第2話 「御呼びだてして申し訳ございません。」
呼んでくださり、ありがとうございます。
かつて勇者には、五人の仲間が居た。
一人は戦士。仲間の為に、勇ましく敵に突撃する者
一人は魔法使い。呪文を唱え、敵を蹴散らす仲間を安心させる者。
一人は神官。神に祈りを捧げ、仲間の傷を癒す心優しき者。
一人は騎士。主に忠誠を誓い、主の盾になる誠実な者。
一人は格闘家。己が拳を鍛え、その拳を奮い仲間の道を作る活発な者。
それら五人を引き連れて、勇者は魔王を倒し、そして勇者はその後も旅を続けて、やがて落ち着いた場所を見つけた勇者が、作った国がここ【勇者の安息地】なのである。
つまり、この国の王は勇者の末裔であり、そして勇者の仲間の五人は、《五光》と呼ばれ、今の五つの公爵家の先祖だということだ。
《勇者》の子孫であり、【現国王】である『サラブラス・フロート・エルサ』率いる、『エルサ家』。
〈戦士〉の子孫であり、【現当主】である『ララシーク・ピピロ・サロスト』率いる、『サロスト家』。
〈魔法使い〉の子孫であり、【現当主】である『シリウス・ラズ・ニラコル』率いる、『ニラコル家』。
〈神官〉の子孫であり、【現当主】である『フローラル・ロルロ・ロストロス』率いる、『ロストロス家』。
〈騎士〉の子孫であり、【現当主】である『ガイザス・ギーラ・キラスト』率いる、『キラスト家』。
〈格闘家〉の子孫であり、【現当主】である『ガテツ・ヨシマキ』率いる、『ヨシマキ家』。
以上の五つの公爵家が、王の次に偉く、権力を奮い捲れる貴族だ。この五つの公爵家はこう呼ばれている。
【五光公爵家】、と。
―――余談だが、勇者の引き連れていた五人。戦士、魔法使い、神官、騎士、格闘家は、全員女性らしいよ。
……なんと言うか、
その……
リア充爆発しろ☆
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さて、マーサ伯爵家から逃げ出した俺こと、【カイル・ザラ・レーラル】は、我が母こと、【マリア・アン・レーラル】と共に、定食屋で、食事を終えた後だった。
「カイル、やっぱりマーサ家に戻りましょう?今ならきっと間に合うわ。」
とわいえ、『あいつ』に頼んで『あの方』を呼んだんだが、やれやれ。……出来れば、この手は使いたくなかった…訳ではない。
「カイルゥ…、聴いてるの?」
『使えるては使え。』これは今は亡き、父さんが残した言葉だ。だからこそ、奥の手を使うのを躊躇しなかったのだけれど。
「……カイルゥー…。」
あぁ、誤解してもらっては嫌なので、言っておこう。トーンは俺の父親ではない。俺の父親は俺が三歳ぐらいの時に死んでしまっている。そんな父の名は、『アウベクト・ラタシス・マーサ』。かつては【王国の要】とさえ言われた。《エルサレム騎士団独自攻撃部隊総隊長》という。めっちゃ長い肩書きを持っていた人だ。兎に角、滅茶苦茶に強く、父さんが出撃したら絶対に勝つとさえ言われる程に、マーサ家も父が、一代で築き上げた貴族なのだ。
そんな強かった人が何で死んだかと言うと。
単純に、毒で毒殺されたのだ。父があっさりと死んでしまって、マーサ家は大慌て!直ぐに本妻(母さんは冒険者だった為に、妾だった。)が政略結婚の為、アッチコッチに結婚の申し出を配りまくり、そうして結婚したのが、『トーン・?何だったけ?』だ。
「…………。」
そういえば、あの時はトーンに母さんを汚させないと、幼い事をいかして、母さんにベッタリくっ付いていたっけな。トーンが母さんを部屋に連れ込もうとした時は、母さんに一緒に寝るようにせがんだり。
「………ぐすん……。」
「母さん。諦めて下さい。」
「ひゃあ!」
