意外な
子供関係の小話2個です。
【才能?】
その日はたまたまソルドウィンが遊びに来ていた。
「ほんっと小さいねぇ」
「まだ生まれて間もないですからね」
ベビーベッドを覗き込んでいるソルドウィンは、恐る恐るフェリスリーアの頬を触っている。レイティーシアは丁度別室で休んでおり、オルスロットとソルドウィン二人で面倒をみているのだった。
「やっぱりこの子、魔力強いね」
「そんなに、ですか?」
「うん、オレ並みにはあるんじゃないかなぁ」
「そこまで……」
生まれて間もなくでそこまで魔力が強い子とは、将来が楽しみであり恐ろしくもある。ソルドウィンと共にフェリスリーアを覗き込むと、微睡みから目覚めたらしい。
レイティーシアと同じ紫色の瞳を開いたフェリスリーアは、母親の不在を悟ったのか、ほにゃりと泣き始める。
「フェリス、よしよし、いい子だ」
「ぜんっぜん泣き止まないけど……?」
ぎこちなくフェリスリーアを抱き上げてあやすが、なかなか泣き止まない。
さっきミルクをあげたばかりだし、おむつも変える必要はなさそうだ。しかしご機嫌斜めなフェリスリーアは泣き止む気配はない。だからといって、レイティーシアを起こしに行くのも気が引ける。
もだもだとあやしていると、見かねた様子のソルドウィンが声を掛ける。
「ちょっとオレに抱かして?」
「……大丈夫ですか?」
「まぁ、親戚多いから。それなりに赤ん坊抱いたことはある」
「…………じゃあ」
かなりの葛藤の後、ソルドウィンへフェリスリーアを渡す。すると。
「泣き止んだ……」
「やっぱりかー」
ソルドウィンに渡した途端フェリスリーアは泣き止み、それどころかご機嫌に笑い出す。
あまりの落差に愕然とするオルスロットを他所に、ソルドウィンは苦笑を零す。
「魔力の強い子は、魔力を持つ人間が気持ちいいらしいんだよね」
「そんな…………」
魔力がほとんどないオルスロットは、床に崩れ落ちるのだった。
【はじめての】
フェリスリーアが生まれてから、オルスロットはこの小さなお姫様に振り回されっぱなしだ。幸せも勿論沢山貰っているが、混乱も山のように齎されている。
その混乱の中でも、コレは最上級の混乱だった。
「ショゥ~」
キャッキャと笑うフェリスリーアはソルドウィンに手を伸ばす。
間もなく1歳、というフェリスリーアがついに喋った。それは非常に喜ばしいのだが、その言葉がママやパパですらないなど……。ママなんかより遥かに発音しずらいだろうソルドウィンの名前を最初に呼ぶなど、衝撃以外の何物でもない。
愕然としているオルスロットを他所に、レイティーシアは苦笑しながらフェリスリーアに話しかける。
「フェリスは本当にソルドウィンが好きなのねぇ」
「姫さん、そういうもん!?」
フェリスリーアの第一声に苦笑していたソルドウィンは、レイティーシアの言葉に動揺した様子で声を上げる。
確かに結構頻繁に遊びに来ていたソルドウィンには、フェリスリーアもとても良く懐いている。何より魔力が気持ちいいのか、ソルドウィンが抱き上げるとフェリスリーアのご機嫌はうなぎ上りだ。
あまりのショックにソルドウィンに向ける視線に殺意が籠ってしまう。
「おいっ! 殺気向けんなよ!!」
「……気のせいです」
ふ、と殺意を散らしつつも、ソルドウィンを睨みつける。
「レイティーシアの子だからと、フェリスリーアを狙うのなら容赦しません」
「んな訳ないだろ! 赤ん坊相手にそんな考えるわけないって」
散々レイティーシアに執着し、フェリスリーアの魔力が豊富であるからと釘を刺せば、全力で否定される。いくら魔術バカでも、人間としての良識は弁えているらしい。
「それならば、良いです」
「あったり前だっての……」
げっそりと様子でソルドウィンはため息を吐いた。
数年後。
成長したフェリスリーアにソルドウィンが押し倒されるのは別の話。
ソルドウィンとフェリスリーアの年の差、23歳くらい。
多分、押し倒すのはフェリスリーア15歳、ソルドウィン38歳くらいかな?




