#6
あれから一週間が経った。特段、何も変わったことはなくアレンはあれからと言うもの一切心の内を1ミリたりとも見せる気配はなかった。僕といるのが義務であるかのように、食事の時以外は必要以上に干渉してこないため比較的居心地のいい暮らしを送ることができた。強いて言うなら、退屈凌ぎがないということが苦痛ではあるのだがどうでもよかった。
そんなある日、突然アレンが僕の部屋に訪れた。
「アレン?どうしたの?こんな深夜に‥」
「ちょっと一緒に寝てほしくて‥ダメ、かな?」
「いいけど‥急に何?」
「‥‥今はまだ、教えてあげない」
そう言って、アレンは多分無理矢理笑ってみせた。酷く何かに怯えているようだった。そんな彼を愛おしいと思ってしまったことにその時はまだ、気づかなかった。
その夜、僕とアレンはお互いを抱きしめ合って寝た。お互いの関係など知らないように。
翌朝、アレンは僕の腕から消えていた。
「アレン、昨日は一体どうしたの?」
「別に何だっていいだろう?今はまだ、教えてあげない」
背格好と年相応のいたずらっ子のような笑みを浮かべた。牛乳で口いっぱいに含んだパンを流し込みながら、アレンは言った。
「ねぇ、そういえばさ、いつまでも君って呼ぶわけにはいかないしもうそろそろ名前で呼ばせてくれてもいいんじゃない?あの時は、君の剣幕に押されちゃったけど、やっぱりなんだか距離を置かれてる気がしてさぁ?」
ガンッッッ!!思わず僕は拳で机を叩きつけてしまった。
「それは‥まだダメ」
アレンを真似て笑ってみせると、アレンもこれ以上何も言えないと思ったのか諦めたような笑みを浮かべ席を立ち去った。
君にだけは‥アレンにだけは、呼ばれたくないんだ。何かが僕の心に芽生えた気がした。