そんなどうでもいいことを考えてると、母さんが涙ぐんでた。……まぁ、話かけられてたのは知ってたんだけどね。
「もう!カイル!ちゃんと聞いていたのなら返事をしなさい。」
母さんが怒ったように…というか怒ってるんだけども、兎に角、机を叩くと立ち上がって俺を睨む。……ごめんね、全然怖くないや。
「無視した事は謝ります。…しかし、それは母さんが下らない事を言うからです。」
「……下らない事とはどういう意味…。」
「『マーサ家』に戻ろう、ということが…」
そこまで言おうとして、母さんに頬を叩かれた。その音に釣られて周りの客もこちらを向く。
「下らないわけないわ!私はカイルの将来を思って… 「言っている、そう仰られるのですね」 …そうよ。」
確かに、『マーサ家に戻る』というのは、俺の事を思って言っているのだろう。母さん一人だけならば、元冒険者というので、稼ぐ事は出来るし、母さん一人ぐらいなら生きていけるだろう。……《カイル》は荷物でしかない……《普通ならば。》
「ならば言わせて貰います。巫山戯るな!!あんな男の言いなりになる母さん何て、そんなの絶対許せない!!そんな事になるなら死んだ方がましだ!!!」
「カイル!!」
「母さん!俺は母さんのお荷物じゃないんだ!!だから、母さんは絶対にあんな男に渡さない!!!」
「っく!っうぅっカイル……。」
「母さん!俺はこの二年間で色んな事を学んだんだ!!それこそ、父さんと同じぐらいに!!!」
「……馬鹿ねぇ、そん…な…わけ…な…いじゃ…ない…。」
母さんは堪えきれないといったふうに、泣き崩れる。そんな母さんを優しく抱き締めて、宣言するように言う。
「……だからね、死んだ父さんの分まで、俺が母さんを守るから。」
「うっう、ぐす、うん…うん!」
母さんは泣きながら肯定する。……俺は卑怯な男だ。最愛の息子が居なくなって、精神的に弱まった時に強引に『マーサ家』、いや、『トーン』から引き剥がしたかったんだ。勇者になるのも、地位を上げて母さんを『トーン』から引き剥がしたいと思ったからだ。……だからこの、二年間という短期間にここまで強くなれたんだから。
「母さんは、一人で抱えすぎだよ。ちゃんと俺を頼ってよね。」
「いいぞ!坊主!!母ちゃんを守ってやれ!!!」
「カッコいいぞ!!」
「うう、泣かせるじゃねぇか!」
俺が言い終えると、他の客から拍手や応援を貰った。……うん、なんと言うか。
―――そういえば、ここ、定食屋だった。
「ふぅ~やれやれ、出にくいですね。」
その一声で、定食屋の声が、音が、全て静まった。……いつの間にか、賑やかな街並みも気付いたら静かになっている。
俺は母さんを優しく抱き締めたまま、立ち上がって、声を発した相手を見る。
「久しぶりだね、カイルくん。」
「えぇ、久しぶりですね。『シリウス』様。」
俺は頭を下げると、やっと気付いたのか、母さんも『シリウス』様を見る。
「え…!あっあ!『シリウス・ラズ・ニラコル』様?どうしてこちらに!?」
母さんが、慌てふためいた感じで『シリウス』様を見る。そんな母さんの姿を見て、『シリウス』様は柔らかく笑うと、俺の方を見て、口を開く。
「くすっ、落ち着いて下さい。……そこにいるカイルくんに呼んで頂いただけですから。」
「ええ。」
「御呼びだてして申し訳ございません。」
俺は頭を下げた。……この人は苦手だから、呼びたくなかったんだよなぁ~。
「いえいえ、おきになさらず。『恩人』には恩を返す。これが私の《主義》ですから。」
そういってシリウス様はにこりと笑った。
ぐだぐだな小説ですみません。……やっぱり寝る前は誤字が酷い。
後、《五光公爵家》にも、勇者の血は流れています。つまり、勇者は五人の仲間と子をもうけていたのです。……リア充爆発しろ☆