表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

オトコが泣くところを見たい

作者: 黒楓

今日は月曜。月曜真っ黒シリーズで……


相変らず酷いオンナのお話です(^^;)

 私が課長に就任した2年前の夏、休日のショッピングモールで『中村』を見掛けた。


 隣に奥さんが居て、肩車した子供にシャワーミストを浴びさせていた。


 子供は歓声を上げながら両足をバタバタさせ、道行く人々は蹴られまいと彼らを避けて歩いていた。


 まったく何という能天気!!


 こっちは休日返上で、ウォータープルーフのアイライナーが流れてしまう位の汗をかきながら得意先回りと市場調査で駆け回っていると言うのに!!


 当時から出来ない部下の筆頭だった中村に対し、私はずっと“機会”を窺っていた。


 そして課全体では予算に対し累計105%、かつ前年比8%の伸長を達成し、上半期を終えた今!“時”は訪れた。



 私は中村を会議室へ呼び出し、問い質す。


「あなた、前月と今期累計での達成率は?同月及び上半期の伸長率推移は?私が赴任した前年からでいいわ!」


 答えに詰まる中村に私はため息をついて見せる。


「そんな事を考える必要も無いくらいの達成率と伸長で、課や会社に貢献しているわけでは無いわよね!」


「……はい」


「それどころかあなたが担当したところは軒並み数字を落とし続けている。これをどう考える?」


 中村は無言だ。

 だから代わりに言ってやる。


「ウチの課にあなたは不要だわ」


 今頃になって縋る様な目をしても遅い遅い。

 もうとっくに“内堀”は埋め尽くされているのに、相変らず呆れるほどの能天気!


「あなたの身の振り方だけど……全国くまなく訊ねてみたら苫小牧の配送センターだけだったわ。あそこには社宅も寮も無いけれど……家族で行くにしても単身でも、ここよりは家賃相場は安いでしょうね」


「どうか!何とか!ここに置いていただけないでしょうか?下期は必ず達成しますから!」と往生際の悪い中村に私は言ってやる。


「そう言うのを“空手形”と言うのよ!あなたにそんな信用があるわけないじゃない。 それから退職するなら苫小牧でしてね。退職3か月前までに申し出るのがルールなのだから」


 握り締めた拳をブルブル震わせる中村。


 万一の場合に備えてのセルフディフェンスもきっちりシュミレーション済みの私は余裕の笑みを湛え、野良犬でも追い払う様に手でシッ!シッ!とやると、中村はポロポロと涙を零し始めた。


 ああ!!これを!!

 私は見たかったんだ!!

 本当はもっと泣かせてやりたかったのだけど……

「失礼します」も言わずに飛び出して行った中村の様は監視カメラにしっかりと映っているだろうから、またネタに使えそうだ。


 その夜、自宅で飲んだ祝杯は想像以上に美味で……私は中村の泣き顔を何度も脳内再生して楽しんだ。





                                 おしまい


ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] BlackMonday…! 怖いなあ。私は即飛ばされそう。 「クリームソーダに現を抜かすヤツなんて要らない!」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