ぼくの鼻にデキたほくろから何かが生まれてくる。
ぼくには、子供の頃から鼻の頭に小さなほくろがあった。
このほくろが、僕の成長と共に大きくなっていく。
ほんの少しずつだけど? 大きくなっているのが分かるんだ。
何度もぼくは、潰したり取ったりする事も考えたのだけど?
やっぱり愛着があるのか?
そうできなかった。
既に僕の体の一部になっているぼくのほくろ。
取る事はやめたのだけど、このほくろのせいで。
何度もイジメにあっていた。
鼻の頭についている黒くて大きくなったほくろを皆がバカにするんだ。
『なんだなんだ? お前の鼻に大きな鼻くそついてるぞ!』
『・・・違うよ、これは“ほくろだよ”』
『いや? それは鼻くそだ!』
【鼻くそ! 鼻くそ!】
『違うって言ってるだろう!』
『なんだよ! 喧嘩売ってんのか?』
『違うよ!』
『おい! みんなでやっちまえーい!』
【おーう!】
ぼくはボロボロになったTシャツとズボンで家に帰ると?
ぼくのお母さんは、ぼくを心配して学校のぼくの担任の先生に
連絡をしていた。
『○○先生! うちの子が、怪我をして家に帰って来たんです。
誰かに殴られたみたいで、誰がしたか調べてくれませんか?』
『えぇ!? こう君が、ウチのクラスの子に殴られたんですか?
分かりました、直ぐに調べてみます。』
『○○先生! よろしくお願いします。』
ぼくのクラスの担任の先生は、凄くいい先生で正義感のある優しい
女の先生だった。
この先生のおかげで、ぼくはイジメられてもクラスの子達から無視
される事もなく中学を卒業できた。
ぼくは人に恵まれているのだろう。
その後も、高校・大学と進んでいったが...。
ちょっとしたイジメはあっても、それ以上発展することはなかった。
社会人になった今でも、ぼくのほくろの事でたまにイジメられる
事もあったけど、“話のネタ”程度で終わる事が多かった。
ぼくは22歳になった今でも、このほくろを取る気がないのだ。
ぼくの母親は、ぼくの鼻の頭にあるほくろを見てずっとこう言っている。
『今は簡単に、レーザーでほくろも取れるんだから、取ったら?』
『ぼくはいいよ! このほくろ気に入ってるから。』
『でも? 少しづつ大きくなってない?』
『そんな事ないよ!』
『そうかしら?』
『そうだよ!』
母親の言う通り、ぼくのほくろは少しづつ大きくなってる。
それでもぼくはこのほくろを取りたくないんだ。
でも? その日の夜、ぼくが自分の部屋のベット寝ていると?
なんだか? 顔の近くでゴソゴソと何か言っている。
ぼくが目を覚ますと? ほくろがぼくに喋りかけていたんだ!
『起きろ! 起きろ! 俺だ! ほくろだ!』
『・・・えぇ!? 何?』
『ほくろだよ!』
ぼくの目の前に、小さな真っ黒の塊がぼくに何か話しかけている。
これは? 一体なんだ!?
『だから、俺がほくろだよ!』
『・・・ほ、ほくろ!?』
『そうだ! 俺がほくろだ!』
ぼくは直ぐに鼻の頭を指でスリスリすると? 確かにほくろが
なくなっている。
ぼくの目の前に居るのは、本当にぼくのほくろだった。
『まさかだけど!? 本当にぼくのほくろ?』
『何度も言ってるだろうが!』
『ほくろって? 何かが生まれてくるものなの?』
『・・・それは、しらん!』
『知らんって?』
『何しろ、こうの鼻の頭のほくろが俺だ!』
『ぼくの名前も知ってるんだね。』
『俺達、長い付き合いだろう!』
『確かに君は、ぼくのほくろだ!』
『分かってもらえて嬉しい!』
『でも? これからどうするの?』
『今まで通り、俺はこうの鼻の頭にくっついて生活するよ。』
『それができるなら、ありがたいよ!』
『これからもよろしくな、こう!』
『うん!』
なんだか、ぼくは凄く嬉しかった!
“新しい家族ができたみたい”で嬉しかったんだ!
これからも、ぼくのほくろは一緒にぼくと居てくれる。
今まで通り、ぼくはほくろと生きていくよ。
ぼくの大事なほくろ。これからもよろしくな!
最後までお読みいただきありがとうございます。