表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いのちのパン屋さん〜二回目の光〜  作者: 地野千塩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/65

七転び八起きのパネトーネ(1)

 日向サエは、自分の怒りっぽさに悩んでいた。


 彼女は少し一般とは違う人生を歩んでいた。元々地主のお嬢様で、十九歳の時にお見合い結婚した。同じく地主の男で、幼馴染のような存在で、幼馴染頃から「この人と結婚する」と決めているような所があった。その後、子供も産まれ、何不自由のない専業主婦をしていた。一般とは違う十分恵まれた人生と言えるだろう。


 しかし子供も独立し、夫も亡くなってから、不調が起きるようになった。いわゆる更年期障害の症状もあり、毎日のようにイライラとしていた。子供にも辛くあたり、今は頻繁には連絡を取っていなかった。


 そんな時、サエの唯一の楽しみは、ネットだった。特に動画サイトで都市伝説や陰謀論動画を見ていると、ワクワクとしてきて、少々更年期障害の症状も和らいできた。陰謀論インフルエンサーはイケメンもいて、少しときめていていた部分も否定できなかった。


 そんな折、ある陰謀論インフルエンサーがクリスチャンになったという動画をみた。陰謀論を極め、悪魔がこの世を支配していると気づいたら、神様もいると確信したようだ。地獄行きだった自分を救ってくれた神様を夢で見たというエピソードは涙無しでは見られず、サエも自然と神様や聖書、キリスト教に興味を持つようになってしまった。


 一人で聖書を読む中、わからない事も多かった。陰謀論サイトを見すぎてキリスト教会にも何も良い印象はなかったが、とりあえず基本的な事を教えてもらおうと、通いはじめた。


 しかし、牧師も牧師夫人も若くて頼りなく、イライラさせられた。特に牧師夫人である藍沢今日子の方は、オットリとした天然ボケタイプでもあり、いくらこちらがクリスマスの起源や安息日に話しても、軽くかわされてしまう。素直な性格過ぎて、時々ポロッと本音をこぼす時もあり、さらにサエはイライラとしてくる。


 クリスマスが近づいたある日、今日子に「クリスマスは祝うな」と話し合ったわけだが、こちらは「クリスマスは元々嫌いだったんでしょう?」と雑に纏められ、彼女に紅茶をぶちまけてしまった。


 イライラする。自分の怒りをコントロール出来ない自分に何よりイライラしてしまった。


 ただ、家に一人で帰り、聖書を読んでいると、こんな風に人に攻撃していた自分は、罪だと気づく。聖書の神様、イエス・キリストは、確かに怒る時はあったが、それは全部父なる神様の為で、自分の為ではなかった。そもそも、こんなクリスマスの起源や安息日の曜日にこだわっているのも、神様の為なのかわかっていない部分もあった。むしろ、どこか自分の欲を満たす為に、陰謀論的なものにハマっている事は否定できなかった。「目覚めた人」なんて言われると、自分は特別になったと勘違いしそうだった。


「神様、怒らないようにするには、どうしたら良いですか?」


 寝る前、ベッドの上で祈ってみた。祈り方は知らなかったが、今日子に教えて貰った。他にも食前のお祈りの仕方や、マイナスな言葉を言われた時の祈り方などネットには書いていない様な事も、今日子には教えて貰っていたのに。自分より人まわり以上も若い今日子に、大人げない態度をとってしまった事も恥ずかしい。


「罪を犯したくないです。罪を犯さないようにするには、どうしたら良いですか? アーメン」


 こうして祈り終えると、目を閉じて眠りについた。夢は見なかった。陰謀論インフルエンサーのように、神様が夢に出てくる事も、人に言えるような証も何も無い。それどころか、怒りの感情もコントロールできない自分が情け無い。


 馬鹿にしている牧師や今日子も、罪を犯さないような清いクリスチャンに見え、嫉妬の感情も全く無いとは言い切れない。


 心の底にそんな感情があるから、クリスマスや日曜礼拝を否定していたと指摘されたら、否定できない。


 こんな心は汚く、罪深い自分は、洗礼を受けてクリスチャンになって良いのかもわからなかった。今は一応求道者の立場だが、その事についてはずっと先延ばしにしていた。


 祈りの答えが出れば良いのだが。


 サエは、不安な気持ちを抱えながらも祈る事は止められなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