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いのちのパン屋さん〜二回目の光〜  作者: 地野千塩


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番外編短編・お魚パン祭り

 風間充希は、悩んでいた。先月結婚し、新婚生活中だったが、夫は仕事に生きずまっていた。


 夫はゴスペルシンガーだった。クリスチャンで、讃美歌を本業にしていたが、色々と批判的な事も言われているらしい。充希も心配になり、気持ちが引っ張られていた。


 幸い、充希の仕事は順調だった。都内の香料メーカーで調香師をしていたが、新しく開発した香水がクライアントで好評で、製品化できそうだった。


 今日は土曜日だが、夫は仕事部屋に引きこもり、ウンウン唸りながら曲作りをしていた。そんな家にいるのもストレスがたまり、充希は外出する事にした。


 行き先は福音ベーカリーというパン屋だった。充希もクリスチャンだが、教会でキリスト教関連のパン屋があるという噂を知り、行ってみたくなった。


 穂麦市という静か土地の住宅街に福音ベーカリーがあった。住宅街にあるの割にはメルヘンな雰囲気のパン屋で、目立っていた。店に近づくと、パンの焼ける良い香りもし、思わず頬が緩む。


「こんにちは! 充希ちゃんじゃん!」


 店に入ると、店員に話しかけられた。なぜ自分の名前を知っているか疑問だが、おそらく教会関係者だろう。結婚式の様子や写真も教会関係の広報か何かに載ったらしく、顔と名前を知られていても不思議ではなかった。そもそも夫はゴスペルシンガーなので、クリスチャンの間で知られていても不思議ではない。


 店員は若々しい雰囲気のイケメンだった。ちょっと夫にも似ている。白いコックコートの胸元には、知村柊という名前が刺繍されていた。


「おすすめある?」

「今はお魚祭りをやってるんだよ」


 店の中央にあるテーブルは、確かにお魚祭りだった。フィッシュバーガーや、白身魚のカツサンド、魚肉ソーセージのホットドック、魚の形のしたパイもある。聖書では魚も関係があるし、この店員も確実にクリスチャンだろう。


「わ、魚の形の食パンもある」

「うん! 猫食パンがありなら、お魚食パンもアリかと思ったんだ」


 自由な発想のパンを見ていたら、充希もだんだんと元気になってきた。この魚のパンたちを見ていたら、夫も何か仕事のヒントになるかもしれない。


「この魚のパン、全種類買っていい?」

「オッケーだよ! 充希ちゃん、篝火くんも頑張ってね」


 柊に応援もされてしまった。次は夫婦でこのパン屋に行ってもいいだろう。そんな事を考えながら、再び柊を見る。なぜか天使の姿が見えるのだが。


「あれ、あなた」


 天使でしょって言おうとしたが、やめた。意外と地上に肉体を持ってやってきている天使もいるようだが、何か事情があるのだろう。その点はそっとしておいた方が良いかもしれない。


「ありがとう、充希ちゃん」

「え? 何が?」

「なんでもないよ」


 こうして柊は、笑顔を見せ、魚のパンたちを包んでくれた。

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