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悪堕ちする推しにささげる転生人生、無敵つき  作者: 楠楊つばき
第一部/アルブス国立学校1年生
6/51

06踊りたいのはあなたとだけ

3/14も9時と21時に予約投稿済です。

 好天こうてんに恵まれ、入学式は学校の校庭で盛大にもよおされた。


 推しの姿が見えず、必死に視線をめぐらせたら、彼はナイル・ブルー・テラコッタ第一王子の背後に控えていた。

 どうやら私が教えた防衛魔術を発動しているらしく、視認できた人はそれほど多くなかったかもしれない。

 新入生代表挨拶を務めた殿下の背後で気配を消している推しから目を離せなかった。


 お父様より、殿下の入学にあわせて警備が強化されたと聞いている。

 ただ大人がいると子どもたちが委縮いしゅくするだろうという殿下の配慮により、追加の護衛は基本、死角しかくひそんでいるらしい。

 殿下の入学前から配属されている警備員は顔を出して働いているので、何かあれば彼らにことづければよい。


 魔術をたしなんだ私には目くらましの魔法も効かないので、どこに潜んでいるのかわかってしまう。校舎の天井にぶら下がるほど仕事熱心なようなので、特別報酬を支給してはどうかと殿下に進言してみようか。


 敷地全体に防衛魔術が敷かれているとはいえ、内側のうみにはどうしようもないのだから。


 入学式の後にクラス編成が発表され、教師のあとについて廊下を歩く。


「あの子が、守護神と話題の――」

「結界魔術といったかしら。未開の地で大活躍だと――」

「不吉な色に気に入られなければ、国の――」


 耳ざわりな音が聞こえて、自身に遮音結界を発動する。

 特定の言葉を拾わないようにする結界で、心の平穏に大活躍である。発言者を特定する気はないので、風のように聞き流そう。

 案内された教室は前方に教卓があり、床と比べて一段高くなっている。教室の後方は階段になっていて、奥に向かって高くなっている。


 鍛えていて筋肉が厚そうな教師に、今後の話をされた。

 夕方から始まる入学記念パーティーの準備に時間がかかるため、初日は早く終わった。


 王都のタウンハウスに戻り、お昼を食べたら準備が始まった。メイドに全身を磨かれ、マッサージされ、髪を結われ、ドレスを着させられる。

 黄土オーカー色の髪とオリーブ・グリーンの瞳に何色のドレスを合わせるか考えた結果、推しの色を選んだ。紫色は帝国を意識させてしまうので、瞳の赤を選ぶ。

 私の髪と瞳のくすんだ色を考えて、ドレスの彩度は落とした。地味になりすぎないよう装飾は金色にした。


 入学記念パーティでは推しから「思い出をください」とダンスに誘われた。

 密着しすぎて、自分の心臓の音が聞かれていないか心配だった。

 ドレスの色は気付いてくれただろうか。


 周囲の目はナイル殿下とその婚約者にくぎづけだった。

 彼らを隠れみのにするわけではないが、踊り終えたので壁の花になってしまおう。気配を消すのは得意だ。防衛魔術は目立つべきではない――。


「オーカー嬢」


 聞き慣れた声に意識が浮上する。

 姿を見なくてもわかる。この声は推しのものだ。

 辺境伯爵子息、ケルメス・ティリアン。

 夕焼けで赤く染まった紫雲の髪と、炎のような赤い瞳が特徴的な人。

 紫色が帝国の色であるために、忌諱きいされてしまう人。


「踊らないのか?」

「あなたと踊りましたよ」

「俺以外に、だ」


 推しから「他のやつと踊らないのか」と聞かれても、あなた以外に踊りたい相手はいない。


 ゲームは序盤(幼少期)を終えて、学生時代に突入した。卒業したら国家情勢が変わり、未来は星の数ほど枝分かれする。


「ティリアン様と踊れて嬉しいです。思い出になったのは私の方ですよ」

「……貴方の悪癖あくへきは、男を期待させる。やめた方がいい」

「どなたを期待させるの? あなたにしか言いません」

「そういうところが……! いえ、殿下の護衛もありますし、頭を冷やしてきます」


 一礼して、彼は殿下をとりまく人混みの中に消えていく。

 人に囲まれて、頭が冷えるのだろうか。逆に熱くなりそうだ。


 冷たい葡萄ぶどうジュースをグラスに注いで飲み干した。





葡萄ジュースなのは推しのカラーだからさ(n*´ω`*n)

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