモンスターと対峙しなければならない。

リューンタウン近郊に居る小龍は、風属性を操るので、基本的に物理攻撃や地属性の魔法などが有効だ。

ケンセイが双剣、俺が大剣なので攻撃を加えることには問題無いが、龍の属性の敵は特に攻撃力が高く、少しでもくらうと体力をごっそりと持っていかれるので、動きに慣れていないと、防御力にさほど金を回すことができない低レベル帯は、死に戻りもザラなのだ。


ひとまず壊れる心配の無い限界まで強化した大剣を背負い、ケンセイと街を出た。



***



「っとお!」

「ギャオオオオオオ!!!!」


大きな叫び声とともに、小龍の背から翼がボトリと落ちる。オンゲの時は、そうグロいとは思わなかったが、こうして部位を落とすという行為をVRでやるのは、なかなかに心にクるものがある。

心の中ですまんと小龍に謝りつつも、翼が使えなけりゃあ、風属性の攻撃のブレスに、あとは爪だけ。


「――スキル・スラッシュ」


盾役としての立ち回りから一転して、大剣を振り降ろし、小龍の首を切断した。

小龍は絶命したのか、粒子となって消えていき、クエストで欲しかったアイテムだけがインベントリに残った。

クエスト欄にも完了と出ているので、あとは帰って報告をするだけだ。


「さすがにもう40だからなあ、次の街にも行けるレベルだしよお。相手見つけて、さっさと強いのと戦いてえ~!」

「まるで年齢みたいに言うよな、そんな都合よく現われりゃあ……」


「――――キャアアアッ!!!!!!」


「「…………あ」」


剣や槍、斧といった近接攻撃のプレイヤーが使えるスキル・ランニングで全速力で街に戻っていると、女性の悲鳴が聞こえた。思わず立ち止まる俺とケンセイ、街へ帰る方向とは逆、湖の近くに、紫色の巨大なオークが居た。本来ならオークは肌色だし、そもそも俺の半分ぐらいの身長だ。しかしあのオークは3メートルはゆうにある。つまり、レアモンスターというやつである。

前までは他者からの干渉を受けることができなかったプレイ方式だったが、オープンフィールドになったなら、話は違う。レアモンスターが存在するなら、他者が奪うことが、可能である。


「いやー全然出くわさねえからさ」

「いねえのかと思ってたんだよな」

「しかも女性が二人」

「見たところレベル17開放の花弁採取クエ」

「こりゃあれだ」

「一石二鳥」

「ってやつだよなあ、っと!」

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