オトコが泣くところを見たい
今日は月曜。月曜真っ黒シリーズで……
相変らず酷いオンナのお話です(^^;)
私が課長に就任した2年前の夏、休日のショッピングモールで『中村』を見掛けた。
隣に奥さんが居て、肩車した子供にシャワーミストを浴びさせていた。
子供は歓声を上げながら両足をバタバタさせ、道行く人々は蹴られまいと彼らを避けて歩いていた。
まったく何という能天気!!
こっちは休日返上で、ウォータープルーフのアイライナーが流れてしまう位の汗をかきながら得意先回りと市場調査で駆け回っていると言うのに!!
当時から出来ない部下の筆頭だった中村に対し、私はずっと“機会”を窺っていた。
そして課全体では予算に対し累計105%、かつ前年比8%の伸長を達成し、上半期を終えた今!“時”は訪れた。
私は中村を会議室へ呼び出し、問い質す。
「あなた、前月と今期累計での達成率は?同月及び上半期の伸長率推移は?私が赴任した前年からでいいわ!」
答えに詰まる中村に私はため息をついて見せる。
「そんな事を考える必要も無いくらいの達成率と伸長で、課や会社に貢献しているわけでは無いわよね!」
「……はい」
「それどころかあなたが担当したところは軒並み数字を落とし続けている。これをどう考える?」
中村は無言だ。
だから代わりに言ってやる。
「ウチの課にあなたは不要だわ」
今頃になって縋る様な目をしても遅い遅い。
もうとっくに“内堀”は埋め尽くされているのに、相変らず呆れるほどの能天気!
「あなたの身の振り方だけど……全国くまなく訊ねてみたら苫小牧の配送センターだけだったわ。あそこには社宅も寮も無いけれど……家族で行くにしても単身でも、ここよりは家賃相場は安いでしょうね」
「どうか!何とか!ここに置いていただけないでしょうか?下期は必ず達成しますから!」と往生際の悪い中村に私は言ってやる。
「そう言うのを“空手形”と言うのよ!あなたにそんな信用があるわけないじゃない。 それから退職するなら苫小牧でしてね。退職3か月前までに申し出るのがルールなのだから」
握り締めた拳をブルブル震わせる中村。
万一の場合に備えてのセルフディフェンスもきっちりシュミレーション済みの私は余裕の笑みを湛え、野良犬でも追い払う様に手でシッ!シッ!とやると、中村はポロポロと涙を零し始めた。
ああ!!これを!!
私は見たかったんだ!!
本当はもっと泣かせてやりたかったのだけど……
「失礼します」も言わずに飛び出して行った中村の様は監視カメラにしっかりと映っているだろうから、またネタに使えそうだ。
その夜、自宅で飲んだ祝杯は想像以上に美味で……私は中村の泣き顔を何度も脳内再生して楽しんだ。
おしまい
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