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銘柄コード1005

「えぇぇえええええええええええ」

 スタジオの観客からは驚嘆の声があがる。100億というのは観客の人々にとってあまりにも大金で、想像がつくものではなかったからである。もちろん、現在この番組を見ている親子にも想像がつかなかった。ただ、生きるに不自由しないお金であることだけはわかった。

「100億ってすごいねえ。ちょっとでもくれればうちのローンも払えるのだけど」

「うん…」

 母親の月並みな感想に、彼は気のない返事をする。目はテレビに釘付けであった。株で100億も稼げれば、あんな思いをして働かずに済む。彼の頭はそのことでいっぱいであった。番組の司会を務めるヤモリ(守谷一成)が、100億儲けた男に質問していく。

「お名前は?」

「ikiruと申します」

 声はボイスチェンジャーで変えられており、ニュース番組のインタビューに匿名で答える事情通のようであった。両サイドには、スーツを着てサングラスをかけた黒人のSP二名が、護衛についている。大金を持つ人はセキュリティも考えなければいけないから大変だなと彼は考えたが、薄茶色のポロシャツと緑がかったグレーのスラックスという服装は至って質素に見え、使い切れないほどお金があるのだからもっと高い服を買えばいいのにとも思った。

「おいくつなんですか?」

「33歳です」

 その若さに観客は再び沸き返る。母親もそれを聞いて驚き、スプーンの動きが止まっていた。彼は、若くても大金を稼ぐ秘法があるのかもしれないと期待を胸に膨らませ、目を輝かせていた。

「お若いのにすごい!株はいつから?どれくらいの金額で始めたんですか?」

「20歳の時に始めました。額は30万円ですね。仕事を始めてからは生活費の5万円以外はすべて投資に回しました」

「1ヶ月五万円?大変な節約生活ですねえ。若手芸人みたい。けど、そういう努力があって、今があるんでしょうね。何時ごろから株で儲けられるようになったんでしょうか?」

「24歳の頃からですね」

「そこからするすると今の金額まで?」

「そうですね。そこからはずっと勝ち続けてます」

「今までで1日に最高どれくらい稼いだんですか?」

「6億です」

「ろ、六億ですか!どひゃー」

 年末ジャンボを当てるような金額を一日で稼ぎ出すという発言には、芸能界の重鎮として何億も稼いでいると言われる司会者も面食らったようだった。スタジオのボルテージも最高潮である。テレビの前の親子はあまりのことに言葉を失った。

「一体どうやって一日で6億も?」

「えっと、ある株に証券会社が61万円で一株売りを出そうとしたんですが、誤って1円で61万株売りという発注をしたんです。そのせいで、一気に株価が値下がりしていたの見て、思い切ってたくさん買いました。誤発注だったので、その後すぐに値が戻っていって、そこでうまく売り抜けたら6億でしたね」

「そういえば、そんな話ニュースで聞いたことありますねえ。それを買ってすごい儲けた人もいたって。あなたなんですか?」

「いや、知り合いですけどそれはまた違う人ですね」

「なんと、他にもそんなすごい人がいるんですか。世の中広いですねえ」

 それを聞いた時、彼は自分にもできるのではないかと考えた。一人だけなら宝くじと同じように運頼みかもしれないが、100億男の話を聞く限り、最低二人はいるのだ。しかも、知り合い。それは偶然じゃなくて、株でお金を稼ぐ方法があるということを意味しているのではないだろうかと。


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