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旦那様の真実

お読みくださりありがとうございます。お楽しみいただけていますでしょうか。暇つぶしになれば嬉しいです。

 夜会当日、朝早くからウィステリアは侍女達に磨かれまくっていた。湯浴みをした後の髪の手入れと全身のエステ、顔のリフトアップ、ようやく一息つき軽食を食べられたのは午後を大分過ぎた頃だった。


「サラ、もう疲れたわ」


「何を仰っているのですか、戦いはまだこれからですよ。侯爵家の奥様としての初お目見えなのですからお美しいお姿を皆様に知っていただきませんと」


「そうだったわ、皆が一丸となって尽くしてくれているのに弱気になって悪かったわ」


「そうでございますよ、お帰りになったらいくらでも話はお聞きしますからね」


それからコルセットをこれでもかというほど締められて、ドレスを着せられメイクをされ髪をアップにされた。

結い上げられた髪にブラックダイヤモンドの髪飾りが煌めいた。

同じブラックダイヤモンドのネックレスをし、お揃いのイヤリングをつければ完成だった。

鏡の前に行き全身を確認する。そこには完璧な美女が立っていた。


「いつもの私じゃないみたい、貴女達の腕は本当に見事だわ」


「何を仰います、奥様が元々お美しいので少し手を加えただけです。素材が良くないとなかなかここまで綺麗にはなられません。肌なんて透き通るようではありませんか。きっと会場で注目が集まります」


侍女たちが褒め倒してくれるので嬉しくなってしまった。

その時扉がノックされ旦那様が入って来た。固まっている、既視感があると思っていると


「なんて美しいんだ、私の女神、連れて行きたくないな。このままここに居られたらどんなにいいか」


「旦那様、お披露目して下さらないと幻の妻という噂が何時までも消えませんわよ」


「ああ、もちろんだ、皆に見せびらかしたい。私の妻はこんなに美しい人なのだと」


旦那様は白に金の豪華な刺繍が施されているタキシードを着ていた。中に着ているシャツも白、下も白のトラウザーズで大人の魅力を醸し出していた。


「旦那様もとても素敵ですわ」


「では行こうか」

そう言うと馬車までエスコートをされた。

白亜の宮殿が見えてきた。王家の力の大きさを示すような荘厳なお城だった。


「こんなに近くで見ると素晴らしいのがよくわかりますわ。こんなところでお仕事をされていらっしゃるなんて尊敬致します」




馬車は宰相特権があるらしく混雑の中でも他の道を通り抜け会場にいち早く着いた。旦那様が手を差し伸べてエスコートをしてくださった。そのまま案内され、カスクルート侯爵家の控室に連れて行かれた。部屋に護衛数人とサラがいてくれた。護衛の中にはいつか街へ一緒に行ったビルもいて安心が増した。


旦那様が

「こんな日まですまない、王族の方々に挨拶をしてくる。いつもは陛下の後ろに控えているのだが今日は貴女と離れたくないから外してもらった。さっとすませて来るから悪いが待っていて欲しい」


「構いませんわ、待っております、行ってらっしゃいませ」





王宮のメイドがお茶を運んで来た。色とりどりのお菓子が添えられていた。

シンがお茶の匂いを嗅いだ。


「お茶は大丈夫でしょう、お菓子はおやめください、何が入っているかわかりませんので」


「わかったわ、緊張してお茶くらいしか喉を通らないから大丈夫よ」


「そうしていただければ助かります。会場では旦那様の言われる通りになされば安全かと存じます」


「ありがとう、そうするわ」


暫くして旦那様が戻って来たので会場に行くことになった。片手は旦那様の腕に、もう片方には淑女の嗜みの扇を持って真っ直ぐ前を向いた。


「落ち着いて普段通りの貴女でいればいい。ずっと離れないから安心して欲しい」


会場に入った途端色々な視線が飛んできているのを感じた。あの方が奥様なの?

私だってチャンスがあるかもしれない(何の?)ようやく連れてこられた可哀想な奥様、すぐ別れたりして(そうかもしれないわ)この身体で落としてみようかしら(やってみなさいよ)


とても綺麗な方だわ神々しいくらい、宰相様とお似合いだわ(えっ本当に?)

宰相様ってクールだわ格好いい、うちの旦那様もあれくらい格好良ければ浮気だって許すのに(許してはいけないと思うわ)


「いちいち突っ込むのはやめなさい」


「えっ、聞こえてました?」


「小さな声で言ってたから私にだけ聞こえていたと思うけど、唇の動きが読める者もいるから口は閉じていて」


「はいわかりました」

一応扇で隠していたのだけどプロもいるでしょうから気をつけなくては。


「貴女は楽しいね、退屈しない。

さあ陛下達のところへ行こう」


歩き出した途端陛下の方からこちらに来られるのがわかった。


「我が国の太陽であらせられる陛下にご挨拶申し上げます。宰相の妻ウィステリア・カスクルートでございます」


「楽にしてくれ、宰相にはいつも無理を言って働いてもらっている。結婚した日にまで呼び出し働かせて申し訳なかった。大災害だったので無理を言って来てもらったのだが、辛い思いをさせて申し訳なかった」


「頭をお上げくださいませ。私のようなものに謝られるなどあってはならないことでございます」


「では許してくれるのだな?」


「陛下の仰せのままにいたしますので、ここはご容赦くださいませ」


「あいわかった。宰相、後で奥方と一緒に謁見室に来るように」


「御意」


「驚かせてすまなかった。ダンスを踊ってから陛下のもとへ行こう。詳しい話はそこでする」


「陛下にお声掛けいただいただけで心臓がばくばくいっておりますのに謁見とはどうしましょう」


「私が付いている、貴女は何も心配しなくていい」


旦那様とのダンスはとても踊りやすかった。リードが上手なのね。ダンスの時に密着度が高かった気がするわ何故かしら。それにさっき陛下が言われた大災害とは何?三曲踊ったら気持ちが落ちついてきた。喉がカラカラになったので飲み物が欲しくなったら旦那様が取りに行って下さった。冷えたシャンパンが美味しい。


陛下のもとへ行こうと旦那様がおっしゃるのでご一緒することになった。

王族の為の謁見室は雅やかなものだった。頭を下げて陛下の入室をお待ちした。

直ぐにおいでくださった陛下はとても気さくな方だった。


「呼びだてして悪かったね、奥方が余りにも解らなそうな顔をしているものだから説明がされていないのかと心配になったのだ」


「実は妻は記憶を失っております。私事なので秘しておりました。あの大災害のことをきっかけに、妻を蔑ろにしてしまう結果となり私の一生の罪だと思っております。それ故言い出せておりませんでした。現在関係のやり直しを願っているところでございます」


陛下の前で私達夫婦の事情が明らかにされた。

私も知らなかった事であり平常心を忘れて顔に出してしまった。

なんたる不覚。

一言、言ってくれればここまで拗れなかったものを旦那様の馬鹿‼

メンタル弱すぎじゃないの?


王家の皆様や部下の方々もご存知だったとは恥ずかしすぎる。

第三王子殿下のワインも気遣いの一つだったとは。



旦那様の方を見ると借りてきた猫状態になっていた。

陛下の前ですものね、無理もないわ。



誤字脱字報告ありがとうございます。大変助かります。訂正しました。

面白いと思っていただけたらブックマーク、下の評価を押していただけると嬉しいです。

やる気が上がり書くのが早くなれると思います。よろしくお願いします。

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