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いのちのパン屋さん〜二回目の光〜  作者: 地野千塩


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初心者のソーダブレット(1)

 高瀬莉央は、子供の頃から前世の記憶があった。どこかのヨーロッパの姫の乳母だった莉央は、せっせと仕事をしていた。


 そんな事を言うと、変な人だと思われそうなので決して言えないが、ネットで検索すると、前世の記憶がある人も少なく無いらしい。いわゆるスピリチュアル系のサイトをみると、別に珍しくも無いようだ。


 仏教やヒンドゥー教なども前世や来世がある教えが一般的らしい。他の宗教はよくわからないが、ユダヤ教やキリスト教は輪廻転生は無い立場らしい。それを見ると、やっぱ輪廻転生がある教えの宗教の方が馴染みやすいとも莉央は思う。莉央は典型的な無宗教の日本人で、葬式や墓参りは仏教式だったが、クリスマスやイースターを祝っていた。ちなみに通っている中学校もミッションスクールだが、養母の事情で通っているだけで、別にキリスト教などは興味が無い。むしろ、アンチだった。


 通ってるミッションスクールは、聖マリアアザミ学園という。穂麦市という都心から離れた郊外の土地にある。莉央もこの土地に住み、一見お嬢様に擬態して生活していた。


 本当の育ちは、別に良くはない。父親も誰だかわからない状況で生まれた。母は、穂麦市の隣にある飽田市で、キャバ嬢をやっていた。なぜ、そんな仕事をしていたかは謎だが、養母によると、騙されて借金まみれだったらしい。そんな母も、莉央が十二歳の時病気で倒れ、結局養母の元に引き取られた。養母は、母の遠い親戚で、金持ちでもあった。母との暮らしは過酷だったが、養母との生活は、百八十度違ってしまった。養母の意向で、お嬢様学園と知られる学校に通い、何の不自由も無い生活を送っていた。


 ただ、心の内にはもやもやとしたものが溜まっていた。母への反抗心も、燃え尽きぬまま、死別してしまった為、学校の担任や養母にあたってしまう事も少なくなかった。すっかり問題児のレッテルを貼られていたが、莉央の中では解消できない何かが燻っていた。


 そんな折、母の友人から個包が届いた。母の手帳や日記が出てきたので、お返しするという手紙も添えられていた。養母に報告するのも、なんとなく微妙になり、自宅の部屋で一人で読んでいた。手帳はともかく、日記を見ていたら、何とも言えないイライラに襲われてきた。


 手帳を読むと、子供の頃の莉央は、かなり放置されていたらしい。手帳と日記を送ってきた友人が親代わりになり、面倒を見ていたという事だった。


「何で、子供なんて産んだんだろう」

「ちっとも可愛くない」

「お金ばっかり出ていく」


 母の丸っこい文字を見ながら、莉央はさらに解消出来ない感情が心に降り積もってきた。一緒に暮らしていた時も、部屋は散らかし放題で、よく市の福祉職員なども来ていた事も思い出した。


 日記の最後の方には、「子供なんて早く死んでほしい」「可愛くない」という文字も綴られ、心が引っ掻かれた気分だった。これを送ってきた友人は「ママを許してあげてね。彼女も辛かったんです」と書いてあったが、「はあ?」と言いたくなる。


 急に足元がふらつくような気分も覚えた。自分は確実に母には、愛されていなかったと思うと、許す気もなれない。むしろ、「母みたいには絶対になりたく無い!」と頑固な岩のような気持ちも出てくる。


 自分は、前世では乳母をやっていた。子育てぐらいできる。


 母のようにはなりたく無い。母みたいには絶対にならない。


 そう呟くたびに、心の中にある頑固の岩のような感情が、さらに大きくなっていった。


 気晴らしに前世の事が書かれたスピリチュアル系のサイトも見てみる。子供は、天から親を選んで生まれてくるらしい。多くは親を助ける為の子供が生まれるのだという。あんな母親を選んだ覚えは無いが、何か意味があったんだろうか。


 少なくとも、母は輪廻転生では数回ぐらいしか生まれていなかったと思う。自分はもう何度も何度も生まれて、死んだ気がする。


 そう思っても、何の気晴らしにもならず、さらに憂鬱になっていった。


『馬鹿な人間の娘だよ。あはは』


 どこかで笑え声が聞こえたような気がした。部屋をぐるりと見回したが、人影も何もない。おそらく、窓の外にいる鳥かなんかだろう。もう秋で、窓の外にある木々は、赤や黄色に色づいていた。派手な葉の色を見ながらも、心は全く晴れない。


『ふーん、母みたくなりやく無いんだね! その宣言、いただきました!』


 どこからか、また声が聞こえたような気がしたが、気のせい?

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