僕の街のコーヒー屋さん
「いとしのあなたへ」
どうしてこんなにも愛しているのに
距離は離れていくばかりで
いとしい気持ちは募るのに
日常でしかいられなくて
行動の一つ一つに意味を持ち始めるその時に
あなたへのささやかな口づけを
この冬のあたたかなこぼれ日に
風に吹かれる木々のささやきに
送りましょう
せめてどうかあなたの幸せを
そしてあなたに胸いっぱいの感謝を
どうか届きますようにと。
2024/2/1
「偉鑒門」
どうしてそんなに怖がっているの?
君の純粋さと向き合うのを
自分が傷つくのが怖くて
その扉の前で立ち止まっているの?
あまりにも愛しすぎたその扉は
古くなってちょっとやそっとでは動かない
扉が開きかかって
そこから溢れ出てくるものでさえ。
だから君は大切に大切に
その扉の前に佇んで。
2024/2/1
「継ぎぬ喜び」
ステンドグラスから光がさす
光はそれだけで
ただ静かなその場所に
疲れ果てた御婦人が一人椅子にもたれかかる
午後のなんというひとときか
外には果物売やら野菜売があって
子供のはしゃぐ声がこぼれてくる
御婦人は眠気に襲われ
やがて言う
あゝ主よこれです
私の限りある命が尽きる喜びです。
この溢れる光に
か細い線が反射して光って
緩やかにほどけていくのです。
2024/1/31
J.S.バッハ 「G線上のアリア」
演奏 村治佳織 を聞いて
「追葬」
それは古いオルガン
埃の被った
それは誰も弾くもののいなくなった
かつては勇敢にその音を鳴らした名器は
今は影も形もない。
行方知れずの音を一つ一つ探していたら
いつの間にかここにたどり着いた
鍵盤を押しても音がなることはない
だからその傍らでどうか僕とこのまま
でもたしかにここにある音と共に
2024/1/31
「主よ、人の望みの喜びよ」
演奏 村治佳織
を聞いて
「追憶」
冬のあたたかな日の午後の木陰
犬を連れたおばあさんを遠目で見て
やがて葉の散りきった木陰に
古い記憶が緩やかな風に乗って通り過ぎる
それは僕にほろほろと
それはまるであたたかな冬の日の午後の木陰
2024/1/31
「恋」
序奏は悲しくも美しいピアノ
そこにやがてヴィオラが支えるように下を奏でる
そのうちヴァイオリンが主題を歌うようになり
優しいオーケストラへと移っていく
恋の移りゆくさまは
やがてその曲の終わりはもう一度ピアノに戻り
それは壮大な物語。
2024/1/30
「カビ」
湿度の高いこの部屋
電気はつけない
こもってる部屋は
まるで私のよう
脱ぎ捨てた服
チューハイの缶
そのうちカビが生えて
どうにかしなきゃいけなくなる
体が火照って熱でも出そうな勢い
暗いベッドの上でひっくり返る
天井を見て
熱のこもった息を吐く
それが部屋に充満してそのうちカビが生えるから
2024/1/31
「歩こう」
歩こう
前を向いて歩こう
おてんとさまが空に登っている
その下を
てくてく歩こう
ちゃっかり歩こう
今までの旅の思い出でできたマントを着て
今までの出会いと別れをリュックに詰めて
すれ違うものに軽く挨拶をしながら
僕を歩こう
2024/1/28
「おじさんよ」
おじさんは佇む
昼下がりの埃っぽい部屋の隅で
君が来れば
はにかんで
どこか物悲しく
どこか切ない
その背中は語る
優しさは悲しみ
故に言葉は多く語らず
おじさんよ
おじさんよ
2024/1/30
「青空」
男っぽいところがある私
言い寄ってくる男は沢山いるけれど
興味ないの。
この短く切った髪
バックの可愛いキーホルダー
靴下の下にこっそりしてるペディキュア
全部私の好きなもの。
そして、この平凡な日常と
後ろに尾を引かれた私の自我
それが私。
唯一屋上で感じるこの風と
頭の上に広がるこの青空が
私の感情を少し動かす。
2024/1/30
「キラーチューン」東京事変
ラプラス・ダークネスcover
を聞いて
「ウェントゥス」
ここは雲の上
カラッとした風が今日も降りていく
雲を通り抜け
カラフルで華やかな町並みを
石畳の上を
踊る女のドレスをめくり上げ
はだけた足が男どもを熱狂させ
ぶどう酒を飲む夫婦に昼下がりの心地よさを与え
オリーブ園で働く男たちに一時の癒やしを与え
