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いのちのパン屋さん〜二回目の光〜  作者: 地野千塩


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休日のツォップ(1)

「そんな……」


 吉川芳乃は絶句していた。実家で飼っている柴犬のミントが、体調が悪いという知らせを受け取った。母によると、もう老犬で先は長くないという話だった。


「嘘でしょ、お母さん。正月に実家に帰ってきた時は元気だったじゃない」

「でもね、もう歳よね……」


 母はもう諦めムードだった。


 本来なら、今すぐ実家人帰り、ミントのそばにいた方がいいと思った。実家は北海道にあるが、別に世界の果てではない。


 しかし、芳乃の頭の浮かぶのは、仕事のことだった。芳乃は、穂麦市という郊外の中核都市にあるアパレルショップのオーナーだった。チェーン店でそこそこ有名なショップだ。値段はお手頃で、主に大学生ぐたいまでの若い女性をターゲットにしている。


 コロナ後が、服があまり売れない時期もあったが、芳乃の奮闘のおかげで、だいぶ売り上げは回復していた。チェーン店の中でも上位の売り上げがあり、もしかしたらトップにもなれるのでは無いかとも言われていた。確かに店は駅ビルの中にあり、立地は良いが、小さな努力を日々積み重ねていた。もうアラサーだったが、この仕事は天職だと思い、命懸けのところも否定できない。本部からの圧力もある。それを思うと胃が痛くなり、ミントの事は忘れる事にした。


 何もすぐ死ぬわけでは無いだろう。ははは動物病院に連れていったと言うではないか。全く心配ではないと言えば嘘になるが今すぐ北海道に帰る気分にもなれない。コロナの感染者数も増えているようだし、そういった観点でも実家には戻りたくなかった。


「そう、仕事なのね。でも、たまには休んだらどうなの? 最近は働き方改革で、ペットの事情で有給とれるって言うじゃない? ネットで猫連れてきても良い会社も見たよ」


 母はテレビだけでなく、ネットも好きなので、こういった情報もチェックしているようだった。


「うちの会社は、そういうのないな。意外と体育会系でブラックなんだよね」

「そんな会社やめて転職でもすればいいじゃない」

「いや、意外と体育会系の肌があってるんだよね」


 ネットを見ると、自社はブラックの疑惑が出いた。確かに休みが取りづらく、最近はろくに休んでいない記憶もあったが、なぜか「負けたくない」という気持ちが芽生えていたりしていた。一体誰と戦っているのかは、不明だが。


「という事で、ミントの為だけに実家には帰れない」

「でも、もう二度と会えなくなったらどうするのよ」


 芳乃は、母の声など無視して電話を切った。確かにミントも大事だが、仕事も大事だ。


 実際、この後バリバリと仕事をこなし、チェーン店での今月の売り上げが一位になった。表彰もされ、これ以上嬉しい事は無い。ミントは日々、具合が悪くなっていると聞いてはいたが、なるべく考えないようにしていた。

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