表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺解釈三国志  作者: じる
第五話 會稽の妖賊(熹平元年/172)
58/173

3包囲

 人また、人。

 敵また、敵。


 万余の集団が、山陰城の北側を取り囲んでいる。


 城壁の上から見下ろすだけで朱儁しゅしゅんの背筋に寒いものが走る。


 句章で県が襲われた。その急報から僅か二日で、大軍が城を囲んだ。

 兵の増強などする暇はなかった。県城の門を閉ざし、伝令を送り出すのが精いっぱいだった。


 救いは彼らにまともな攻城兵器がない事……いや、まともな武器がない事である。城の背後を占める長湖には舟もまばらで、まだ完全な包囲には至っていない。


 だが、時間の問題ではあった。


「安心したまえ、朱主簿」


 同じく城壁の上で不敵に笑う男。會稽太守の尹端である。朱儁はこの尹會稽に主簿として仕えている。


「こんなもの烏合の衆に過ぎん。慓悍な羌族共に比べれば烏のひよっこ以下だ」


 尹端は張度遼の下で羌族と戦ってきた歴戦の勇士である。朱儁はそう聞いている。


「大将軍とやらは素人だな。この戦力差なら、力押しできように」


 多大な犠牲は出るだろうが……尹端はそうつぶやいた。


 土で出来た城壁である。死を賭して近付けば、彼らの農具でもいずれ崩せるだろう。

 上からの矢で死ぬのを我慢できれば、であるが。


 朱儁にも判った。つまり、敵はぬるいのである。


 だが、この県城を守る兵士にその道理が判っているかは怪しい気がした。

 それでも兵士にも判る事はある。

 兵士達は常に尹端を見ている。

 その、落ち着き、ふてぶてしい様子を。

 城の士気が崩壊しないのはそれ故であった。


「州への連絡は送り出した。援軍が到着し解囲してくれるまで持久するのが我らの任務だ」


 尹會稽の頼もしさだけで、この城は持ち堪えている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