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銘柄コード1008

 食器を流しに置くと、後片付けもせずに彼は自室へ急いだ。すぐさまノートパソコンのスイッチを入れる。そして、新しいゲームソフトを買ってもらい、自宅で急いで包みを開ける子供ようにわくわくしながら、立ち上がるのを待った。こんな気持ちになるのはヲタク活動をやっていたとき以来で、久々であった。数分後、パソコンが起動するやいなや、インターネットブラウザを立ち上げ、googleでキーワードに「株」と入れてエンターキーを連打する。最上位にヒットしたのはヤホーファイナンスという、日本の証券取引所に上場しているすべての企業の株価を調べられるサイトであった。個人投資家が、個別の株についての自らの予想を書き込んだり、情報交換をしたりする掲示板も用意されている。3chと並ぶ日本の個人投資家が利用する掲示板の双璧をなしているい。彼は、誰もがよく知っている任天堂の株価を何気なく検索してみた。2011年11月12日の昼過ぎ、株式市場ではいつものように取引が行われ株価は刻々と変化していた。表示された任天堂の株価は1万2000円台をウロウロしていた。

 この年代の少年少女は皆そうであったように、彼も小中学生時代にポケモンに熱中した口であった。大ヒットしたDSやWiiはもちろん所有していた。マリオやゼルダといった任天堂キャラクターが活躍するゲームは、当然いくつもプレイしている。振り返ってみると、友達と一緒にゲームをすることがいかに幸せだったかが、今となっては痛いほどよくわかった。

 楽しかった頃の思い出が蘇ると、もう彼は任天堂を買うことに決めていた。彼の貯金は手付かずであった。1万2000円なら彼の貯金で10株も買える。任天堂はきっとこれからも多くの子どもたちを魅了し続けることを考えると、億万長者になることは意図も容易いことであると思われた。

 しかし、どうやって株を買うのか彼にはわからなかった。まさか、大型スーパーに押されてどんどん廃業に追いやられている八百屋が、サイドビジネスとして始めているわけでもあるまい。どこに行けば任天堂の株を買えるのか。株と縁がない世界で生きてきた彼がどうして知っていようか。けれども、現代は便利なもので、「株 買い方」とGoogle検索するだけで解答は一瞬で得られるのだ。この時、こんなにも便利なGoogleの株を買う、という思考に至らないのは実に不思議なものである。

 検索すると株式投資入門というサイトが目についた。その項目をクリックすると、証券口座の開設の仕方というページが表示される。彼は、そこでやっと証券会社が株を取り扱っているのだと気づいた。興味がなくともCM、雑誌、新聞といったあらゆるメディアで膨大な広告をしている証券会社を知らないはずはない。なるほどと思いながらページを読み進めていくと、ネット証券口座が取引手数料も安く、自宅から株を売買できるので便利だということがわかった。その中でも手数料が安く、株式を発注するツールが使いやすいという理由で、そのサイトのイチオシになっていたSBS証券に口座を開くことにした。

 名前や住所等の個人情報を入力し、彼は証券口座の開設手続きを完了した。開設料は無料であり、それどころか開設して3ヶ月以内に10万円以上の取引を行うと3000円のキャッシュバックをもらえるようだった。口座開設の際に、証券口座への送金に便利と書いてあったSBS銀行というネットバンキング口座も同時に開設した。彼の株式投資デビューの第一歩であった。

 3日後、SBS証券から届いた書類に印鑑を押し、プリンタでコピーした保険証と一緒に返信用封筒に入れた。まだ、外に出る気にはなれないため、買い物に行く母にその封筒をポストに投函してもらうことにした。

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