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俺解釈三国志  作者: じる
第四話 建寧の獄(建寧二年/169年)
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12 李膺最期

「遅かったな。気を揉んだぞ」


 李膺は後ろ手に枷をされたまま、張讓の方に目線もくれず、ただそう言った。


 つい、来てしまった。来たらどうにかなりそうだから来たくなかったのに。でも我慢できなかった。殺したい。もっとみじめな姿を見たい。

 帰った方がいい。楽しい時間を終わりにする気か?こいつの苦しむ姿を見れなければ楽しい時間ではないのでは?


 張讓のはらわたに、いろいろな感情が渦巻き過ぎ、言い返そうにも言葉が紡げない。


「俺を殺しに来たのだろう?」


 そう尋ねた。


「ん?どうした」


こちらが反応しなかったから。


「俺は反撃できないぞ。今なら殺れる……お前の細腕でもな」


 とうとうこちらに向き直った。


「檻の向こうでも、その長剣なら届くぞ」


 這いずって来る。


 李膺はこんなに口数の多い男だったろうか?

 張讓は混乱の中にあった。


 牢の格子にもたれ掛かり、李膺はずりずりと立ち上がった。

 どうやら片足が駄目になっているらしい。


 格子の向こうに李膺の目が間近に光った。李膺の目は死んでいなかった。


「男でも無い宦官は自分の手を汚して殺しをする勇気もないか」


 挑発されている。それは判る。

 だが李膺の息遣いが聞こえる。李膺の匂いがする。

 くらくらする。平衡感覚が無くなる。


「お前は弟よりは男らしい奴だろうと思っていたんだがな」


 張讓の頭が沸騰した。

 気が付いた時には剣が李膺の腹を刺していた。


「それでいい」


 李膺はにっこり笑うと体を捻った。


「いまさら助命されるより、ずっといい」


 刺さった長剣に体重を掛けると自らの体重で傷口を広げた。


 張讓の全身を返り血が染める。


 李膺は牢の格子につんのめる様に崩れおち、そのまま動かなくなった.


 呆然としながら張讓は長剣を格子から引き戻した。


 格子の向こうに倒れている李膺を見下ろす。


 あれほど見たかった李膺の死体だが、どうしてだか達成感は無かった。


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