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1.運命の始まり

鶴の舞う空


―暗く何もない不思議な空間 そこで毎晩君に出会う。―

「君は誰?」

少女は長く黒い髪をなびかせながらやさしく君は微笑み、君は言う。

『私はあなたの運命の上を歩む者。そしてあなたを呼ぶ者。』

「君の...君の名は....?君は一体....?」

『私の名はつ......ひ...!』


1.運命の始まり

 「!!.......またあの夢か」

梶原海斗かじわらかいとははっと目を覚ました。最近何度も同じ夢を見る。髪の長い同じ年頃の少女が何かを告げる夢。そしてそれと同時にどこか懐かしいような気持ちになる不思議な感覚を海斗は覚えていた。

 「おはようございます。梶原先輩!」

「おはようー!」

「きゃあっ!ねえ、梶原先輩に挨拶されちゃった!」

学校に着くと海斗は後輩の女子に囲まれていた。周りの男子はうらやましがっていたが当の本人はまったく気にしていない様子だった。

「おう!カイトおはよー。」

「あ、島崎おはよ」

「お前毎度の事ながら朝からもてんなー。」

「........そうなのか?」

この有様である。海斗は女子にまったく興味がないようであった。海斗は高校から剣道を始めたのだが、今は剣道部主将の高校二年生。勉強もでき運動も全般できる青年であった。彼を女子は彼に憧れ、男子はうらやましがった。

「なーカイト、お前中学のときフェンシングしてんだろ?何で剣道はじめたの?」

「.....なんかやらなきゃいけないような.....そんなきがして....。」

「?」

その一方で海斗にはどこか不思議で一瞬近寄り難い雰囲気になることがあった。遥か遠くを見つめるような目。親友の島崎はそれが不思議でならなかった。

 三時間目ー教室から物理室に移動することとなった。島崎と海斗は二階の渡り廊下を通ろうとすると海斗が壁にかけてある大鏡の前で不意に足を止めた。青い縁の大きな鏡。海斗はこのときなぜかこの鏡に吸い寄せられるような衝動に駆られた。それは初めての感覚であり、足は動かなくなった。

「カイト?どうしたんだ?」

「いや....なんとなく....。」

「へんなやつ。.....ってあっ!あれ!!見ろよっ」

島崎は突然近くを歩くクラスの女子を顔を赤らめて見た。

「あれは...確かうちのクラスの和泉鏡香いずみきょうかだっけ?お前、あいつ好きなの?」

「だって美人でおしとやかーって顔してるじゃん!超タイプ!鏡香ちゃーん!」

島崎は和泉鏡香のほうへ行ってしまった。海斗は島崎をまったく気にせず鏡を見つめていた。海斗は思わず鏡に右手を添えた。すると鏡が突然真っ暗になった。そして―

『私はあなたの運命の上を歩む者。そしてあなたを呼ぶ者。』

真っ暗な鏡にいきなり夢に出てくるあの少女が移りこんだ。海斗はあまりにも驚いてしばらく声が出なかった。

「いっ.......一体....」

海斗は鏡に添えた右の手から徐々に鏡の中に引き込まれていった。

「う、うわああああっ!だ、誰か!!島崎た、助けてくれっ!!」

鏡が海斗の体を半分ほど飲み込んでしまったとき、やっと島崎が気づいた。あまりにも信じ難い光景だったのだが、島崎はあわてて駆け寄ろうとした。しかし、島崎に和泉が言った。

「どうしたの島崎君?あれはただの鏡じゃない。早く物理室にいきましょう?」

和泉がにこっと笑うと島崎はぼうっとしたような目になった。そして海斗のほうを見てはっとした。

「あれ?俺なんであんな鏡を見てたんだっけ...?行こうか、鏡香ちゃん。」

島崎と和泉は何も見なかったような顔をして物理室のほうにいってしまった。なんど叫んでも誰も彼を見向きもしなかった。誰も海斗の声が聞こえず、姿が見えないようだった。

海斗の体は結局鏡に吸い込まれきってしまった。

 鏡に吸い込まれた彼の体は真っ暗な空間を流されているようだった。そう、まるで夢に出てくるあの空間の中のようだった。ここには音も壁も天井もなかった。海斗はあの夢がかかわっていることを確信した。

『....って』

海斗はあの声を、いつも夢で何かを告げようとする少女の声を後ろから聞いた。はっと首だけどうにか振り返るとあの少女おではないもっと幼く小さい少女が泣きながらこちらに手を伸ばそうとしながら叫んだ。

『待って、行かないで、行かないで!!.......かっ!』

海斗は思わず手を伸ばし、幼い少女の手をつかもうとしたが、海斗の手は届かず、再び流れに流されていった。



 「んっっ.....?あれ.....ここ.....。」

海斗がゆっくり目を開けると手錠がついていることに気がついた。落ち着いてあたりを見回すと牢屋のような場所に寝ていたようだった。そして後ろをふりかえると鎧を着て、槍を持った男性が立っていた。

「.......えっ?」

「目が覚めたか、怪しいやつめ。さては貴様、戸賀崎国とがさきのくにの間者だな?!」

「えっ....あの...俺っ....。あ、あの、ここはどこですか!?今何年何月何日ですか?!」

「なにをふざけたことを言っているんだ!今は永節8年3月11日、ここは豊洲宮とよすのみやだろうが!」

海斗は聞いたことのない年号や国名、理解できないこの状況に完全にパニックになっていた。制服と鎧、東京と豊洲宮、信じられない仮説だがここは異世界ではないだろうかという結論にうすうすたどり着いた。そんな完全に焦りきった海斗を見て鎧の男はますます怪しがった。

「ぼ、僕...信じられないかもしれないんですけど....い、異世界から来たみたいなんですよ。」

「な、なに言ってるんだ貴様は?!」

「僕にも信じられないんですけど多分本当なんです!お、俺東京から来たんです!マジで!!」

「トウキョウ...?なんだそれは?お前の怪しい話など信じられるか!!」

 男性と口論をしていると二人の足音が聞こえてきた。

「ほお....ずいぶん威勢のいいやつだな。」

二人の人影が見えると、鎧の男はあわてて地面に槍を置き、膝をつき、頭を下げた。人影の正体は一人は20代ぐらいの軽装備の青年と同じ年頃の白い振袖に帯を巻き、脇に剣をさした少女であった。しかし、少女は普通の少女ではなかった。

「あ、あなたは!」

「ほう、異世界から来たと騒ぎ立てながらも、わたしの顔に覚えがあるのか?」

「ゆ...夢であなたが僕に何かを告げようとしたんです!『私はあなたの運命の上を歩む者』とぼ、僕に告げたんです!」

「おもしろい.....じつに面白い....。お前名は?」

少女はにやっと笑い、長い黒髪は風になびいた。隣にいる青年は何も言わずに見ていた。

「....梶原海斗....。あなたは.....?」

「私は豊洲宮の大将軍二の姫、葦原鶴風紫あしはらのつるかぜむらさき姫。鶴姫と呼ぶがよい。さて.....お前をどうしてくれようか....。」

すこし意地悪そうに笑う鶴姫を見て、海斗は息を飲んだ。

続く

次回 鶴姫の口から出た命は海斗の運命を導くものとなる―


次回もぜひお願いします。冬休みなのであげられるだけあげます。

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