若者が弾くギターの乾いた音色を運び
満足した風は
やがて海へ出る
そしてまた雲の上へと帰っていく
2024/1/30
「平日の図書館」
そこは波一つ立たない湖面
それは聖堂
そこに教えはない
集う人はどこか静かで
その湖面に一粒の雫が落ちて波紋が広がるように
けれどその雫に音はない
そこは聖堂
静かな聖堂
2024/1/30
「湿度」
雨が降る暗い橋の下で。
雨はやまない
この湿度の高い火照った体は私の生きている証
濡れた髪は空の暗い色と混じって憂いを癒やす
このまま今しばらく誰も来ないで
この落書きが
この埃っぽい空気が
この暗い空が
今の私の全部
だからこのまま誰も来ないで
2024/1/29
「キラーチューン」東京事変
ラプラス・ダークネスcover
を聞いて
「私の朝」
朝にね
コップ1杯分のお湯を沸かして
ドリッパーにろ紙を敷いて
いつもの豆をいれる
そこにそっとお湯を注ぐと
ふわっと膨らむ
そこにいるのよ、私の幸せが
3024/1/30
「キラーチューン」
豪華なシャンデリアの下には
破れたフェンス
その中にはゴミだめが
破れかぶれのガラクタたちは
シャンデリアに照らされて
望郷の念に駆られる
そして思わず動き出す
羨望をはらんで踊り出す
あゝ僕らを見て
この惨めな僕らを
上から下がるシャンデリアだけが彼らを祝福する
2024/1/29
東京事変「キラーチューン」を聞いて
「栞」
君が横を通り過ぎると
柔軟剤の匂い
それが僕の胸をぎゅっと締め付けて
美しさと悲しさとがこみ上げてきて
古い栞をまた挟んでなかなか読み進まない本を閉じる
そして僕の思いはまた行き場を失って
また本をひらく。
戸惑いとやるせなさがどうして僕をこう困らせるのか
それは古い本への憂愁に似た
やがてペンを取り紙に書くのに似た
2024/1/28
「朝の女子高生」
冬なのに足出して
最近のトレンドは靴下が短いらしい。
唇の色は真っ白で
椅子に座るなり目をつぶって寝る
きっとそうすれば一瞬さ。
駅と駅の間
その中のささやかな光景。
駅から降りればふらついた足取りで。
目をこすりながら。
昔の懐かしい記憶が蘇って
レモンの香りがした。
2024/1/20 電車の中
「独り」
独りって時折美しい
青いガラスが僕の周りを包んで
それに薄ぼんやりしたライトが反射して
キラキラ輝く
そんな感じ
さみしくて、あたたかくて、愛おしくて、おしとやかで
それらが青いガラスに反射するとたちまちキラキラ輝き出す
ガラスの外も内もただただ静かで
上からゆっくり雪のようで、けどあったかいそんなものが降りてくる
そんな感じ
2025/1/27
「何でもない日」
買い物袋をぶら下げて御婦人は
スーパーに
買い物袋は娘が幼稚園で作ったもの
髪は午前中に美容室で整えたもの
靴はお気に入りの赤い靴で
服はちょっとお洒落したいときに着るワンピース
買い物が終わったら
娘を迎えに行って
ご飯を作って
そう今日は何でもない日。
私の好きな何でもない日。
2024/1/25
「午後のひととき」
壁に湖面に反射した光がぼやけてゆらぐ
ご婦人たちが小さな小舟の上で楽しそうに語らうのを見て
白樺の木々や鳥々
パンにオレンジのジャムを塗って
この午後の緩やかなひとときになんと名をつけたらよいだろうか
「舞踏会にて」作曲 野平一郎
演奏 藤田真央
を聞いて
2024/1/26
「舞踏会にて」作曲 野平一郎 演奏 藤田真央
あの人はいつも美しくて
今夜も来ていて
さり気なくそちらを見てはため息を漏らす
近寄って話しかけたいけど
会場のシャンデリアが眩しく輝いて
照らされる光に参ってしまいそうで
あの人に照らされて参ってしまいそうで
このささやかな今を
やはりほんの少しやはりほんの少し楽しむことが精一杯で
今夜も恋は叶わぬのだろうか
2024/1/26
「ライフイズビューティフル」
ああ、どうして僕の愛が
どうして僕の愛が
時と場合を選ばぬよう
時と場合もまた僕を許さないのか
この陽気な僕に一つ理由があるのだとしたら
このこのため
死んでも守り抜くと決めた
このこのため
この残酷な世界に君だけが君だけがいてくれれば僕はそれでいい
故にどこまでも
君に約束した戦車は届いたかい?
