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いのちのパン屋さん〜二回目の光〜  作者: 地野千塩


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愛と種無しパン(1)

 安達愛美は、優等生だった。通っている聖マリアアザミ学園では、委員長や生徒会の仕事もこなし、教師からの信頼もあつかった。


 聖マリアアザミ学園は、元々ミッションスクールでもあり、キリスト教関連の女子高だった。愛美も親がクリスチャンで、自然と教会に通うようになり、小学生の時に洗礼を受けた。いわゆるクリスチャン二世といわれている存在である。こんな風に書くと、今世間で騒がせているカルト二世とどこが違うのかと問われれば、上手く説明できない自分もいたりした。


「牧師先生、こんにちは!」


 そんな愛美は、放課後は毎日のように通っている教会に行き、奉仕活動をやっていた。飽田市という少々治安が悪い町にある、プロテスタント系だった。どこにも属していない単立教会のせいは謎だが、小さな教会だった。元々民家を改造した教会で、二階は礼拝堂だが、一階は牧師館かつ牧師の住居だった。礼拝堂までは外付けの階段で直通でき、一見二世帯住宅のようにも見えてしまうところだった。


「愛美ちゃん、こんにちは!」


 牧師は六十近くの男だった。年齢よりは老けてみえ、髪の毛の存在感も、年々失っていた。今日は牧師館の一室で、食糧の仕分けや在庫整理をする言葉になった。この教会は生活困難者の為に食糧支援ばどもしていて、牧師館の 一室は、缶詰やラーメンなどの段ボールで散らかっていた。今は食品ロスを考える企業も多いようで、こんな風に賞味期限が近い食品を特別に貰えたりするらしい。


 しばらく牧師と愛美は、無言で段ボールを開け、食品の仕分けをしていた。とにかく量も多いので、余計な雑談する時間もないかった。気づくと、愛美の額やこめかみには汗が浮いていた。


 仕分けが終わった時は、牧師も愛美も疲れていた。さすがに牧師も歳なのだろうか。教会も8割以上高齢者だし、この牧師がいなくなったら、必然的に教会はなくなるだろう。日本はクリスチャン人口は 1%で、年々減っているらしい。コロナで閉鎖した教会もあると聞く。近い未来、日本のクリスチャン人口はゼロになるだろうとも言われていて、牧師や伝道者の生活も金持ちとは聞かない。そういう現実を知ると、愛美も明るい気分にはなれなかった。でも、こうして奉仕をやっていると、他のわずらしい諸々の問題も忘れていた。牧師には決して言えないが、神様の為に喜んで奉仕をしているかと言えば、別にそうでもなかった。


「そういえば、瑠偉くんって元気?」


 ふと、最近教会によく来ている橋本瑠偉の顔が浮かんだ。まだ二十歳そこそこのコンビニ店員をしている男だが、あまり体調もよくなく、いつも青い顔をしていた。よく風邪を引いているようで、愛美も何度か看病しに行ったこともある。いかにも貧困そうな古いアパートの一階に住んでいて、暮らしぶりは豊かではなさそうだった。


「さあ。最近、瑠偉君は、あんまり教会来ないしな」

「大丈夫なの。この缶詰とかラーメンとか持って行こうかな?」

「そうだね。どうせ余るしね」


 牧師はもう疲れているようだったので、愛美はいくつか食品を瑠偉の元に届ける事にした。

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