第1話 「イママデオセワニナリマシタ(棒読み)」
呼んでくださり、ありがとうございます。
「はぁ~、帰って来ちゃったな~。」
今盛大に溜め息を吐いた俺こと【カイル・ザラ・マーサ】は目の前にある。【マーサ伯爵家】の…まぁ自宅だな。
兎に角、憂鬱だった。―――所で、憂鬱って【憂鬱】って読んだらカッコいいよね。…えっ?知ってた?
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「カイル・ザラ・マーサ!ただいま戻りました!!」
俺は玄関の扉を開けると、大声で叫んだ。何故かと言うと、カイル…いや俺何だけども、誘拐《されたように》家出したんだよね。だからほら、今俺の格好はボロボロのズタボロ、まるで命からがら逃げ延びた、奴隷みたいな格好をしてるのだけど。―――もちろん、これにはちゃんと理由がある。っと!誰か来たな。…多分、というか絶対に母さんだな。
階段からスゲー爆音が聴こえてくる。きっと母さんが急いで階段を下りているのだろう。母さんが来るまで玄関の所で待っていたら、案の定、やっぱり母さんがこちらに駆け寄って来て、しまいには抱き付かれた。
「っっ!カイル!カイル!!……あぁ、無事だったのね。」
母さんは俺の無事を、というか俺の存在を確認するように強く抱き締める。……痛い、が、これだけ心配させたのだから、甘んじて受けよう。―――それに、俺の事を心配してくれるのは、マーサ家の中で、きっと母さんだけだし。
「母さん…、痛いです。」
「ごめんねカイル、…でももう少しだけ、このままでいさせて頂戴。」
母さんはそう言うと、先程よりも力を緩めて、しかし、決して俺を離さずに、俺の事を抱き締め続ける。
「母さ 「ふん。今頃帰って来るとはな。……別に、このまま帰って来なくてもよかったのだが?」
……。今俺が喋ろうとしたのを遮った、いや、親子の感動の再会をぶち壊した野郎の名前は、【ザーロン・フィン・マーサ】。俺の腹違いの兄だ。
「っっ!ザーロン!」
「あ?まだ居たのかよ?『マリアさん』。やれやれ、母親が家から追い出される時に帰って来るとは、カイルも可哀想になぁ♪」
母さんがザーロンを睨み付けると、ザーロンはへらへらした顔をして、馬鹿にしたようにこちらを見下しながら言った。……うぜぇ。
!?そんなことよりも、今何て!?
俺が、ザーロンの言った、「家から追い出される。」というのを聴いて疑問の目でザーロンを見ると、ザーロンは厭らしさたっぷりの顔をして
「くはははは!!…カイル、教えてやるよ。お前の母親は、いや、お前もか、お前ら二人は、『マーサの名を捨てて』、ここから『出ていくんだよ。』」
「何を言って!?」
『そうだ。マリアはこの館から出ていくのだ。』
俺がザーロンに意味がわからないといった顔をして、ザーロンに叫ぶと、今度は違う誰かの声が聞こえた。―――いや、この声は、こいつの声は聴きたく無い。
俺がザーロンの後ろの方に目を向けると、そこには、俺が最も嫌いな人間。『マーサ伯爵家現当主トーン・ミトロ・マーサ』……俺の義父が立っていた。
「マリアはなぁ、儂の《命令》を聞かなかったのだ。」
トーンの声を聴いて、俺を抱き締める母さんの肩が震えた。―――あぁ、嫌だ。聴きたく無い。
俺は耳を塞ぎたかった。今直ぐにでも、怯えている母さんを連れて逃げ出したかった。……でも、聞かねばならない。何故母さんがこんなにも怯えているのかを。
「その《命令》というのはなぁ。」
トーンは厭らしい目で母さんを見る。
―――やめろ。
「マリアにだなぁ。」
トーンは母さんの身体を舐めるような目で見る。
―――聞くな、まだ間に合う。
「儂に《奉仕》をしてもらおうかとおもうてのぉ。」
最早トーンには、俺何て眼中に無いんだろう。俺はトーンの言う《奉仕》の事を想像して体から、ゾッと血の気が引いた。
「……やります。」
「えっ?」
俺がゾッとしてると、母さんはトーンの方を向いて、はっきりと言った。いやいやいや、母さん何言ってんだよ。
「ほお。」
トーンは、厭らしい目をしたまま母さんを見る。
「ちゃんと、《奉仕》しますので、…マーサ家に居させて下さい。」
弱々しく、母さんはトーンに向かって頭を下げる。そんな母さんを見たトーンは、尚更愉しそうに、母さんを見下す。
「うん、もう無理。」
気付いたら俺は、行動していた。
「えっ?カイル何を?」
母さんの手を引いて、母さんの部屋にいった。
「カイル!待って!」
先ずは母さんの荷物(既にまとめられていた)を空間魔法で空間の中にいれ。
「!?カイル今のは!いやそれより、魔法が使えるの!?」
次に俺の部屋、っても写真とかそういうのを同じく空間魔法の空間に入れる。
そしてトーンやザーロンをの横を横切って、玄関の扉の前に立つと、トーンに頭を下げる。
「イママデオセワニナリマシタ。」
……棒読みである。
「ちょっとカイル!!離しなさい!!」
暴れる母さんを引き摺り、マーサ家を出る。……甘いな母さん。2年間の修行は伊達じゃない。
「待たんか!!カイル!!」
後ろから、トーンの声が聴こえたが、無視して進む。やれやれ、これからどうしようかな。
「カイル!!ちょっと待っ!痛い!足痛い!」
暴れる母さんをお姫様抱っこをして、歩く。
今度は、降ろせと母さんが叫ぶが、知らんぷりだ。
やれやれ、いきなりだが、『あいつ』に頼るとしよう。
カイルはマザコン設定です。