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勇者失踪 ~勇者が行方不明になったので探す~  作者: 御味九図男
第二章:魔術士とエンデスという国
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7.うそまだ2時間…?


 ブゥゥゥゥゥゥンン



 この魔動二輪車の排気音もだいぶ聞き飽きた、あれからもう随分と長い間運転している。感覚的には3~4時間と言った所だろうか?…さてここで正解を確認してみよう、体内時計を試してみたくて腕時計はずっと見ずに過ごしてきたのだ。



「…うそまだ2時間…?」



 はぁ…まぁ仕方ない、これではエンデスに到着するまで暫くかかるだろう。勇者が居なくなってからまだ一日も経っていないが、もう長い事勇者に会って居ない様な気がしてくる。…もしこのまま勇者を見つける事が出来なかったら…私は一体一日をどれだけ長く感じるんだろう?



「う…」



 想像するだけで血の気が引いて行くのが分かる。こう、スー…っと血圧が下がって景色から色が無くなった感じがして立ち眩みがする感じ…最悪。この機能も無くしてしまおうかな。


 まぁ冗談はさて置き、実際私の身体はだいぶ戦闘をする為に最適化されている。まず体内に物体を完全に消化して全て栄養に変換する魔術が組み込まれてるからもう10年くらいお手洗いに行った事が無いし、血液に持続治癒魔術を溶け込ませてるから怪我がすぐ治る。


 更に脳みそに魔術返しの魔術を持続行使してるから精神攻撃も一切効かない。まぁデメリットもある、誰かに精神強化の魔術を行使してもらっても効果が無いし、目覚ましの魔術も受け付けないから朝は魔術に頼らない古典的な目覚まし時計とかじゃないと起きれない。



「…」



 いつもは勇者に起こしてもらってたんだけど…これからは一応買っておいたこのアラーム付き腕時計に頼るしかない。そういえば刺剣士…シンシスやリースに起こしてもらってた事もあるけど…何故か目覚めが悪いから結局勇者に頼んだっけ。


 んん…!というか今思い出したけどその時目覚めが悪すぎて大量破壊魔術を行使しそうになったんだ…やばいこれから一人で起きないと駄目なのに…気が付いたら周辺が焼け野原とか冗談じゃない。



「はぁ…」



 どんなに不便でも己の身体に刻んだ32個の特殊な魔術紋は消せない。強力な推進力を生み出すオリジナル魔術紋から自動で攻撃を防ぐ防護魔術紋…そういうのもあるが、殆どは対象を破壊する為の魔術紋だ。視覚的には普段見えないがそんな危険な旧式魔術をさらに改造した魔術紋が全身に刻み込まれている。


 前にこの事を話したらシンシスに全身凶器とか言われた、言い得て妙だと思う。



「あ」



 勇者が居た時の思い出に浸っているといつの間にか辺りに畑がちらほら見えてきた。畑にはもこもこのしろい毛玉がいっぱいだ、どうやらここは綿畑のようだ。木綿が畑一面に広がっているのを見ると何とも言えない良い気持ちになる。



「綺麗…」



 これは勇者に教えてあげなければ。前に来た時は春頃だったので見れなかったから一度見てみたかったのだ。でももうすぐ11月になるのでそろそろ収穫されてしまうのだろうと思うとちょっと切ない。


 そういえば11月になると秋ジャガイモの収穫も始まる筈。今年も豊作だといいな、と思う。



「…そういえば」



 完全に忘れていたが、綿畑がこれだけあるという事はもうエンデスに入っているのでは?だとしたら流石勇者との思い出といった所だ、あれだけ長く感じていた時間が一瞬だった。


 更に国境警備隊が全く居なかった。居たらもっと早く入国していた事に気が付くはずだ。でも…これが皆で勝ち取った世界平和の結果だというのなら大変誇らしい。



「…っと」



 道の隅の方へ魔動二輪車を寄せて停車する。反対側には大きな木があり木陰になっていたが、季節的にそんなに熱く無いし日の当たる方に停めた。


 タンクバッグを開いて用意していたエンデスの周辺地図を確認する。まず現在地は…この道をまっすぐ行って…綿畑があって。これだけでは本当にあっているのか怪しいのでもう一つくらいわかりやすい目印が欲しい。



「これ…」



 地図には三日月状の山の絵が載っている。ふと辺りを見渡すとその変な山はあっさりと見つけられた。今でも覚えている、まだ私も勇者も子供だった頃に魔術の実験に穴をあけた山だった。本当に懐かしい…今の勇者がやったらエンデスごと消せそうだ。


 実は現在地を簡単に把握できる魔術があるにはあるが、魔力は一応温存しておきたい。とにかく山の向きから現在地を把握できたのでエンデスの首都、メルデルへ向かう。



「…よし」



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