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4.鶴姫の作戦

前回までは 不思議な夢を見た梶原海斗はある日異世界へ飛んでしまい、鶴姫の率いる豊洲宮とよすのみやの軍に加入することになってしまった。しかし、海斗は戦場を知っているかのように動き、功績をあげ鶴姫の側近である五人将への勧誘と突然された...。

鶴の舞う空


4.鶴姫の作戦

漠然とした雰囲気のなかクロがとうとう重い口を開いた。

「お言葉ですが姫君、さすがにそれではほかの兵は納得するはずもありません。」

クロは鋭い目で海斗を見た。彼の低い声が陣中に響くと鶴姫以外全員うつむいた。しかし鶴姫はにやりと笑ってこういった。

「ほかの兵の説得方法はすでに考えてある。お前たちがよいなら、私はこれを公表したいと思うが?いいな?海斗。」

「俺は.....、分かりました。やります。」

「そうか。五人将はどうする?」

 ここででショウが海斗へ近づいて行った。ショウは海斗をまじまじと見つめて言った。

「なあ、海斗殿。お前が本当に異世界からきたって言う証明ができるなら、俺はお前を五人将に迎えてもいいと思うなあ。」

「証明ですか......。分かりました.......。そうですね.......」

海斗はしばらく考え込んだ後に、自分の世界の話をし始めた。空を飛ぶ乗り物があること、他の大陸の人々と交流をしていること、家にいながら遠い場所にいる人と連絡が取れること、テレビ、民主制政治、車、ロケット、天体、平等な教育が受けられる社会であること、など休みなく十分弱しゃべり続けた。ショウに話しているつもりだったのだが、他の五人将や鶴姫も釘付けになって聞いていた。鶴姫は瞳を輝かせながら興味津々に話を聞き続けた。

「あの欠ける月に行った人間がいるとは....すごい話です。」

「でんわ、なるものがあれば便利かもしれぬな。」

「ひこおきには乗ってみたいね。」

「みなが平等に学業に励めるとは立派な国だ!私も見習わねばな。」


 「これでどうですか?ショウ殿...。」

「すばらしいね。異世界とここがこんなに違うならきっと常人には思いつかない作戦も立ててくれそうだ。いいのではないか?海斗殿が五人将でも。」

「ショウ殿!それが最初から目的だったんですね....。」

「もちろん。」

ショウの意味ありげな笑みに海斗は思わず引きつった顔をした。それから風早、影光は首を快く縦に振ったが、クロは何も言わなかった。鶴姫は納得したものとみなし、大々的に兵を集めて公表することにした。

 「皆、此度の戦大儀であった。皆も疲れてると思うが、聞いてほしい。此度五人将の小五郎が打ち死にしてしまった。そこで、新しい将を紹介したいと思う。梶原海斗だ。」

辺りの兵は皆騒ぎ出した。名前のまったく知れていない彼が将になろうというのだ。必然的である。こうなるであろうと予測していた五人将も焦りを見せ始めた。その時だ。一人の男が前に出た。

「鶴姫様!お言葉ですが、私は長い間あなた様に使えてきました。その男より私がふさわしいと思います。」

鶴姫はにやっと意地悪そうに笑って言った。

「お前は確か....九郎といったな。私の意見に異論を唱えるのなら私を納得させてみろ。こいつと...戦え。」

九郎と呼ばれているこの男はうなずくなり剣を抜いた。海斗は鶴姫ににらまれるなり、ゆっくり剣を抜いた。周りの兵はざわつきながらもこの二人の様子を見ていた。

 海斗はじりじりと間合いをつめた。すると、九郎はそこで一気に切りかかってきた。海斗はそれを受け止めた。鋭い音が当たりにこだました。九郎は力強く幾度も打ち込んできた。海斗はすべて受けきった。そして相手の剣と自分がわずかに離れたとき、海斗は体勢を低くし、一気に走り、後ろを取ろうとした。九郎はあわてて剣で受けようとすると海斗は剣をぱっと地面に置き捨てた。九郎はその剣に一瞬惑わされた。海斗はその一瞬に思い切り足元に蹴りを入れ、剣を拾いよろめいた九郎の喉元に刃を向けた。その時の海斗の殺気だった目に、九郎は自身の敗北を確信した。

 「そこまで!」

鶴姫の声に海斗ははっとし剣を収めた。九郎は悔しそうな顔を横に向けた。

「他に!異論のあるものは....?異論のないものは天に剣を掲げよ!!!」

兵たちはこの光景を目の当たりにしたせいか、歓喜をあげながらまっすぐと剣を天に掲げた。

海斗は一礼をし、後ろへ下がった。

 すれ違い様に影光がそっと海斗に聞いた。

「なぜ....あなたは危険を冒してまで五人将になろうとしたのですか?」

海斗はそっと答えた。

「俺には....ほかに行くところがなかったから....。」

影光はそう答えた海斗のさびしげな背中を見送った。

続く

次回 クロや鶴姫の抱えるものとは?海斗の戦略とは?少しずつ物語は動き出す―

   

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