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いのちのパン屋さん〜二回目の光〜  作者: 地野千塩


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愛と種無しパン(3)

 飽田市から隣の穂麦市まで、電車に乗って帰る。駅に降り立った時は、もう夜に近く、会社帰りのサラリーマンやOLなどで賑わっていた。瑠偉の家でラーメンを作ったせいか、愛美もなんとなく、ラーメン気分になってしまった。駅ビルの一階にあるフードコートに直行し、ラーメンを頼んで食べた。


 こんな時間に制服姿でフードコートでラーメンを食べるのも、何となく微妙だった。周りは会社帰るのサラリーマンらしき人ばかりで、自分もおじさんになった気分になる。一応学校では優等生で通っていたので、ラーメンを食べ終えると、すぐ家に帰った。


 家は、このあたりに新しくできたマンションの5階にある。オートロックをとき、エレベーターで家に直行した。


「ただいま」


 一応言うが、その返事はなかった。電気をつけ、リビングに直行すると、誰もいなかった。わかっていた事だが、広いリビングにいると、その事実に打ちのめされそうだった。


 愛美の家は、現在崩壊中だった。半年前、父の不倫が発覚し、母が家を出ていった。金は振り込まれるが、父も全く帰ってこない状況で、愛美もほぼ一人暮らしの状況だった。


 父も母もクリスチャンだった。そんな二人は尊敬もしていて、不倫など全く関係の無い出来事だと思っていた。特に父は、教育関係者でもあり、厳格で、正しい人というイメージもあったが、もうそんな物は砕け散ってしまった。


 愛美はため息をつきつつ、リビングのソファに座った。牧師は、クリスチャンだからこそ、悪魔や悪霊のターゲットのされ、こんな状況になったかもしれない、赦しましょうと言ってきたが、愛美の中にはモヤモヤがたまる。


 赦したい。聖書通りに人を許したいと思っていたが、なかなか心は追いつかず、それどころか胸にはドロドロしたものが溜まっていた。


 もしかしたら、自分がいい子じゃないから、こうなっているのかもしれんない。教会では悔い改めをしたら、健康になったとかいう証も聞いていた。


 この半年、勉強も頑張ったし、学校では委員長や生徒会の仕事も頑張った。教会での奉仕活動も、毎日のように頑張っていた。こんな風に頑張っていたら、いい子だと認められて、両親が家に帰ってきてくれるのではないかと、薄らと期待していた。


 しかし、そんな雰囲気は全くなく、誰も愛美の行いなどは褒めない。教会はともかく、学校では、体良く雑用などを押し付けられたりもしていた。


 聖書では、別に行いをやったからと言って救われないとある。そんな事はよくわかっていたが、どうしても、いい子にしていれば、両親が帰って来てくれるのかもしれないという期待を捨てきれなかった。


 ふと、リビングのパソコンで、両親の結婚式の動画を見てみた。父の母教会の教会で士式をあげたらしく、愛美は全く知らな牧師が聖書箇所を朗読していた。


「愛は忍耐強い。愛は情け深い。ねたまない。愛は自慢せず、高ぶらない。礼を失せず、自分の利益を求めず、いらだたず、恨みを抱かない。不義を喜ばず、真実を喜ぶ。すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える。第一コリント十三章・四節より)」


 よく結婚式で引用される聖書箇所で、一般のノンクリスチャンでも知っている人も多いかもしれない聖書箇所だ。


 その後、今よりだいぶ若い両親は「誓います」と言っていた。


 本当に? 神様に誓ったんじゃないの?


 そう、ツッコミも入れたがったが、それも無駄な気がしてきた。


 ラーメンを食べたせいで、しばらくウトウトとしていた。夢にも両親の結婚式の映像が流れ、全く眠った気分にはなれなかった。


 一体、いつまで良い子にしていればいいんだろう。どれぐらい努力したら、この家は元に戻るんだろう。


 そもそも自分は、両親に愛されていたのだろうか。そんな自信も揺らぎ、良い子でいる事に疲れていた。

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