下三郎と金之助
蜜芋の匂う城下町
太平の世、城内のあらゆる厄介ごとを押し付けられる二人の下男がいた。口八丁な金之助と、調子の良い下三郎である。
今日も今日とて、下三郎の食い意地が引き起こした下等な危機。しかし彼らの武器は、土下座の体勢からでも繰り出せる出まかせの舌先三寸だった——。
「下三郎、貴様また城下の焼き芋屋に並んでいたそうだな!」
殿様の怒声が、静かな城内に響き渡った。
下三郎は平伏しながら、心の中で盛大に溜め息をつく。彼の役職は「下男」。しかし、なぜか同じ下男の**金之助**と共に、城内のあらゆるトラブル処理を押し付けられる毎日だった。
「申し訳ございません、上様。ですが、あの芋は実に蜜が乗っておりまして……」
「黙れ! 申したであろう、我が城の品位に関わると!」
横で一緒に平伏していた金之助が、すっと顔を上げた。
「殿、お言葉ですが、下三郎めが焼き芋を買ってまいりましたのは、すべて殿の『極秘任務』を果たすためでございます」
「……ぬ? 極秘任務とな?」
殿様が首をかしげる。下三郎は驚いて金之助の顔を見た。そんな任務、聞いたこともない。
金之助は至って真面目な顔で続けた。
「はい。城下の民が何を好み、いかなる暮らしをしているか……それを探るには、行列に並ぶのが一番にございます。下三郎はその身を挺し、二時間も寒空の下で『庶民の味』を分析していたのです!」
「ほ、ほう……! さすがは下三郎、そこまで深く考えておったか!」
単純な殿様は、一発で納得して感心し始めた。下三郎は間髪入れずに合わせた。
「は、はい! その分析結果によりますと……本日の焼き芋は、皮まで香ばしく完璧な仕上がりでございます!」
「よし、ならばその分析結果を、余の部屋へ運ぶのだ!」
「ははっ!」
殿様の部屋を辞したあと、廊下で下三郎は金之助の肩を叩いた。
「助かったぜ金之助、ナイス口八丁だ!」
「気にすんな。で、俺の分の焼き芋はどこだ?」
「……え?」
「おい下三郎。まさか分析と称して、一人で全部食ったんじゃないだろうな?」
静かな廊下に、今度は金之助の怒声が響き渡った
【了】
『下三郎と金之助』をお読みいただきありがとうございます!
食い意地が張った下三郎と、とっさにハッタリをかます金之助の、どこか憎めない腐れ縁なふたりのやり取りを楽しんでいただけたら嬉しいです。
次回もこの凹凸コンビが城下町で巻き起こす(そして口八丁で乗り切る)ドタバタ劇をお届けできればと思っています。評価や感想などいただけますと執筆の励みになります




