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嘘つきはだれ?  作者: 金原 紅
番外編
91/100

小ネタ的小話集

本日2個投稿してます(1個目は過去の活動報告に載せたものです)。

小ネタな小話を2個。

【呼び方】


 レイティーシアがチェンザーバイアット領から王都へ向かう旅の途中。

 日中の移動中、レイティーシアは馬車の中でオルスロットは馬と移動手段が分かれており、宿泊するホテルの部屋も別々で顔を合わせる機会も少なかった。だからこそ今まで先送りにしていた問題が、王都を目前にしていよいよ無視できなくなってしまった。


 ここまでの数日、馬車の中でしばらく悩んでいたのだが、レイティーシア自身では解消できそうにない。

 だから、明日は王都に入ると聞いたこの日、ホテルのレストランで共に夕食を取る際にオルスロットに問うことにした。


「その……ランドルフォードさま」

「……? どうしましたか」

「えぇと。申し訳ありません。私、こういったことに慣れていなくて……」

「一体?」

「その……」


 食事の手を一旦止め、レイティーシアを見返すオルスロットの蒼い瞳はどこか冷たい。その温度に委縮しながらも、ここの所の悩みを口にする。


「その、貴方のことを、どうお呼びすれば良いでしょうか?」

「え……」

「結婚証書を提出すれば私もランドルフォードとなるので、ランドルフォードさま、とお呼びをするのはおかしいですよね? そうなると、どうお呼びしたら良いかと……」


 思い切って悩みを打ち明けてみたのだが、オルスロットにしてみれば、大した問題ではなかったのだろう。


「好きになさってください」

「えぇ……」


 あっさりと、一番困る返しをされてしまった。そう思いながらも、食事を再開してしまったオルスロットに言い募るのは難しい。

 ひっそりと息を吐いて考え込む。

 この旅の間、他の人がオルスロットのことをどう呼んでいたか。記憶を掘り起こし、提案してみる。


「それでは……。ご主人様?」

「っ! 何を言って……!?」

「えぇと、他の方にならってみたのですが」

「止めてください、それだけは」

「え、でも……」

「それでは、まるで俺が貴女を金で雇っているようではないですか」

「あ……。そう、ですね」

「名前ではダメなんですか?」

「その……お名前でお呼びするのは、恐れ多くて」


 急に結婚することになった、王都で大人気の男性をいきなり名前呼びするのはレイティーシアにはハードルが高かった。そんなことを分厚いレンズの眼鏡の奥で視線を泳がせながら説明したレイティーシアに、オルスロットはため息を吐く。

 オルスロットの眉間には、深い皺が刻まれていた。そしてしばらく黙り込んだ後、口を開く。


「名前は難しい、というのであれば、旦那様、とでも呼んでください」

「旦那様……」

「それなら問題ないですか?」

「はい。ありがとうございます」


 その日の夕食は、何とも言えない空気がいつまでも消えなかった。




【ダンス】


 王家主催の夜会を目前に控え、レイティーシアは非常に憂鬱だった。


「どうしましたか、レイティーシア?」

「旦那様……。いえ、社交シーズンがもうすぐだな、と」

「それで、そんなにため息を?」

「申し訳ありません。その、実は……」


 心配そうなオルスロットに、非常に言い辛いが、レイティーシアは憂鬱の原因を告げる。


「私、運動神経が悪くて……。ダンスが、とても下手くそなんです……」

「ダンス」

「ええ。それに、あまりヒールも履き慣れていなくて、歩くのもやっとなのに、ダンスのステップを踏むのは……」


 切々と悩みを打ち明けたのだが、オルスロットは小さく笑ってレイティーシアに手を差し伸べる。


「苦手であるのならば、練習をしてみてはどうでしょうか?」

「えぇ……」


 前向きなオルスロットの様子に、断り切れなかった。

 しかしきっと、現実を知れば諦めてくれるだろう。そんな思いでオルスロットの手を取るのだった。


 そして始まったダンスのレッスンは、散々なものだった。


 一歩踏み出せば、オルスロットの足を踏みつける。もう一歩踏み出せば、逆の足を踏みつけ、さらに蹴りつける。

 ドレスの裾で足捌あしさばきは隠れるから、とあまり気にしないようにと言われても、慣れないヒールで動くこともやっとなのだ。オルスロットのリードに添って動いているだけのつもりなのに、狙ったように足を踏みつけていた。


「これは最早、一種の才能ですね……」

「…………嬉しくないです」


 苦笑を零すオルスロットに、レイティーシアは涙目だった。

 もちろん、夜会では全てダンスをスルーすることで、決定した。

初期の二人の様子がこんなで良かったのか謎です。

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