ぼくの愛する君たちに
2024/1/17
「ときめき」
僕を見上げる君の目が
優しさで溢れていたように
僕は君に何を返そう
未来への期待感が僕のこころに宿るのは
君との未来が明るいものだと思っているから
12月の寒さが僕の心を研ぎ澄ます
クリスマスの静けさに君に感じる希望を乗せて
ささやかな時を過ごす楽しみをここに歌おう
2023/12/10
「君ってね」
君ってね
君のお父さんとお母さんの半分半分じゃないんだよ
2つが混ざり合って全く別の新しいものになるんだ
いくつもの奇跡が君を作ってる
かけがえのないものなんだ
その化学反応を思いっきり楽しむといい
今そこに立っている君はオリジナル
父にも母にもない君だけのものってなんだろう?
2023/12/12
「冬の朝日」
なんて心地よいのでしょう
照らされるすべてが
陽の愛しさに包まれて
なんて優しいのでしょう
それは喜びに満ちて
なんで愛しいのでしょう
2024/1/15
「ポツンとベンチ」
いつも誰かを待っている
いつかその日が来るかもと
いつでも君を待っている
雪が吹雪いて、雨に打たれて
いつでも必ずそこにある。
今日も陽の光を浴びて
おはよう。みなさん。
ポツンとベンチ
2024/1/15
「冬の枯れ草」
細く白くなったその草は
風にたなびく
それは僕を置き去りにして
ゆらゆら揺れる
このどうしょうもない寂しさの
冬の枯れ草
2024/1/15
お姫様。ようこそ。明け方の空へ。
冬は寒い。厚着をして。こちらへ来るのです。
地平線に隠れている音楽隊が朝日とともに音楽を奏でます。
時は永遠。そして一瞬。
ほら。
朱色とともに。
まだ星々も帰る時間にはまだある。
さあ、音楽よ。
なれ。
故に私は天地創造さえもこの一瞬のためにあると思うのです。
2024/1/14 朝 地平線が朱色みがかったとき
秘密の扉をこっそり開けて
なかから素敵なものがたくさん溢れてきて
夜空はまるでおもちゃ箱
僕はそこから星を一つ手にとって
あなたに捧げる。
ねぇこっちを見て。
どんな上等なものよりも
きっと君を満足させてみせるから。
あなたは言う。
私はもうもらっているわ
この夜空の星々にかなうものがあるものか
この星は僕のものだ。
いいえ違うの違うのよ
どんな星々よりも
この手がこの手がほしいのよ
二人は夜空を登ってく
これからは私達でこの宇宙を作るのよ
君がそう望むなら
2024/1/14 朝 まだ暗い時間
2週間
「図書館のおじさん」
上等な服を着て
部屋の中で帽子をかぶり
白髪が綺麗に混じったその男
左には妻が持たせたであろう弁当が
読んでいる本はわからぬが
休日に図書館へ着て学ぶその姿勢は
足りているようで足りていない
その狭間でバランスを取っているようだ
そしてその体は緩やかな終わりをまるで楽しんでいるようだ
2024/1/13
「平和の歌」
オリーブの葉が揺れている
光が葉からこぼれて
白い1羽のはとが
この地球を飛んでいく
私達をつつんでく
2024/1/13
2024/1/13 朝4時30分 満天の星
眠れる森の美女
あちこちから鳥の鳴き声が聞こえる。
深い森のその中で日差しが差し込むその中で。
そこには一人のプリンセスがいて
僕にこう語りかける。
朝の夜に不思議な森に迷い込んだ。
