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嘘つきはだれ?  作者: 金原 紅
本編
13/100

レイト・イアットの仕事2

 ランファンヴァイェンから珍しい石を貰って、レイティーシアは浮かれ気味だった。この石を使えば、構想だけは出来ていた新しい魔道具が創れそうだったからだ。

 そのため、ここが貴族の女性が居るのに相応しくない、商業街の外れということを忘れていた。


 用事を済ませて店を出たレイティーシアは、マリアヘレナを伴い、周囲を気にすることなく道を歩いていた。すると――。


「レイティーシア様!」

「えっ……?」


 少し先から掛けられた男の声に、びくりと立ち止まる。そしてその声の主を探してみると、慌てた様子の金髪の騎士が駆け寄ってくる。緑色のたれ目が印象的な優男やさおとこだ。


「えっと、ハロイド様?」

「はぁ。レイティーシア様、このようなところで何をしていらっしゃるのですか? オルスロットはどうしたんです?」

「え……。旦那様は、お仕事だと思いますが?」

「ここは、治安は比較的良いですが、貴族の女性がいらっしゃるような場所ではないでしょう。しかも、何やら怪しいお店から出て来られませんでしたか?」

「ああ、ご心配をお掛けしました。…………あのお店は、伯父が懇意にしている方がやっているお店なんです。せっかく王都に来たので、ご挨拶に伺ったんです」


 ランファンヴァイェンの店から出たところも見られていたのは、正直失敗だった。確かにあのお店は外観が怪しい。そして下手に探られてレイト・イアットについてまで辿り着かれると非常に困ってしまう。

 未だに、レイティーシアがレイト・イアットであることは極秘情報なのだ。オルスロットの屋敷の人間にも、魔道具製作については説明したが、レイト・イアットであることは隠しているのだ。


 とりあえず引き攣りそうになる顔を取り繕い、もっともらしい理由を説明する。こんな時は、顔を覆う大きな眼鏡をしていて正解だったとつくづく実感する。


「そうですか……。しかし、女性だけで歩くのは心配です。お屋敷まで送らせて下さい」

「……しかし、ハロイド様もお仕事では?」

「警邏中ですから。貴族の女性のエスコートも、立派な仕事です」


 にっこりと笑顔で告げられる言葉に、少し首を傾げたくなる。それは、サボりではないだろうか。

 しかし、恐らく断っても引き下がってはくれなそうな空気のため、大人しく受け入れることにする。


「そうですか。では、よろしくお願いします」

「はい。では参りましょう」


 そしてハロイドに連れられた屋敷までの道のりは、第一騎士団の話を延々聞かされるハメになった。とりあえず、ハロイドの話を要約すると、第一騎士団は第二騎士団に比べて格段に素晴らしい、と言いたいらしい。

 わざわざ第二騎士団副団長の妻を捕まえて話すものではない、という思いは分厚いレンズの奥に隠してひたすら愛想良く相づちを打つ四半刻は、かなりのストレスと疲労の溜まる時間となった。

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