そこで踊りましょう。
あなたと私の。
二人だけの時間。
手を引かれそれは優雅でただただ優雅で
僕はそのプリンセスに言葉を失い見つめるだけ
あゝ終わってしまう
なぜこんなに美しいのに
こんなにも満たされた時間はないのに
せめて最後は盛大に
観客は宇宙ににはためく星々
僕らはただ軽やかにワルツのステップを踏んで。
2024/1/13 朝4時7分 満天の星
くるみ割り人形
朝早く目が覚めてしまって外をぶらつくときは決まってこの曲をかける
くるみ割り人形の空気は甘いスイーツのような味がして
誰もいない道や車のない道路はどこか僕を特別な気持ちにさせてくれる。
いつもの道はやはり変わらなくて僕はまた今日もいつもの道を歩く。
朝4時の運動公園にもやはり人がいて特別で、いつもと変わらない朝を皆静かに過ごしている。
僕にかけられる言葉は音楽以外なく空にきらめく星々に照らされて落ち着かない朝をどうにかやり過ごそうとする。
恋をするといつもそうだ。
何にも手がつかなくなり、落ち着かなくなり、どこかどこでもいいどこかへと歩きたくなる。
恋と言うにはまだ若いそれはそれは果たして希望か。僕の心に問いかけても歩きたくなる衝動が返ってくるだけ。
僕のこれからの道がいつもの平凡な道が何やら動き始めるその時に
僕はただひたすら歩く
まだ夜とも朝とも言えないその時に
僕はただひたすら歩く
「卒業式」
別れか始まりか。
それぞれの道に君たちは旅立つ
いくつもの道がそこから広がっているのが見えるかい
それが束となって
歌となって今きみたちをほめたたえる。
おめでとう。
「仏像」
頭は丸く
お手々をあわせて祈ってる
古きほのかな木の香り
ほこりがかぶったその姿
あゝ祖父の思い出よ
2024/1/11
「私の恋」
くるおしいほどの恋をして
忘れたつもりでいたけれど
久しぶりに
開いてみれば
心はまだあの人のものだった。
外見は成長しているけれど
時間は長く経ったけど
縛られし我が心
とまどう私が愚かに見えて
自分の価値が下がるようで
今夜もそっと目を閉じる
2024/1/11
「そんな人にワタシハナリタイ」
背伸びしすぎず
かと言って卑下もせず
格好もつけず
たまに甘えて
可愛がられる
そんな人にワタシハナリタイ
2024/1/11
「たがえゆきし人よ」
見ず知らずの
人がまた一人また一人と
すれ違う
なんの興味も抱かず歩きます
通り過ぎゆく人の中
人がまた一人また一人と
すれ違う
「創造せしもの」
ある日神が気まぐれで
ある日物を作ったとさ
すると人はそれを見て
あーだこーだと語ります。
理屈をつけて話します。
でてくるでてくるいろんな解釈
神はそれを見てこう言った、
あゝ楽しや人の世よ
「戦争」
ある日銃を持った兵隊が言ったとさ
「僕はいっぱい殺してきた。だから何も感じない」
兵の前に立つ子供
「僕の母さんうたないで」
兵隊は銃を持ち
母と子をうちました。
「僕は何も感じない」
2024/1/11
「街の珈琲屋さん」
カウンターには常連のおじいさんたちが
政治の話や世間話で盛り上がり
テーブルにはおばさんたちの会話が
とめどなく流れる
ふと僕が入ってみれば
もうそこはまごうことなき珈琲店
カレーのおいしい僕の街の珈琲店
2024/1/11